日本には英語・英会話の教材・テキスト類が大量に流通しています。書店の語学コーナーには山のように並んでいて、英語学習者には、特に初心者には、自分に適したテキスト・教材を選ぶ事が非常に難しいと思われます。
私自身が日本国内で英語を身につけ、35年以上の英語・英会話講師経験を持ち、日本最大手と言えるAEONで講師トレーナー、教務責任者として10年以上勤務し、その後、5つの別ブランドで事業責任者として、数千人以上の外国人講師と数千人以上の日本人講師を採用・教育し、直接間接的に数万人以上の受講生の学習状況を見て来ました。詳細は他のカテゴリーの記事に書いてあります。
その中で、本当にオススメできる教材・テキスト類を紹介いたします。また、学習法については学習法のカテゴリーを参考にしてください。
今回はリーディング(精読用)の教材紹介ですが、「文法」を勉強したい場合のオススメ教材です。もし「本格的に英語を勉強したい!」と思っていて、時間と労力を掛ける意欲があるのであれば、是非取り組んでみてください。
私が自分自身日本国内で英語を身につけてきた中で、一番効果があったと感じるのはリーディングです。とにかくたくさん読みました。基本的にペーパーバックの小説、英文雑誌、英字新聞などでしたが、いわゆる多読・速読の読み方です。他の学習法でも説明しましたが、英語学習の基本は「易しいものを素早く大量に!」です。
今回紹介するは多読・速読というよりも「精読」用の教材です。
1. 「精読」が必要な理由
「読解」「リーデイング」は語学学習において、非常に大切な練習になります。初心者の方で、「英会話」と「英語」が別の物と考えている方には理解しにくいと思いますが、語学学習の中で「読解」「リーデイング」が最も大切と言っても過言ではないと思います。外国語として語学を身につけた人の多くは、その学習において「読解」「リーデイング」に多くの時間と労力を割いています。
いつも例に挙げる「正規留学」の場合を考えてみるとわかりやすいと思います。英語圏の4年生大学に「正規留学」をして卒業した人の多くは高い英語力を身につけています。それは必ずしも「英語圏で生活をしたから」だけではありません。大学の授業のために、毎日毎日大量の「読解」が課せられます。その積み重ねが英語力向上に寄与しているのです。「読解」を通じて、大量にインプットし、語彙力を強化しているのです。
もし高い英語力を身につけたいと思っているのであれば、「読解」に時間を掛けることをお勧めします。反対に、もし「旅行に行った時、ちょっと使えたら良い」くらいの目標設定なら、無理して「読解練習」する必要ありません。こちらの記事を参考にしてください。
ここでは英語力向上のために多読が必要な理由を簡単に説明します。詳しくは「読解|リーディングの学習方法」の記事を参考にしてください。
1. 精読とは?
精読は、「多読・速読」とは異なり、「正確に読み取る」作業になります。イメージしやすいのは高校の英語の授業や大学入試ですね。まぁ、そのまんまです。大学入試の受験勉強をすると思ってもらえれば大丈夫です。
特に説明の必要ないかもしれませんが、一つ例を出します。
On my way home, I saw a woman that I met at the party my boss held a few weeks ago, which I should not have gone to in the first place.
この場合であれば、
主語:I 動詞:saw 目的語:a woman
このS+V+Oがこの文の核になります。 これを見た瞬間、「SVOか…」と拒否反応を示す人が出てくるかもしれませんが、避けては通れません。
関係詞が修飾 関係代名詞:a woman that ~ 関係代名詞:the party (which) my boss held 関係代名詞:which I should ~
副詞句が修飾 副詞句:on my way home
その他に、代名詞などがあれば、それが何を言い換えているのか、など、文の構造を正確に理解する練習です。
和訳する必要はありませんが、文の構造を理解するのが目的なので、最低限、S,V, O, C, OO, OCなど記入し、修飾語句がどの言葉を修飾しているのか分かるように記入していきましょう。難しい文章もあるかもしれませんが、隅から隅まで100%理解できるまで、頭を絞り考え抜きましょう。考えるプロセスが大切なのであきらめずにひたすら考え抜きます。
2. 精読の注意点
精読用の教材は、語彙レベルも高くなるので語彙力も付きます。語彙もしっかりと増やしていってください。この場合の語彙レベルはPassive Vocabularyで構いません。大学入試で語彙を増やしておくと、今後練習するニュースや雑誌記事、本格的な文学作品を読む時非常に役に立ちます。
この精読で一番身につくのは文法力です。文法力強化が目的です。「中級レベル」の特徴として、「なんとなく大雑把に理解」してしまう傾向があります。それはそれで良いのですが、上級レベルにステップアップするためには、相手の言う事を正確に理解する力を伸ばす必要があります。これが出来ないと、正確なコミュニケーションは成り立ちません。読んで理解できない事は、聞いて理解できませんので、精読をする事で「正確に理解する」力を伸ばしていきます。
速読・多読の場合は、「辞書を使わないで読み進む」と説明しましたが、精読の場合は、知らない単語、あやふやな単語は全て辞書で調べてください。辞書を使う場合は、「単に意味を調べる」と言う使い方ではなく、その単語の項目を隅から隅まで読んでください。必ず、以下の点をチェックしましょう。
- 品詞
- 意味
- 例文/用例
- 派生語
- 類義語
自分なりに単語帳を作っていくと良いでしょう。品詞の区別が難しい様でしたら、文法書で確認してください。文法の勉強の仕方はこの後説明しますが、品詞と文型は必ず最初に把握しておく必要があります。あまりピンと来なくても、派生語を確認する癖をつけていくと数ヶ月程度で品詞の感覚もついてくると思います。
辞書を使う際、面倒くさがらずに例文にも全て目を通してください。できれば例文も単語帳に書き写し音読すると良いでしょう。英英辞典の場合、単語の定義で意味が取りづらくても例文をいくつか確認しているうちに、意味がつかめてくる場合があります。単語にはそれぞれ相性の良い語句がありますので、例文を読むとその単語と良く一緒に使われるタイプの語句を把握することができます。
「単語の意味を調べる」と言う作業の中で、この一連の流れを実行するかしないかで、数ヶ月の語彙力、英語力に大きな違いが出てきます。必ず、精読を始める初日から実行しましょう。
2. オススメの「精読用」教材
精読用の教材はある程度語彙レベルが高く、文の構造が難しいものがオススメです。そのため文の構造が比較的シンプルなニュース記事などはあまりオススメしません。使い慣れた大学受験用の長文読解問題集があれば、それでも良いでしょう。特に買い換える必要はありません。是非再度使ってください。
ただし、もし手元に使い慣れた大学受験用の長文読解問題集がなく、これから新たに買う必要がある場合は、この一択です。
1)東京大学教養英語読本
私が自分自身英語を勉強していた時、この本の旧ヴァージョンを使っていました。正確には旧ヴァージョンではないのかもしれません。すでに廃刊になってしまっているようですが、精読用の教材として最適でした。東京大学の教養課程用のリーダーだったので恐らく似たようなコンセプトなのだと思います。
東京大学英語読本には、ⅠとⅡの二段階があるようです。その名の通り、ⅠよりもⅡの方が難易度が高いようなので、まず東京大学英語読本Ⅰから始め、これ以上する事がないというくらい、読み込んだら東京大学英語読本Ⅱに進むと良いでしょう。
東京大学英語読本Ⅰ
赤い表紙の本です。紹介文を載せます。
東京大学の新英語カリキュラムを担うリーディングテキスト。
英米圏で実際に読まれている著名な専門家やジャーナリストが書いた教養書から良質な英文を厳選し、内容・文章ともに「読む」楽しみを味わいながら本場の知的な英語を理解するための思考回路を鍛える。
断片的な意味の把握を有機的な全体の理解へと導くよう工夫された注釈とカラー図版付き。
東京大学英語読本Ⅱ
青い表紙の本です。紹介文を載せます。
東京大学の必修英語カリキュラム「教養英語」の教科書第2弾。
好評の第I巻に引き続き、世界の知識人が楽しむ教養書から良質な英文を厳選。より多彩なトピックと充実した注釈・カラー図版を味わいながら、英語を「いかに」語るか、英語で「なにを」語るか、同時に鍛えるリーディングテキスト。
世界の知識人が楽しむ教養書から良質な英文を厳選。
多彩な魅力ある文体・思考をもつテクストを、注釈に導かれながら読み込むことで、
英語を「いかに」語るか、英語で「なにを」語るかを同時に鍛える。
2. 歴史教科書シリーズ
正確にはこのようなシリーズ名ではないのかも知れません。受験生にお馴染みの山川の歴史教科書の英語版です。日本史と世界史ヴァージョンがあります。精読は文法力強化が第一目的なのですが、この歴史教科書シリーズは中上級レベルの英語学習社が外国人と英語でコミュニケーションを取るときに出てくる話題に非常に役立つ語彙力と知識を身につけられます。
英文詳説 日本史
赤っぽい表紙の本です。紹介文を載せます。
山川出版社発行の日本史教科書『詳説日本史(日B309)』を英訳したものです。読みごたえのある英語で日本の歴史を学ぶことができます。
『詳説日本史』は、国内でもっとも定評がある高校日本史教科書であり、その日本通史の詳細な記述を活かして、丁寧でわかりやすい英語に翻訳しています。
本文中の歴史用語には、日本語表記も並記し、読みやすさも意識しています。
さまざまな読み方ができるように、英語索引・日本語索引の両方をもうけています。
日本史の出来事を英語でどのように表現するか知りたいときや、外国の人と日本の歴史について語り合いたいときに、相手に伝わるような英語表現を知るひとつの指針となるでしょう。また、英語で読み直すことで、日本史を新たな視点からみることができ、幾通りもの読み方で楽しむことができる一冊になっています。
英文詳説 世界史
青っぽい表紙の本です。紹介文を載せます。
山川出版社の『詳説世界史』を英訳したものです。
日本の世界史教科書は、他国と比較しても、自国中心史観に偏らず、各地域・時代にバランスよく目配りした教科書であると評価されてきました。それは戦後、偏狭なナショナリズムを克服しようと努力してきた日本の世界史教育の成果だといえます。本書は、そのような日本の世界史認識を、広く海外の人びとにも知ってもらいたいとの願いから生まれました。
また、グローバル化がすすむ今日、日本人が諸外国の人びとと国際情勢や歴史文化について意見を交わす機会は、飛躍的に増えています。しかしその際、私たちは世界史に関わる事項が、英語でどのように表現されるのかについて知らなくてはいけません。
みなさんが、世界と日本の歩みについて各国の人びとと語り合おうとするとき、本書が最良の手引きとなることでしょう。
3. 高校受験用
「精読」を試してみたいけど、あまり読解力に自信が無い、という方向けです。本当はこのタイプの方は先に多読と文法力強化した方が効果的です。とりあえず、良さそうな本を紹介します。
高校受験 英語長文を論理的に読み解く本
紹介文を載せます。
名門高校の英語入試を勝ち抜くために必要な「論理的思考力」を身につけよ!
難関高校の入試問題は、大学入試とほとんど変わらない難易度です。単に文法や単語を勉強すれば解けるようになるわけでもありません。
そこで必要になってくるのが「論理」です。本書は、この論理を段階的に身につけるための長文問題集です。
「読解技術編」ではスラッシュ、後置修飾、論理関係、トピックセンテンスといった具体的な技術を学びます。
「ジャンル別対策編」では、物語、歴史、伝記といったさまざまなジャンルの読解方法を解説します。
豊富な指導経験を持つ笠井先生と、本当に役に立つ英語を身につけましょう!
3. 学習方法
「精読」の学習方法は、基本的に学校英語の勉強方法と同じです。全ての文章を和訳する必要はありませんが、文の構造を理解するのが目的なので、最低限、S,V, O, C, OO, OCなど記入し、修飾語句がどの言葉を修飾しているのか分かるように記入していきましょう。難しい文章もあるかもしれませんが、隅から隅まで100%理解できるまで、頭を絞り考え抜きましょう。考えるプロセスが大切なのであきらめずにひたすら考え抜きます。
できれば、誰かに解説してもらった方がいいのですが、身近に聞ける人がいない場合は心配しなくても大丈夫です。隅から隅まで100%理解できるまで、頭を絞り考え抜くことを続けていけば、自然と力がついていきます。1年後に振り返ってみると、以前わからなかった事も意外と簡単に思えるようになっているものです。
精読は焦らず、少しずつ、根気良く続けてみたください。
もし、さらに英語の学習方法に興味を持ったら、ぜひ学習法のカテゴリーを見てみてください