「話せるようになりたいけれど、何から手をつければいいか分からない」
「英会話の練習をしているのに、いつも同じ表現ばかりで成長を感じない」……。
そんな悩みを抱えている方に、私が40年以上の英語学習人生で確信した一つの真実をお伝えします。それは、「書けないことは、一生話せない」ということです。
私は留学経験こそありませんが、35年以上にわたり、英国企業とのハードな契約交渉や教材執筆、数千通に及ぶビジネスメールのやり取りを英語で行ってきました。その現場で私を支えたのは、スピーキングの練習ではなく、圧倒的な「ライティングの習慣」でした。
ライティングは、単に文字を書く作業ではありません。それは、自分の頭の中にある英語の「設計図」を可視化し、磨き上げる作業です。
なぜライティングこそが英語上達の最短ルートなのか。そして、日本にいながらどうやって「伝わる文章」を身につけるのか。スピーキングを支える土台としてのライティング習得法を、私の実体験から解き明かしていきます。
なぜライティングが英語力向上の鍵なのか

多くの英語学習者は「話す練習」ばかりを求めますが、実はライティングこそが確実な英語力向上への最短ルートです。
ライティングの4つの決定的な利点
1. 自分で自分の英語を評価できる
口頭練習と違い、書いたものは客観的に見直せます。時間をかけて考え、辞書で調べ、文法書で確認できます。スピーキングは「その場で流れて終わり」ですが、ライティングは何度でも評価し直せます。
2. 弱点が可視化される
話している時は、勢いやジェスチャーで誤魔化せてしまうことがあります。しかし、文字にすると誤魔化しがききません。
- 知らない単語:「この単語、スペルがわからない」
- 曖昧な文法:「この文、正しいのか?」
- 語彙の不足:「この日本語、英語でどう表現する?」
書けない場所があるなら、そこには必ず語彙・語法・文法のいずれかの欠落があります。
3. 上達を実感できる
半年後や1年後に読み返すと、明確に成長が分かります。
- 「なんでこんな言い方してるんだろう?」
- 「この文型、ぎこちないなぁ」
- こう感じることが成長の証拠です
4. 話す前の準備運動になる
書いて確認した表現は、会話でもスムーズに出てきます。書くことは、話すことのスローモーション練習です。時間をかけて正確に表現する訓練が、リアルタイムの会話力を支える土台となります。
私のライティング学習歴

1. 浪人時代:NHKラジオ講座の先生方からの学び
浪人生時代、NHKのラジオ講座「英語会話」を再開した時、担当されていた先生方の著作を読みました。松本先生、東後先生、大杉先生、杉田先生、國弘先生—いずれも日本国内で英語を身につけた方達です。
先生方が共通しておっしゃっていたこと:
- 中学校のテキストを丸暗記する
- 多読する
- 本物の英語を聞く
- 英英辞典を使う
- 日常的に書く
この「日常的に書く」という部分が、当時の私には新鮮でした。話すことばかり意識していましたが、書くことの重要性に初めて気づかされました。
2. 塾講師時代に掴んだ「英語の設計図」という視点
20代の頃、塾講師として中学1年から高校3年までを教えていた経験が、私のライティング基礎力形成の決定的な出発点となりました。
生徒に「和文英訳」を教える際、私は単に「こう訳せばいい」という答えを教えるのではなく、「なぜこの語順、この前置詞になるのか」を論理的に分解して見せることに徹底的にこだわったのです。
1. 和訳とは「設計図」を日本語で再現する作業である
多くの学習者は、単語を日本語に置き換えることを「訳す」だと思っています。しかし、私は生徒にこう教え続けました。
「和訳とは、英語の設計図(構造)を日本語で再現する作業なんだ。だから、訳文を見ただけで英語のSVO/SVCの形が透けて見えるように訳しなさい」
例えば、”I found the book easy.” を「その本は簡単だった」と訳すのではなく、「私はその本が易しい状態であると見出した(気づいた)」と、あえて構造を際立たせた訳し方を徹底させました。
2. 教えることで「感覚」を「ルール」へと昇華させた
生徒の英作文を添削する日々は、私自身の「曖昧さ」を徹底的に排除する訓練でもありました。
- 語順の必然性: 「なんとなくこの位置」ではなく、英語のルールに基づいた正しい配置を説明する。
- 日本語の解体: 「傘を持って行った方がいい」という日本語を、「It might rain(状況)」と「You’d better(助言)」という英語の発想にどう変換するかを可視化する。
- 文法の証明: 「なぜこの前置詞なのか」に対して、前後の動詞や名詞との論理的なつながりを証明する。
この経験を通じて、私は「感覚だけで書く」という不安定なステージを卒業しました。 「文法という設計図」に従って正確に文を組み立てる力が、この時、私の身体に完全に定着したのです。
今、振り返って確信していることがあります。ライティングにおいて「書けない」場所があるなら、それは単に単語を知らないのではなく、その部分の「設計図が脳内で描けていない」ことが原因です。この塾講師時代の経験が、後に英国Pearson社とのハードな契約交渉や教材執筆においても、一切揺るがない私の武器となりました。
3. 英会話講師時代:レッスンプランと教材作成
AEONでパートタイム、その後フルタイム講師として働いていた時期、毎回レッスン後にレッスンレポートを英語で書いていました。
当時のAEONは、「市販の教材〜オリジナルテキスト」への転換期だった。どんどんオリジナルテキストが導入されているんだけど、当時のオリジナルテキストのレベルはお世辞にも良いと言えるものでは無かった。例文が10個あるだけみたいなテキストもあったので、毎回自分で工夫して50分のレッスンをしないといけない。ある意味、毎回教材を制作していたようなものだった。
この経験で学んだこと:
- 日常的な業務英語の表現
- 生徒のレベルに応じた説明の書き方
- レッスンの流れを文字で整理する力
4. 講師トレーナー時代:研修資料とマニュアル
本部で講師トレーナーとして働くようになると、研修資料やマニュアルを大量に作成しました。
作成した主な文書:
- 新人講師向け研修マニュアル
- レッスン評価基準書
- 外国人講師向けガイドライン
この経験で学んだこと:
明確さが最優先: 複数の解釈ができる文章は、必ず誤解を生みます。一つの意味しか取れない文章を書く訓練になりました。
構造化の重要性: まず全体像を示し、次に詳細を説明し、最後にまとめる。この流れを意識することで、論理的な文章が書けるようになりました。
5. 教務責任者時代:初心者向け文法解説書
AEONでは年に2回、家庭学習用の教材を販売していた。市販の教材を使う事が多かったけど、初心者向けの文法の解説書を作った。これは自分の中で、日本の学校教育を受けた学習者が最低限必要な文法的な知識を身につけるために何が必要なのか、を徹底的に考えたので、語彙同様にしっかりと整理できたと思う。
この経験で、「複雑な文法事項を、初心者にもわかりやすい英語で説明する」技術を身につけました。専門的な内容を平易な言葉で表現する能力は、後のビジネス文書作成でも大いに役立ちました。
6. 事業部長時代:海外企業との日常的なメール交換
オデッセイコミュニケーションズで事業部長として働くようになると、英国Pearson PLCとの日常的なやり取りが始まりました。
「Direct English」自体、英国Pearson PLCとのフランチャイズ契約だったので、Pearsonの担当者とは日常的にやり取りをしていた。また、当時はメールが普及してきていた時期で、イギリスとの仕事のやり取りは、日々メールのやり取り。AEONの時は、仕事上で英文を書くと言うことはそれほど多くなかったので、ReadingとWritingの比重は圧倒的に多くなった。
ここで学んだビジネスライティングの原則:
- 結論から書く(Conclusion First)
- 論理的に理由を述べる
- 誤解を生まない明確な表現を使う
- 相手との関係性を意識した丁寧さ
7. 代表取締役時代:契約交渉と危機管理文書
全研本社の子会社で代表取締役になると、さらに重要度の高い文書を英語で作成する必要がありました。
特にLinguaphone Group社との交渉では:
当時のLinguaphone Group CEO が不正取引をしていたことが発覚した。全研本社も多少、(と言ってもそれなりの金額だが)損失を被り、イギリス側とかなりやり合う結果になった。この件は訴訟問題に発展するようなケースになっていたので、イギリス側CEOと日本側の社長が話し、自分は通訳として入る事が多かった。
この経験で学んだ高度なライティング技術:
- 法的リスクを考慮した慎重な表現
- 感情的にならない客観的な記録
- 事実と意見を明確に分離した文章
- 交渉における戦略的な文書作成
最終的には、現在のLinguaphone GroupのCEOは、彼がPearson PLCで営業職の時からの付き合いだった旧知の仲で、自分も代表取締役になり決裁権を持っていたので、非常に話が早かった。良好な関係を築くためのビジネスライティングの重要性を実感しました。
今日から始められる実践的練習法

私の35年の経験を基に、日本で今すぐ始められるライティング練習法をレベル別に提案します。
基礎レベル
1. 毎日3行の英語日記
これは私が最も効果を実感した練習法です。
実践方法:
Today’s 3 lines:
1. I had a meeting with my team this morning.
2. We discussed the new project schedule.
3. I need to finish the report by Friday.
重要なポイント:
- 完璧を求めない(辞書を使ってもOK)
- 毎日続けることを最優先
- 事実だけでなく感情や理由も書く
- 書いた後、必ず声に出して読む
効果的な流れ:
- 夜:日記を書く
- 翌朝:書いた内容を見ながら音読
- 昼:独り言で応用
中級レベル
① 要約ライティング
多読をしていた時期、私は自然とこれをやっていました。
方法:
- 英語の記事や本を1章(または1段落)読む
- それを自分の言葉で5〜10行に要約して書く
例:
This article discusses the benefits of remote work during the pandemic. The author argues that working from home has increased productivity for many employees. Companies have also discovered they can reduce office costs significantly. However, some challenges remain, such as maintaining team communication and company culture. The author concludes that remote work will likely become a permanent option for many industries.
2. 架空のメール練習
実際には送らないメールを書く練習です。
シチュエーション例:
ビジネスメール:会議の時間変更依頼
Subject: Request to Reschedule Our Meeting
Hi Tom,
I hope this email finds you well.
I’m writing to ask if we could reschedule our meeting scheduled for Thursday, March 15th. Unfortunately,
I have an unexpected client meeting that day.
Would it be possible to move our meeting to Friday, March 16th at the same time (2:00 PM)? If Friday
doesn’t work for you, I’m also available on Monday, March 19th.
I apologize for any inconvenience this may cause.
Please let me know what works best for you.
Best regards,
Akira
この練習で身につくこと:
- ビジネス・日常で使える表現
- 相手を意識した丁寧な表現
- 構成力(挨拶→用件→詳細→締め)
上級レベル
1. 論点整理+意見ライティング
講師勉強会で英文ニュースを扱っていた経験から、これは非常に効果的です。
方法:
- 興味のあるニュース記事を読む
- 150〜250語で自分の意見を書く
基本構成:
Paragraph 1: 自分の立場(賛成/反対/条件付き賛成)
Paragraph 2: 理由1
Paragraph 3: 理由2
Paragraph 4: 簡潔なまとめ
ライティング上達の「見える化」でモチベーション維持

実際の私が日記やエッセイなどを継続的に練習できた理由の一つは、上達を客観的に実感できたことです。
1. 定期的な読み返し
- 1ヶ月前の日記を読み返す:
-
- 「この表現、今ならもっと良い言い方ができる」
- 「この文法ミス、今なら気づく」
- 3ヶ月前のメール練習を見直す:
-
- 語彙の選択が洗練されている
- 文の構造がシンプルになっている
- 半年前の文章と比較する:
-
- 明らかな成長を実感できる
- モチベーションが上がる
2. 継続のコツ
完璧を求めない:
- 間違いがあっても気にしない
- 書くこと自体が目的
- 量が質を生む
量より継続を重視:
- 毎日3行でOK
- 短くても毎日書く
- 1日サボると習慣が崩れる
小さな変化を記録する:
Week 1: 3行書くのに15分かかった
Week 4: 3行書くのに5分でできる
Week 12: 3行では物足りなくなり、5行書くようになった
今日から始める具体的ステップ

Week 1-2:習慣化
目標: 毎日書く習慣をつける
やること:
- 毎日3行日記を書く
- 書いたものを声に出して読む
- 完璧を求めず継続を重視
Week 3-4:応用開始
目標: 書く内容を広げる
やること:
- 架空のメールを週1回書く
- 日記に感情や理由を加える
- 書いた内容を独り言で再現
Month 2-3:レベルアップ
目標: より複雑な文章に挑戦
やること:
- 要約ライティングに挑戦
- 意見文を書く(150語程度)
- 1ヶ月前の文章を読み返す
Month 4-6:実践応用
目標: 実用的な文章を書く
やること:
- 時事問題への意見を書く(250語)
- 実務的なメールを想定して練習
- 半年前との比較で成長を実感
よくある質問への答え

- 日記やメールは誰かに添削してもらうべきですか?
-
初期段階では不要です。まず「書く習慣」を身につけることが優先です。3ヶ月〜半年続けて、自分で読み返した時に「ここ変だな」と気づけるようになってから、必要に応じてネイティブチェックを受けても良いのですが、AIのチェックで十分です。
私自身、最初の数年間は誰にも見せずに書き続けました。それでも十分に効果がありました。
- 書くのに時間がかかりすぎて続きません
-
最初は3行でOKです。私も最初は「今日何をしたか」を3文書くだけでした。大切なのは完璧さではなく継続です。5分で書ける量から始めてください。
- 書いた英語が正しいかどうか不安です
-
間違いを恐れる必要はありません。書くことで「自分が何を知らないか」が分かります。それこそが上達への第一歩です。1ヶ月後に読み返すと、自然と改善点が見えてきます。
- ライティングだけで本当にスピーキング力も上がりますか?
-
上がります。ただし、書いたものを必ず声に出して読むことが重要です。音読する場合は、事前にAIでチェックしたほうがいいでしょう。
私の経験では:
- 書いた表現は会話でも自然に出てくる
- 文法的に正確な文が口から出るようになる
- 論理的な説明ができるようになる
まとめ:書くことから始まる確実な英語力

私が35年の経験で確信していることは、書けることは必ず話せるようになるということです。
重要なポイント:
- 書くことで弱点が見える化される
- 自分で自分の英語を評価・改善できる
- 上達が記録として残り、モチベーションが維持できる
- 書いた表現が会話でも自然に使えるようになる
今日から3行の日記を始めてください。
完璧である必要はありません。継続することで、半年後、1年後に必ず大きな変化を実感できるはずです。
書くことは、話すことのスローモーション練習です。時間をかけて正確に表現する訓練が、リアルタイムの会話力を支える土台となります。
私自身、塾講師時代の文法解説書作成から、海外企業との契約交渉まで、すべてのライティング経験が今の英語力を支えています。あなたも自分のペースで、ライティングを通じた英語学習を始めてみてください。
この方法が、あなたの英語学習の道のりを確実に前進させることを、私の経験から確信しています。
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