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留学なしで「英語で人を動かす」:35年の実体験が教えるスピーキング習得法とOSの入れ替え

「単語は知っているのに、いざとなると言葉が出てこない」
「ネイティブを前にすると、何を話せばいいか分からなくなる」……。

これまで「リスニング」「文法」「リーディング」の学習法について、私の実体験をお伝えしてきましたが、今回はいよいよ多くの方が最も高い壁と感じる「スピーキング・コミュニケーション力」の本質に迫ります。

私は留学も海外生活も経験していません。しかし、日本国内だけで英語を習得し、35年以上にわたって英語でビジネスを行い、数千人の外国人講師をマネジメントし、時には裁判寸前のタフな交渉も英語で切り抜けてきました。

その経験から辿り着いた結論は、スピーキングは単なる「語学のトレーニング」ではないということです。それは、自分の中にある「日本語の思考回路(OS)」を「英語の思考回路(OS)」へと入れ替える作業に他なりません。

なぜ、知識はあるのに話せないのか。どうすれば日本にいながら、相手を動かすコミュニケーション力が身につくのか。私の35年の歩みをベースに、その具体的なロードマップを公開します。

目次

スピーキング学習の特殊性

まず理解していただきたいのは、スピーキングは他の技能とは根本的に異なるということです。

リスニングやリーディングは「理解する」技能ですが、スピーキングは「表現する」技能です。しかも、リアルタイムで、相手がいる状況で行わなければなりません。

私の経験では、スピーキング力向上には3つの段階がありました:

  1. 基礎期:音とリズムに慣れ、基本パターンを口に覚えさせる
  2. 実践期:実際の人間関係の中で文化的違いを学ぶ
  3. 応用期:仕事や交渉で英語を道具として使いこなす

1. 基礎期:音から入った幼少期〜中学時代

洋楽との出会い:意味より音を重視

私のスピーキングの土台は、実は幼少期の洋楽体験から始まりました。叔父の影響で家には洋楽レコードがたくさんあり、FEN(現AFN)も流れていました。

中学生になると、ビートルズやカーペンターズを聴き、歌詞カードを見ながら一緒に歌っていました。意味がわからないまま、音だけを真似して歌う

例えば、”She’s got a ticket to ride” が「ショジュルーライショジュルーライ」に聞こえて、そのまま歌っていました。当時は「意味ないじゃん」と思っていましたが、これが後の発音とリズム感の基礎になっていたと今では理解しています。

NHKラジオ講座:口頭練習の習慣化

中学1年から始めた「基礎英語」「続基礎英語」「英語会話」が、本格的なスピーキング練習の出発点でした。

特に効果があったのは以下の練習:

STEP1:音声だけを聞く テキストを見ずに、まず音から入る習慣をつけました。
STEP2:リピート練習 音声に続いて、できるだけ同じように発音します。イントネーションやリズムも含めて真似することを重視しました。
STEP3:役割練習 対話形式の部分では、一方の役を自分が担当し、実際の会話のように練習しました。

この練習を毎日30分、3年間続けた結果、中学で学ぶ基本文型が自然と口から出てくるようになりました。学校のテストでは時間が余るほど、理解と応答のスピードがついていました。

2. 大学〜アルバイト時代:徹底的な口頭練習

リンガフォン教材:反射神経を鍛える

20代半ば、英会話講師として働きながら自分の英語力不足を痛感していた時期に、当時3〜4万円という高額なリンガフォン教材を購入しました。

この教材の最大の特徴は、カセットテープとの対話形式でした。

講師:She has a book. “Question”
(短い無音)→ 自分:Does she have a book?
講師:Does she have a book?(正解音声)

中学校1年生レベルのシンプルな文型変化です。それが文字を見ないで音だけで反応しゆとすると、最初は無音部分が短すぎて全く答えられません。しかし、負けず嫌いな性格もあって、テキストを見ずに即答できるまで何度も繰り返しました。

この練習で得られた効果:

  • 文字として知っていた単語が「音」として認識できるようになった
  • 英語を語順のまま、頭から理解する習慣がついた
  • 日本語に置き換える時間がないため、英語のまま理解する回路ができた
  • 正確な文法力と瞬間的な応答力が身についた

テレビドラマでの実践練習

リンガフォンと並行して、テレビドラマを使った本格的な練習も行いました。「Family Ties」「The Cosby Show」「Sherlock Holmes」などを録画し、以下の方法で練習しました:

STEP1:1センテンスごとに停止してディクテーション 聞き取れるまで何度も繰り返し、一字一句書き取ります。
STEP2:意味を完全に理解 単語レベルではなく、場面のニュアンスまで掴みます。
STEP3:俳優になったつもりで完コピ 発音、イントネーション、感情の込め方まで徹底的に真似ます。

この練習は非常に時間がかかりましたが、一度この段階まで練習すると、その表現は「身体に入ったセリフ」として残りました。

教えることで学ぶ

塾講師として中学1年〜高校3年まで、英会話講師として初級〜中級レベルまで教えていた経験も、スピーキング力向上に大きく貢献しました。

教えることで得られた効果:

  • テキストをほぼ丸暗記するレベルまで習得
  • 毎週12時間英語を話し続ける環境
  • その場で質問に答える即答力
  • 基本文法の完全な定着

3. 実践期:単なる「語学の壁」ではない「OS(思考法)」の衝突

20代後半、私は六本木のインターナショナルパーティーや、イギリス人とのバンド活動を通じて、人生最大の衝撃を受けました。それは「英語が通じない」ことよりも、「自分の思考回路(OS)そのものが、英語圏の論理(OS)と全く噛み合っていない」という事実でした。

まさに、WindowsのソフトをMacで動かそうとするような無理をしていたのです。

インターナショナルパーティー:コミュニケーションスタイルの衝撃

20代後半、Japan Timesの広告で見つけた六本木の「International Party」に毎週通うようになりました。ここで初めて、「英語力」以前の「コミュニケーションの違い」を痛感しました。

最初の壁:「何を言いたいの?」

日本的な感覚で、空気を読みながら遠回しに話していると、欧米人から必ず言われました:

“So, what’s your point?”(で、結局何が言いたいの?)
“Do you agree or disagree?”(賛成なの?反対なの?)

日本的な「空気を読む」「遠回しに伝える」というOSは、彼らの前では単なる「決断力不足」や「意味不明な発言」に映りました。ここで私は、「まず結論を言い、後から理由を論理的に添える」という、英語専用の思考回路(OS)へ自分を強制的にアップデートする必要に迫られたのです。

学んだこと:

  • まず結論を言う:“I think…” “In my opinion…”
  • その後で理由を2〜3個、明確に述べる
  • 相手の反応を気にしすぎず、自分の考えをしっかり伝える

フランス人オーナーからの価値観ショック

印象的だったのは、フランス人オーナーとの会話でした。ある夜、付き合っている相手がいるドイツ人女性に距離を置いていた私に、彼は言いました:

「だからお前は駄目なんだ!付き合っている相手がいるとか関係ない!どうするか決めるのは女の子だから、お前が気にする必要ない!」

この言葉は、私の「道徳観」というOSを根底から揺さぶりました。善悪の判断はさておき、「自分の常識は、他人(他の文化圏の人)の常識ではない」という事実を、理屈ではなく魂で理解した瞬間でした。

コミュニケーションとは、単に言葉を交換することではありません。

  • 「自分の価値観を絶対視しない」
  • 「相手の文化のロジックを一度、真っさらに受け止める」

この「OS(思考法)の入れ替え」ができるようになって初めて、私の英語は「表面的な音」から「人を動かす道具」へと進化していきました。この柔軟な思考こそが、後の外国人管理や複雑な交渉の現場で、私の最大の武器となったのです。

音楽活動:感情のぶつかり合いも英語で

イギリス人ボーカリストとのバンド活動では、曲作りの過程で毎回のように議論になりました。

当初の問題点:
インターナショナルパーティーの経験で、ある程度自分の意見をはっきり伝えることには慣れてきていたのですが、当時の英語力は、「単にストレートに言うだけ」の段階だったのだと思います。「英語圏のコミュニケーション=単刀直入」みたいな錯覚をしていたのでしょう。当時のメンバーには恐らくかなり嫌な思いをさせていたのだと思います。

  • 「意見を言う=何でもストレートに言う」と勘違い
  • 相手の気持ちを慮らず、言いたいことをズケズケ言うだけ

学んだこと:

  • 英語でも配慮は必要
  • “I see your point, but…” “Maybe we could try…” など、柔らかく反対する表現の重要性
  • 関係を壊さずに議論する技術

4. 応用期:仕事でのコミュニケーション

外国人講師管理:マネジメントコミュニケーション

30代以降、講師トレーナー、教務責任者として数百人の外国人講師を管理する中で、**「英語で人を動かす」**技術を身につけました。

効果的だった5つの原則:

① 1から10まで言葉で説明する

日本的な「以心伝心」は通用しません。図や箇条書きも使い、視覚的にも説明します。

② ムキにならない

相手も自分なりのロジックで正しいと思って行動しているだけです。感情的にならず、論理的に対応します。

③ 褒めることを忘れない

これは日本人の私には最も難しいことでしたが、評価していることを言葉で伝える必要があります。

④ Yes/Noをはっきりと先に言う

英語圏では「No/Yes → 理由 → 代替案」の順番。日本的な婉曲表現は誤解を生みます。

⑤ 100%の理解を求めない

文化も価値観も違う相手と完全に理解し合うのは不可能。50〜80%で十分と割り切ります。

トラブル処理と交渉

代表取締役時代には、契約交渉や時には裁判寸前のトラブル処理も英語で行いました。

重要だったポイント:

  • 事前準備:相手が言いそうなことを予測し、対応を準備
  • 相手に先に話させる:こちらのカードを先に切らない
  • 記録の重要性:外国人スタッフに記録を取らせ、自分は相手の話に集中
  • 自分のペースで話す:ネイティブスピードに無理に合わせない

「憧れ」から「道具」への転換

この時期を通じて、「外国」や「英語」への憧れが完全に消えました。

「ネイティブスピーカーに自分の英語がどう聞こえるか」を気にしなくなり「伝えたいことを伝える」「目的を達成する」ことにフォーカスできるようになりました。

日本的コミュニケーション英語圏のコミュニケーション習得すべきスキル
以心伝心(察する)言葉で1から10まで説明する言語化力・論理構成力
結論を最後に言う結論を最初に言う(結論 → 理由)結論ファーストの習慣
曖昧な「検討します」明確な Yes / No意思表示の明確化
感情的なぶつかりを避ける論理的な議論を好むクッション言葉+反対意見の述べ方

私が学んだスピーキング上達の核心

35年の経験から、日本でスピーキング力を向上させる核心は以下の通りです:

1. 音から入り、基本パターンを身体に覚えさせる

  • 意味がわからなくても、まず音とリズムを真似る
  • 基本文を「口が覚える」まで反復練習
  • ドリル形式で反射的に答える練習

2. 大量のインプットが前提

スピーキングはアウトプットですが、インプット以上のアウトプットはできません。多読・多聴で「話すための弾(語彙・表現)」を増やし続けました。

3. 文化的違いを理解し、発想を転換する

  • 「察してほしい」から「言葉で伝える」へ
  • 結論を先に、理由を後に
  • 意見の違いを恐れない

4. 完璧主義を捨てる

  • ネイティブレベルを目指すより、目的達成を重視
  • 50〜80%の精度で十分と割り切る
  • ミスを恐れず、積極的に話す

今日から始められる実践的練習法

私の経験を基に、日本で今すぐ始められる練習法を提案します:

基礎レベル

① 音読+リピート練習

  • NHKラジオ講座や初級教材を使用
  • 音声に0.5秒遅れでシャドーイング
  • 基本文を見ないで言えるまで練習

② 独り言英語

  • 日常生活を英語で実況中継
  • “I’m making coffee now.” “It’s raining outside.”
  • 完璧を求めず、思いついたことを口に出す

中級レベル

① ドラマ・映画の完コピ

  • 好きな作品の1シーンを選択
  • セリフを書き取り、意味を理解
  • 俳優の発音・感情表現まで真似る

② 3分間スピーチ

  • 日常的なトピックで準備なしに3分間話す
  • 録音して客観的にチェック
  • 「意見→理由→結論」の構成を意識

上級レベル

① 議論の練習

  • ニュース記事を読み、自分の意見をまとめる
  • 賛成・反対両方の立場から論じる
  • 論理的な展開を重視

② 実践の場を作る

  • オンライン英会話で積極的に意見交換
  • 国際交流イベントに参加
  • 英語を使う仕事やボランティアに挑戦

よくある質問への答え

留学なしで本当にビジネスレベルまで到達できますか?

私の経験では可能です。ただし、「ネイティブレベル」ではなく「目的を達成できるレベル」を目指すことが重要です。私は35年間英語で仕事をし、数千人の外国人を管理してきました。これで十分実用的だと考えています。

どのくらいの期間が必要ですか?

継続的な学習を前提として:

  • 日常会話レベル:毎日1時間で2〜3年
  • 仕事で使えるレベル:毎日2時間で5〜7年
  • 管理・交渉レベル:実践経験を含めて10年以上
発音はどの程度重要ですか?

完璧な発音は不要ですが、相手に理解される発音は必要です。基本的な発音記号の理解と、音の連結・リズムを意識することで十分です。

まとめ:日本でスピーキング力は必ず身につく

日本国内で、相手と対等に渡り合うスピーキング力を身につけるための5つのステップをまとめます。

  1. STEP 1:音とリズムを身体に染み込ませる 意味を追う前に、まずは音を真似る。リピートやシャドーイングで「口の筋肉」を英語モードに作り変える。
  2. STEP 2:大量のインプットで「話すための弾」を込める インプット以上のアウトプットは不可能です。これまでの文法・リーディング学習を、常に「話すこと」を意識して継続する。
  3. STEP 3:思考回路(OS)を英語モードへ切り替える 結論から話す、曖昧さを排除する。日本的な「察する文化」から一度離れ、論理的に言語化する訓練を積む。
  4. STEP 4:完璧主義を捨て「目的達成」にフォーカスする 「正しく話すこと」は目的ではありません。50〜80%の精度でも、相手を動かし、目的を果たすことを最優先にする。
  5. STEP 5:日常の中に「実践の場」を強制的に作る 独り言、ドラマの完コピ、オンライン英会話。学んだ知識を「現場で使える武器」へと昇華させる機会を自ら創出する。

英語は「憧れ」ではなく、世界と繋がる「道具」

かつての私にとって英語は「憧れ」でした。しかし、多くの外国人との衝突や共作、ビジネスの荒波を越える中で、英語は自分を助け、世界を広げてくれる「最強の道具」へと変わりました。

留学しなくても、あなたの今の環境でできることは山ほどあります。まずは今日、目の前の出来事を一言だけ、英語で実況中継(独り言)してみることから始めてください。

その小さな「OSの書き換え」の積み重ねが、数年後、世界中の誰とでも対等に議論し、信頼を築けるあなたを作ります。

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