英語で誰かの発言を伝えるとき、「そのまま(” “)」で伝えるだけでは不十分な場面が多いものです。
例えば、上司からの指示を同僚に伝えたり、ニュースの内容を要約したりする際、英語には「時制の一致(Sequence of Tenses)」という、日本語にはない独特の時間感覚が存在します。
「過去に言ったことだから、中身も過去にするの?」
「不変の真理って、どこまでが例外?」
そんな疑問を抱える方も多いでしょう。本記事では、時制の一致を「カメラの視点」という直感的なイメージで解き明かし、間接話法への書き換えルールを体系的に解説します。この記事を読み終える頃には、英語の時間軸を自在に操り、正確で知的な報告ができるようになっているはずです。
本章の目標
- 相手の発言や過去の出来事を、正確かつ自然に伝えられるようになる
- 「文の中で時間軸を保つ」感覚(sequence of tenses)を身につける
- ニュース・日常会話・ビジネスレポート・学術文に共通して使える実践力を育成する
1. 時制の一致とは何か

英語で誰かの発言や考えを伝えるとき、日本語とは根本的に異なる重要なルールがあります。それが「時制の一致(sequence of tenses)」です。このルールを理解することで、英語の時間感覚が格段にクリアになります。
日本語と英語の決定的な違い
日本語では、誰かの発言を伝えるとき、時制はほとんど変わりません。例えば、友人が昨日「今忙しい」と言ったとします。それを今日、別の人に伝えるとき、日本語では「彼は昨日、今忙しいと言っていた」と表現します。「忙しい」という部分は変化しません。
しかし英語では、主節(reporting verb を含む部分)の動詞が過去形になると、従属節(伝えられる内容)の動詞も過去形に「引き寄せられる」のが基本ルールです。
基本パターンで理解する
He says, “I am busy.”
これを間接話法にすると:He says (that) he is busy.
「彼は忙しいと言っている」という意味で、今も彼は忙しい状態です。
しかし、主節が過去形になると:
He said, “I am busy.”
これを間接話法にすると:He said (that) he was busy.
「彼はその時忙しかったと言った」という意味です。
主節が過去形(said)になったため、従属節の動詞も過去形(was)に変化しました。これが時制の一致です。また、時制だけでなく、立場に合わせて代名詞も変える必要があります。
「カメラの視点」が移動する感覚
時制の一致は、カメラのレンズが過去の場面を撮影するイメージで考えると理解しやすくなります。
- 主節が現在形(says, thinks など)
→ カメラは「今(現在)」を映している
→ 従属節も「今」を基準に時制を選ぶ- 主節が過去形(said, thought など)
→ カメラが「過去のある時点」に移動する
→ 従属節の時制も、その過去の時点から見た時間関係で決まる
時間軸のイメージ:──────[過去]──────[said の時点]──────[現在]──────[未来]──→
重要な用語の整理
- 直接話法(direct speech): 話し手の言葉をそのまま引用符(” “)で示す方法
She said, “I need more time.” - 間接話法(indirect speech / reported speech): 話し手の言葉を that 節などに組み込んで伝える方法She said (that) she needed more time.
- 主節(main clause): said, told, thought などの動詞を含む部分
- 従属節(subordinate clause): that, if, whether などで導かれる部分で、実際の内容を表す
2. 時制一致の基本ルール

時制の一致の仕組みを体系的に理解するために、主節の時制別に整理していきます。
A. 主節が現在形のとき:基本的にそのまま
主節が現在形(says, thinks, knows, believes など)なら、従属節は内容どおりの時制をそのまま使います。
- 現在の事実を伝える
She says (that) she likes her new job.
彼女は新しい仕事が好きだと言っています。
He thinks (that) the proposal is reasonable.
その提案は妥当だと彼は思っています。- 現在完了で経験や継続を伝える
The team reports (that) they have finished the testing phase.
チームはテスト段階を終えたと報告しています。- 未来の予定を伝える
The weather forecast says (that) it will rain tomorrow.
天気予報によると明日は雨が降るそうです。
B. 主節が過去形のとき:一段階「過去」にずらす
主節が過去形(said, told, thought など)の場合、従属節の動詞を一段階「過去」にずらすのが英語の基本ルールです。
時制変化の対応表
| 元の時制 | 時制一致後 | 変化のパターン |
|---|---|---|
| am/is/are (現在形) | was/were (過去形) | 現在 → 過去 |
| am/is/are doing (現在進行形) | was/were doing (過去進行形) | 現在進行 → 過去進行 |
| have/has done (現在完了) | had done (過去完了) | 現在完了 → 過去完了 |
| did (過去形) | had done (過去完了) | 過去 → 過去完了 |
| will (未来) | would | will → would |
| can | could | can → could |
| may | might | may → might |
| must | had to / must | must → had to(または must のまま) |
補足: 「~に違いない」という強い推量(確信)の must は、過去になっても must のまま(または must have done)で使われることが多いです。
例文
- 現在形 → 過去形
朝のミーティングで:
Manager: “The deadline is next Friday.”
午後、同僚に伝えます:
The manager said (that) the deadline was next Friday.- 現在進行形 → 過去進行形
Client: “We are reviewing your proposal.”
上司に報告します:
The client said (that) they were reviewing our proposal.- 現在完了 → 過去完了
Team member: “I have completed the data analysis.”
プロジェクトマネージャーに伝えます:
The team member reported (that) he had completed the data analysis.過去完了は「報告した時点で、すでに完了していた」という意味を明確に示します。
- will → would
Sales rep: “We will deliver the products by Monday.”
顧客に確認します:
The sales representative said (that) they would deliver the products by Monday.will が would に変化し、過去の時点から見た未来を表現しています。
C. 時制一致をしない重要な例外
時制の一致は「原則」であって、実際の使用では例外が数多く存在します。状況に応じて時制一致をしない方が自然なケースを理解することで、より自然な英語表現ができるようになります。
例外① 普遍的な真理・科学的事実
いつでも・どこでも成立する事実(科学的真理・一般的事実)は、時制の一致をしません。
Our teacher explained (that) the Earth goes around the Sun.
先生は地球が太陽の周りを回ると説明しました。(went ではなく goes を使用)The scientist mentioned (that) water boils at 100°C at sea level.
その科学者は水が海抜で100℃で沸騰すると述べました。
例外② 現在も変わらない事実・状況
「言った当時の状況」ではなく「今現在も変わっていない事実」として話している場合、現在形のままにすることが自然です。
比較してみましょう:
She said (that) she lived in Osaka.
彼女は大阪に住んでいると言っていました。(言った時点での居住地。今はどこに住んでいるか不明)She said (that) she lives in Osaka.
彼女は大阪に住んでいると言っていました。(今も大阪に住んでいることを話し手が知っている)
実際の使用例:
He mentioned (that) he works at a tech startup in Shibuya.
彼は渋谷のテックスタートアップで働いていると言っていました。(今も勤務中という認識)She told me (that) her brother studies medicine at Kyoto University.
彼女のお兄さんは京都大学で医学を勉強していると彼女が言っていました。(今も在学中なら現在形が自然)
例外③ 歴史的事実
歴史的な出来事は「確定した過去の事実」として記録されているため、時制の一致にかかわらず過去形のままが自然です。
The teacher explained (that) World War II ended in 1945.
先生は第二次世界大戦が1945年に終わったと説明しました。She mentioned (that) the company was founded in 1998.
その会社は1998年に設立されたと彼女は述べました。
例外④ 仮定法の動詞形
仮定法の動詞形(were, had done など)は、時制の一致によってさらに変化させる必要はありません。
He said (that) he wished he were there.
彼はそこにいられたらよかったのにと言っていました。(were はそのまま使用)She mentioned (that) if she had more time, she would learn French.
もっと時間があればフランス語を学ぶのにと彼女は言っていました。
3. 練習問題

練習 A:基本的な時制変化
次の直接話法を間接話法に書き換え、時制の変化に注目してください。
- “I’m working on the quarterly report,” she said.
- “We have already submitted the application,” the team leader said.
- “The new system will be launched next month,” he announced.
- “I can’t access the shared drive,” she complained.
- “The meeting has been rescheduled to Thursday,” the assistant informed us.
練習 B:時制一致の例外を判断
次の文で、括弧内の時制はどちらが適切か(または両方可能か)考えてください。
- The professor explained that the Earth (orbits / orbited) the Sun.
- She told me that her sister (works / worked) at Google.
- He mentioned that the conference (starts / started) at 9 a.m. tomorrow.
- The report showed that sales (increased / had increased) by 25% last quarter.
- She said that she (has / had) been living in Tokyo for five years.
練習 C:文脈での実用
次の会話を、すべて間接話法にまとめて報告文にしてください。
オフィスでの会話:
- Manager: “The budget has been approved by the board.”
- Manager: “We will hire two new developers next month.”
- Manager: “Everyone needs to update their project timelines by Friday.”
解答
練習 A
- She said (that) she was working on the quarterly report.
- The team leader said (that) they had already submitted the application.
- He announced (that) the new system would be launched the following month.
- She complained (that) she couldn’t access the shared drive.
- The assistant informed us (that) the meeting had been rescheduled to Thursday.
練習B
- orbits – 普遍的真理なので現在形が正しい
- works / worked – 両方可能。今も勤務中なら works、過去の事実として述べるなら worked
- starts – started も文法的には可能だが、未来の予定であることを明確にするなら starts が自然
- increased – 確定した過去の数字なので過去形が自然
- had been – 主節が過去形なので時制一致により had been が正しい。ただし、「今も住んでいる」という事実を強調したい場合は has been も許容されます。
練習 C
解答例:The manager informed us that the budget had been approved by the board. She said that they would hire two new developers the following month. She also mentioned that everyone needed to update their project timelines
by Friday.
Column:よくある質問

- that は省略できますか?
会話では that を省略することが非常に多く、省略しても文法的に完全に正しいです。ただし、ビジネス文書や学術論文では that を明示した方が読みやすくなります。
- said と told の違いは何ですか?
said は「言った」という意味で、目的語(人)なしで使えます。told は「(人に)伝えた」という意味で、必ず目的語(人)が必要です。
- She said (that) she was tired. ✓
- She told me (that) she was tired. ✓
- She told (that) she was tired. ✗
- must の時制一致はどうなりますか?
義務を表す must は、時制一致で had to に変わることが多いですが、must のままでも使われます。had to の方が「その時点での義務」をより明確に示します。
まとめ

今回の学びのポイント
「時制の一致」は単なる文法上のマニュアルではなく、「どの地点からその出来事を眺めているか」という視点の移動そのものです。
- 基本: 主節が過去なら、従属節の時制を一つ過去へ「バックスライド」させる。
- 視点: 過去の時点にカメラを置いて、その時から見た「今・過去・未来」を表現する。
- 例外: 今も変わらない事実や歴史的出来事は、話し手の判断で時制を固定する。
時制一致をしない主な例外:
- 普遍的真理・科学的事実(現在形のまま)
- 現在も有効な事実・状況(話し手の判断による)
- 歴史的事実(過去形のまま)
- 仮定法の動詞形(were, had done などはそのまま)
重要な時制変化:
- will → would(過去の時点から見た未来)
- can → could(過去の時点での能力・可能性)
- has done → had done(said よりもさらに前に起きた出来事)
実践での心構え: 時制の一致は機械的なルールではなく、「どの時点を基準にして、何を伝えたいのか」を明確にする技術です。文脈と話し手の意図を考えながら、適切な時制を選択することが重要です。
さらなるステップアップへのアドバイス
時制の一致をマスターする近道は、「独り言でニュースを要約してみること」です。 例えば、英語のニュースを一行読み、それを “The article said that…” と自分なりに間接話法で言い換えてみてください。代名詞や時制を瞬時に変換する力が、驚くほど身につきます。
次に読んでおきたいおすすめ記事
時制の一致をより深く理解するためには、以下の基礎知識も不可欠です。あわせてチェックして、文法力を盤石なものにしましょう。
- [第5文型(SVOC)の基本]: tell + 人 + to do など、話法と密接に関わる動詞の使い方をマスター。
- [名詞節・that節の作り方]: 伝えたい内容を「カタマリ」として捉える感覚を養います。
- [仮定法の基礎]: 時制の一致を受けない「仮定法」特有の時制ルールを整理しましょう。
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