🧐 はじめに:なぜ現在完了形は中級者の壁なのか?
「英語を勉強しているけれど、現在完了形と過去形の違いがどうしても分からない」
もしあなたがそう感じているなら、それはあなただけではありません。現在完了形(Present Perfect)は、中級者レベルの学習者が必ず直面する最大の壁です。多くの日本人学習者が、この「過去から現在へつながる時制」のロジックを理解できず、英語での表現に自信を持てないでいます。
しかし、ご安心ください。ビジネスシーンでも日常会話でも頻出する現在完了形をマスターすることは、中級者から上級者へ飛躍するための必須条件です。正確に使いこなせるようになれば、「この人は英語ができる」という印象を相手に与えることができます。
この「現在完了形の完全ガイド」シリーズの第1回目となるこの記事では、最も重要な基礎を固めます。
✅ 「Have/Has + 過去分詞」の基本構造と、hasを使う主語のルール。
✅ 規則活用動詞、そして混乱しがちな不規則動詞の4つのパターン。
✅ そして何より、過去形が「点」を、現在完了形が「線」を表すという根本的な違いを、例文を通して徹底的に解説します。
この記事を読み終える頃には、現在完了形に対する「苦手意識」は消え去り、英語の「時間のロジック」が明確に見えてくるでしょう。さあ、一緒に中級者の壁を打ち破りましょう!
現在完了形とは何か

英語の現在完了形は、「過去から現在までつながっている時間の流れ」を表現する特別な時制です。その本質を理解することが、現在完了形マスターへの第一歩になります。
現在完了形の基本的な特徴
現在完了形は日本語にない時制です。その根本的なコンセプトを理解することは難しいのですが、過去形と現在完了形の違いをよく理解しておきましょう:
- 単純過去形(Simple Past)
- 過去のある一点で完了した出来事を表します
- 例:I visited Tokyo last year.(昨年、東京を訪れました)
- この場合、「訪問」という行為は過去で完全に終わっています
- 現在完了形(Present Perfect)
- 過去のある時点から現在まで「つながっている」状態を表します
- 例:I have visited Tokyo.(東京を訪れたことがあります)
- この場合、「訪問」という経験が現在の私に影響を与え続けています
この違いが理解できるか否かが、現在完了形マスターになるかどうかの分岐点です。
現在完了形が日本人学習者を困らせる理由
日本語は時制がシンプルな言語です。「東京に行った」という文は、いつ行ったのかは文脈によって判断します。過去のことも最近のことも、同じ表現で済ませてしまうのです。
一方、英語は時制によってその時間関係を細かく区別します。だからこそ、日本人学習者には現在完了形というコンセプト自体が理解しにくいのです。
しかし、現在完了形は「英語のロジック」を理解するためのカギです。この時制を習得することで、英語という言語がどのように時間の流れを認識するのかが、一気に明確になります。
Have/Has + 過去分詞の基本構造

現在完了形は非常にシンプルな構造で成り立っています。その構造を完全に理解することから始めましょう。
構造の基本:Have/Has + 過去分詞
現在完了形は、以下の2つの要素で構成されます。
現在完了形 = have/has + 過去分詞
- have/has:現在時制の助動詞(正確には、現在完了を作るための動詞(助動詞的機能を持つ本動詞))
- 過去分詞:動詞を過去分詞の形に変化させたもの
Have と Has の使い分け
助動詞 have/has の選択は、「主語」によって決まります。この規則は絶対です。
- have を使う主語:I、You、We、They(および複数形)
- 例:I have finished.(私は終わりました)
- 例:We have arrived.(私たちは到着しました)
- has を使う主語:He、She、It(および三人称単数)
- 例:He has finished.(彼は終わりました)
- 例:She has arrived.(彼女は到着しました)
この区別は、「三人称単数」という基本ルールの延長線上にあります。現在時制で「he goes」「she plays」と s をつけるのと同じロジックです。
過去分詞とは何か
過去分詞とは、動詞を特別な形に変化させたものです。動詞の変化・活用等点が、日本人学習者を最も困惑させます。
- 過去形(Simple Past)
- 単純に「過去の出来事」を表すときに使う
- 例:I worked yesterday.(昨日、仕事をしました)
- 過去分詞(Past Participle)
- 現在完了形、受動態、条件文など複数の用途で使われる
- 例:I have worked for 5 years.(5年間働いています)
同じ「work」という動詞ですが、「worked」という形を2つの異なる用途で使い分けているのです。
- 過去形(Simple Past)は時制であり、「過去のある時点」を表します。
- 過去分詞(Past Participle)は形(非定形動詞)であり、完了や受動態など完了した動作や状態の意味を加える役割を果たします。
- 例:「worked」は過去形(時制)として使われるときと、過去分詞(形)として使われるときで機能が異なる
規則活用と不規則活用の過去分詞

英語の動詞には「規則活用動詞」と「不規則活用動詞」の2つのグループがあります。この分類が、多くの学習者に混乱をもたらします。
規則活用の過去分詞:-ed で統一
規則活用動詞の過去分詞は、シンプルです。動詞の原形に -ed を追加するだけで、過去形と過去分詞の両方が完成します。
| 原形 | 過去形 | 過去分詞 | 現在完了形の例 |
|---|---|---|---|
| work | worked | worked | I have worked. |
| play | played | played | She has played. |
| clean | cleaned | cleaned | He has cleaned. |
| finish | finished | finished | They have finished. |
| study | studied | studied | I have studied. |
規則活用の -ed 化の細かいルール
-ed を追加するとき、いくつかのスペルの変化ルールがあります:
- e で終わる動詞は d だけ追加
- like → liked
- agree → agreed
- 子音 + y で終わる動詞は y を i に変えて ed を追加
- study → studied
- worry → worried
- 短母音 + 子音で終わる動詞は子音を2倍にして ed を追加(1音節の動詞)
- stop → stopped
- plan → planned
これらのルールは、発音と関連があり、英語の音韻体系に則った変化です。
規則活用の実践例
次の文を見てみましょう:
- She has cleaned the room.(彼女は部屋を掃除しました)
- clean(原形)→ cleaned(過去分詞)→ has cleaned(現在完了形)
- They have finished their homework.(彼らは宿題を終わりました)
- finish(原形)→ finished(過去分詞)→ have finished(現在完了形)
規則活用は、シンプルな -ed ルールを覚えるだけで対応できます。
不規則活用の過去分詞:パターンで覚える
ここから先は、中級者が最も苦労する領域です。英語には約200以上の不規則活用動詞があります。それぞれを個別に暗記するのではなく、「パターン」で理解することが学習効率を大幅に高めます。
不規則活用動詞は、原形・過去形・過去分詞の3つが異なる形を持つことが多く、その変化パターンは大きく4つに分類されます。
パターン①:AAA型(3つすべて同じ形)
最もシンプルで、覚えやすいパターンです。原形、過去形、過去分詞が全く同じ形です。
| 原形 | 過去形 | 過去分詞 | 意味 |
|---|---|---|---|
| cut | cut | cut | 切る |
| put | put | put | 置く |
| hit | hit | hit | 叩く |
| let | let | let | させる |
現在完了形の例:
- I have cut the paper.(紙を切りました)
- She has put the book on the desk.(本をデスクの上に置きました)
この型は非常にシンプルで、過去形と同じなので、暗記も容易です。
パターン②:ABA型(過去形のみ異なる)
原形と過去分詞は同じで、過去形だけ異なるというパターンです。現在完了形を作るときは「過去分詞の形」を使うので、注意が必要です。
| 原形 | 過去形 | 過去分詞 | 意味 |
|---|---|---|---|
| come | came | come | 来る |
| become | became | become | 〜になる |
| run | ran | run | 走る |
現在完了形の例:
- They have come to the station.(彼らは駅に来ました)
- She has become a teacher.(彼女は先生になりました)
- We have run 10 kilometers.(10km走りました)
このパターンで頻出するのが come と become です。過去形では came / became と変化しますが、現在完了形では come / become の形に戻ることを忘れずに。
パターン③:ABB型(過去形と過去分詞が同じ)
原形が最も異なり、過去形と過去分詞は同じという形です。多くの不規則活用動詞がこのパターンに属します。
| 原形 | 過去形 | 過去分詞 | 意味 |
|---|---|---|---|
| buy | bought | bought | 買う |
| bring | brought | brought | 持ってくる |
| teach | taught | taught | 教える |
| send | sent | sent | 送る |
| build | built | built | 建てる |
| find | found | found | 見つける |
| have | had | had | 持つ |
| say | said | said | 言う |
| sit | sat | sat | 座る |
| stand | stood | stood | 立つ |
| think | thought | thought | 思う |
現在完了形の例:
- I have bought a new car.(新しい車を買いました)
- She has taught English for 10 years.(10年間英語を教えています)
- We have found the solution.(解決策を見つけました)
このパターンは最も数が多く、頻出する動詞が集中しています。規則性が強いため、パターンで覚えると暗記効率が上がります。
パターン④:ABC型(3つすべて異なる形)
最も複雑で、暗記が必要なパターンです。原形、過去形、過去分詞がすべて異なる形を持ちます。
| 原形 | 過去形 | 過去分詞 | 意味 |
|---|---|---|---|
| begin | began | begun | 始める |
| break | broke | broken | 壊す |
| choose | chose | chosen | 選ぶ |
| do | did | done | する |
| drink | drank | drunk | 飲む |
| eat | ate | eaten | 食べる |
| fall | fell | fallen | 落ちる |
| forget | forgot | forgotten | 忘れる |
| give | gave | given | 与える |
| go | went | gone | 行く |
| know | knew | known | 知っている |
| see | saw | seen | 見る |
| speak | spoke | spoken | 話す |
| take | took | taken | 取る |
| write | wrote | written | 書く |
| swim | swam | swum | 泳ぐ |
| ring | rang | rung | 鳴る |
| sing | sang | sung | 歌う |
| fly | flew | flown | 飛ぶ |
| drive | drove | driven | 運転する |
| ride | rode | ridden | 乗る |
| steal | stole | stolen | 盗む |
| wear | wore | worn | 着る |
| wake | woke | woken | 目覚める |
現在完了形の例:
- I have eaten sushi.(寿司を食べたことがあります)
- He has gone to Tokyo.(彼は東京に行ってしまいました)
- She has written a letter.(彼女は手紙を書きました)
このパターンに属する動詞の多くは、日常会話で頻出します。だからこそ、頭に入れておく必要があります。
不規則活用の覚え方:パターン学習のコツ
不規則活用を全て個別に暗記するのは非効率です。以下の学習法をお勧めします:
- パターンごとにまとめて覚える
- AAA型は最も簡単なので、まずこれを完璧にしましょう
- その次に ABA型、ABB型、ABC型の順で覚えることで、記憶効率が上がります
- 日常会話で頻出する動詞から優先度を付ける
- go / eat / see / do などの頻出動詞を最優先に暗記
- その後、less frequent なものに進む
- フラッシュカードを活用
- 原形→過去形→過去分詞の順番で反復学習
- 隙間時間を活用した定期的な復習が効果的
- 現在完了形の文章に組み込んで覚える
- 単独で暗記するのではなく、「I have ___」という文脈で覚える
- 意味と一緒にインプットすることで、長期記憶に繋がります
過去形と現在完了形の根本的な違い

現在完了形を習得する上で、最も重要なのが「過去形との違い」を理解することです。この違いが分からないと、正確な英語を話すことはできません。
時間軸の視点:「点」と「線」
現在完了形と過去形の違いは、時間軸の捉え方の違いにあります。
- 過去形(Simple Past):「点」で表現
- 過去のある一点で起こった出来事を表します
- その出来事は完全に過去で終わっています
- 時間軸上では「点」として表現されます
- 現在完了形(Present Perfect):「線」で表現
- 過去のある時点から現在まで「つながっている」ことを表します
- その影響や経験が「今も有効」です
- 時間軸上では「線」として表現されます
具体例で理解する
同じ「見る」という行為を表すにしても、以下のように異なります:
- 例文1:過去形を使う場合
-
I saw that movie last year. (昨年、その映画を見ました)
- 映画を見たのは昨年の出来事で、今は終わっています
- 話者と映画の関係は「過去のもの」
- 例文2:現在完了形を使う場合
-
I have seen that movie. (その映画を見たことがあります)
- 映画を見た経験を持ち、それが今の私に影響を与えています
- 話者は「映画を見た経験者」として、現在の状態を表しています
同じ出来事でも、時間軸の捉え方によって、使う時制が完全に変わるのです。
もう一つの例:「転職」
- 例文1:過去形を使う場合
-
She left her job in 2020. (彼女は2020年に仕事を辞めました)
- 2020年という具体的な時点での出来事
- 「いつ」という時間情報が重要
- 例文2:現在完了形を使う場合
-
She has left her job. (彼女は仕事を辞めてしまいました)
- 仕事を辞めたという経験・状態が現在に影響
- 「いつ」という時間情報はない
前者は「歴史的事実」を述べており、後者は「現在の状態」を述べています。
時間表現による使い分けの目安
実は、使う時制を決める手助けになるのが「時間表現」です:
- 具体的な過去の時点を示す表現が付いたら「過去形」を使う
- last year(去年)
- yesterday(昨日)
- in 2020(2020年に)
- when I was young(子どもの頃)
- 時間を限定せず「今までに」という意味なら「現在完了形」を使う
- ever(今までに)
- never(今までに〜ない)
- already(既に)
- yet(まだ)
- recently(最近)
- for 5 years(5年間)
- since 2015(2015年から)
この判断基準が分かると、どちらの時制を使うべきかがグッと明確になります。
練習問題

指示に従って答えてください
Part 1:Choose the correct answer.(1〜5)
括弧内の動詞を正しい形に変えてください。
- I (see) that movie three times.
- She (finish) her homework yesterday.
- We (live) in Osaka for ten years.
- He (go) to Tokyo. He’ll be back next week.
- They (build) a new library in our town last year.
Part 2:Complete the sentences using the present perfect or the past tense.(6〜8)
括弧内の動詞を正しい形に変え、文を完成させてください。
- I _________ (never / eat) sushi before.
- My parents _________ (visit) Hokkaido last summer.
- She _________ (not / call) me yet.
Part 3:Identify the correct form of the verb.(9〜10)
次の動詞を「原形・過去形・過去分詞」の3形で書きましょう。
- choose →
- build →
解答と解説
| No. | 正解 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | have seen | 「今までに3回見たことがある」→経験を表す現在完了形。過去から現在までの「線」。 |
| 2 | finished | 「昨日」という過去の特定の時点があるため、過去形を使用。 |
| 3 | have lived | 「for ten years(10年間)」は過去から現在まで続く期間を示す → 現在完了形(継続)。 |
| 4 | has gone | 「東京に行ってしまって、今ここにいない」→結果を表す現在完了形。主語がHeなので has。 |
| 5 | built | 「last year」という明確な過去時点 → 過去形。 |
| No. | 正解 | 解説 |
|---|---|---|
| 6 | have never eaten | 「今までに〜したことがない」→経験の現在完了。neverが目印。 |
| 7 | visited | 「last summer」=過去の特定時点 → 過去形。 |
| 8 | has not called / hasn’t called | 「yet(まだ)」は現在完了形の否定文・疑問文で使う代表的副詞。 |
| No. | 原形 | 過去形 | 過去分詞 | 解説 |
|---|---|---|---|---|
| 9 | choose | chose | chosen | ABC型の不規則動詞。「3つすべて異なる」。 |
| 10 | build | built | built | ABB型。「過去形と過去分詞が同じ」。 |
📝 まとめ

この第1回「現在完了形の完全ガイド」では、現在完了形の最も重要な基礎となる部分、すなわち構造と過去形との違いを深く掘り下げてきました。
ここで、この記事で学習した最も重要なポイントをおさらいしましょう。
- 構造の鍵: 現在完了形は常に have/has + 過去分詞 で構成される。
- 本質の違い: 過去形は「過去の点」を表し、現在完了形は「過去から現在への線(つながり)」を表す。
- 不規則動詞: cut-cut-cut (AAA型) や eat-ate-eaten (ABC型) のように、パターンで覚えることが上達の近道。
- 使い分けのヒント: last year のような具体的な過去の時を示す語句は過去形、ever や for 5 years のような期間を示す語句は現在完了形が適切。
現在完了形をマスターするということは、英語が時間をどのように認識しているかというロジックを理解することに他なりません。この基礎知識は、あなたの英語力を確実にワンランク上に引き上げてくれます。
🌟 中級者からのステップアップ学習アドバイス
学んだ知識を定着させるために、今日から以下の学習法を取り入れてみてください。
- 「経験」を口に出す練習: I have been to…(〜に行ったことがある)や I have eaten…(〜を食べたことがある)という「経験」の文を10個作り、実際に声に出して練習しましょう。
- 不規則動詞の「変化」を意識: 過去分詞を覚える際、「過去形と同じ形」「過去形と違う形」のように、この記事で紹介したパターンに分類しながら暗記リストを見直すと効率が劇的に上がります。
- 過去形と比べてみる: 日記や短い英文を書く際、「昨日したこと(点)」は過去形を、「これまでに続けていること(線)」は現在完了形を意識的に使い分けてみましょう。
次回予告:第2回目は「肯定文・疑問文・否定文」
基礎構造を理解したところで、次回は実践的な使用法に進みます。第2回では、現在完了形の肯定文、疑問文、否定文の正確な作り方を解説します。さらに、現在完了形が持つ「完了・結果」「経験」「継続」という4つの用法についても、ネイティブがどう使い分けるのか、具体例を交えて詳しく掘り下げていきます。
ぜひ次回の記事もチェックして、現在完了形を完全に自分のものにしてください!
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