「by」に頼らない、自然な英語表現へ
あなたは、受動態を学ぶ中で、「by 以外の前置詞って、どう使い分けるんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
- 「私はその結果に驚いた」と言うとき、I was surprised by the result. は間違いではないけれど、ネイティブはほとんどの場合 I was surprised at the result. と言います。
- 「分析は Excel を使って完了した」と言うとき、with、using、by のどれが適切でしょうか?
受動態の基本構造をマスターした中上級者にとって、「by 以外の前置詞の正確な使用」と「受動態が不自然に聞こえる場面の判断」こそが、文法力をネイティブレベルに引き上げる最後の壁となります。
本記事で習得できること
この Part 3 では、あなたの受動態の知識を完成させる、以下の「最終チェックポイント」を徹底解説します。
- 前置詞の使い分け: with, using, at, in, to など、動詞とのセットで決まる前置詞のルールを体系的に整理し、自動的に正しい前置詞を選べるようにします。
- 不自然な受動態の回避: 文法的に誤りである自動詞の誤用(occur, happen など)を特定し、受動態にすると冗長になるケースを明確に判断する基準を習得します。
- 最終選択指針: 能動態と受動態を、「何を強調したいか」という目的(フォーカス)に基づいて使い分ける、ネイティブの思考回路を理解します。
この記事を読み終えることで、あなたは曖昧な受動態の表現から完全に卒業し、状況に応じて最も自然でプロフェッショナルな英語を選べるようになります。あなたの文法力を「知識」から「実践的な自然さ」へと昇華させましょう!
1. By以外の行為者表現

1.1 受動態における前置詞の多様性
これまで、受動態の「行為者」を表すのに by を使ってきました。確かに、by は最も一般的な行為者表現ですが、英語の受動態には by以外にも多くの前置詞が使われます。
by の役割:動作を行う人・ものを表す
The report was written by Sarah. (レポートはサラによって書かれた)
しかし、受動態に伴う情報は「行為者」だけではありません。手段、道具、原因、感情など、様々な情報を表現する前置詞があります。
1.2 手段・道具を表す表現:With と Using
受動態で最もよく混同される前置詞が with と using です。この2つは、一見似ていますが、使い方に明確な違いがあります。
With:物質的な「道具」や「手段」を表す
With は、物理的な道具や材料を表します。
構造: Be動詞 + 過去分詞 + with + 物質的な道具/材料
実例で理解する
例題1:食べ物と道具
The cake was decorated with colorful frosting. (ケーキはカラフルなアイシングで飾られた)
→ with:物質的な材料(アイシング)
The document was written with a pen. (ドキュメントはペンで書かれた)
→ with:物質的な道具(ペン)
職場での例:
The wall was painted with a new color. (壁は新しい色で塗られた)
The spreadsheet was filled with data. (スプレッドシートはデータで満たされた)
例題2:感情や状態を伴う場合
She was filled with pride. (彼女は誇りで満たされた)
→ with:感情(誇り)
The office was covered with dust. (オフィスはほこりで覆われた)
→ with:物質(ほこり)
Using:方法や手順を表す
Using は、具体的な方法、プロセス、またはソフトウェア/ツールを表します。With より「方法論的」です。
構造: Be動詞 + 過去分詞 + using + 方法/ツール/ソフトウェア
実例で理解する
例題1:ソフトウェアやツール
The analysis was completed using Excel. (分析はExcelを使って完了した)
→ using:ツール(Excel)
The design was created using Adobe Creative Suite. (デザインはAdobe Creative Suiteを使って作成された)
→ using:ソフトウェア
職場での実例:
The report was generated using our new project management software.
(レポートは新しいプロジェクト管理ソフトウェアを使って生成された)
The survey was conducted using online platforms.
(調査はオンラインプラットフォームを使って実施された)
例題2:手続きや方法
The problem was solved using a systematic approach.
(問題は体系的なアプローチを使って解決された)
→ using:方法(体系的なアプローチ)
The budget was calculated using the new formula.
(予算は新しい公式を使って計算された)
→ using:方法(公式)
With vs Using:比較表
| 前置詞 | 何を表すか | 例 | フォーカス |
|---|---|---|---|
| with | 物質的な道具・材料 | decorated with frosting | 「何を使ったか」=具体的な物 |
| using | ツール・ソフト・方法 | completed using Excel | 「どのように」=方法・手段 |
実務的な使い分け例
シーン:プレゼンテーションの作成
- With を使う場合(材料に焦点):
-
The presentation was enhanced with high-quality images.
(プレゼンテーションは高品質の画像で強化された)
→ 何が使われたか(画像)を強調 - Using を使う場合(方法に焦点):
-
The presentation was created using PowerPoint.
(プレゼンテーションはPowerPointを使って作成された)
→ どのツールで作ったか(PowerPoint)を強調
シーン:データ分析
- With を使う場合(材料に焦点):
-
The report was filled with detailed statistics.
(レポートは詳細な統計で満たされた)
→ 何が含まれているか(統計) - Using を使う場合(方法に焦点):
-
The analysis was performed using machine learning algorithms.
(分析は機械学習アルゴリズムを使って実行された)
→ どのような方法で行ったか(機械学習)
2. 原因・感情を表す前置詞

受動態には、原因や感情を表す様々な前置詞があります。これらは動詞と組み合わせて使われることが多く、動詞によって前置詞が決まるのが特徴です。
主要な前置詞と代表的な動詞の組み合わせ
| 前置詞 | 意味 | よく使われる動詞の組み合わせ | 例文 |
|---|---|---|---|
| at | ~に(驚きなど) | surprised, shocked, alarmed | Be surprised at the news. |
| with | ~で(物質・充満) | covered, filled, satisfied, impressed | Be covered with dust. |
| in | ~に(興味・色など) | interested, dressed, involved | Be interested in the project. |
| of | ~の(恐怖・嫌悪など) | afraid, ashamed, guilty, accused | Be afraid of failure. |
| to | ~に(関連・愛着など) | related, attached, accustomed, committed | Be committed to excellence. |
| for | ~のために(目的・理由) | known, remembered, designed, responsible | Be known for quality. |
At:驚きや衝撃を表す
構造: Be + 形容詞 + at + 事柄
代表的な動詞:
- be surprised at
- be shocked at
- be amazed at
- be alarmed at
- be disgusted at
実例
例題1:ビジネス環境での驚き
Everyone was surprised at the sudden announcement. (誰もが唐突な発表に驚いた)
The management was shocked at the quarterly results. (経営陣は四半期の結果にショックを受けた)
実際の会話:
A: What did you think of the news? (そのニュースをどう思いましたか?)
B: Honestly, I was surprised at how quickly everything happened. I expected it to take longer.
(正直なところ、すべてが起きた速さに驚きました。もっと時間がかかると思いました)
例題2:問題発見時
The quality team was alarmed at the defect rate.
(品質チームは不良率に警告された)
Investors were concerned at the declining performance.
(投資家は低下するパフォーマンスに懸念を抱いた)
With:物質や充満を表す
構造: Be + 形容詞 + with + 物質/状態
代表的な動詞:
- be covered with
- be filled with
- be satisfied with
- be impressed with
- be blessed with
実例
例題1:物理的な覆い・充満
The document was covered with official stamps. (ドキュメントは公式なスタンプで覆われた)
The conference room was filled with chairs and tables. (会議室は椅子とテーブルで満たされた)
職場での実例:
The office walls were decorated with employee artwork.
(オフィスの壁は従業員のアートワークで飾られた)
The bulletin board was plastered with announcements.
(掲示板は発表でべたべた貼られた)
例題2:感情や状態
I was impressed with your presentation. (あなたのプレゼンテーションに感銘を受けました)
The client was satisfied with the final product. (クライアントは最終製品に満足していました)
実際のメール:
I was very impressed with your work on this project. Your dedication and attention to detail are outstanding.
(このプロジェクトのあなたの仕事に非常に感銘を受けました。あなたの献身と細部への注意は素晴らしい)
例題3:感謝や祝い
He was blessed with exceptional talent. (彼は並外れた才能に祝福されていた)
The team was blessed with strong leadership. (チームは強力なリーダーシップに恵まれていた)
In:興味や関与を表す
構造: Be + 形容詞 + in + 事柄
代表的な動詞:
- be interested in
- be involved in
- be dressed in
- be engaged in
実例
例題1:関心・参与
She was interested in the new product launch.
(彼女は新製品発売に興味がありました)
The team was heavily involved in the decision-making process.
(チームは意思決定プロセスに大きく関わっていました)
職場での実例:
I am not involved in that project. (私はそのプロジェクトに関わっていません)
Are you interested in the training program? (トレーニングプログラムに興味ありますか?)
例題2:服装や見た目
The staff were dressed in formal business attire.
(スタッフは正式なビジネスアティアで身を包んでいた)
The guests were dressed in their finest clothes.
(ゲストは最高の服で身を包んでいた)
Of:恐怖や嫌悪を表す
構造: Be + 形容詞 + of + 事柄
代表的な動詞:
- be afraid of
- be ashamed of
- be guilty of
- be accused of
- be capable of
実例
例題1:感情(恐怖、嫌悪)
I am afraid of making mistakes. (私は間違いを恐れています)
The employee was ashamed of the error. (従業員はそのエラーを恥じていた)
職場での実例:
Are you afraid of the upcoming presentation? (今度のプレゼンテーションが怖いですか?)
例題2:責任・告発
He was accused of embezzlement. (彼は横領で告発された)
The company was guilty of tax evasion. (会社は脱税で有罪だった)
To:関連や愛着を表す
構造: Be + 形容詞/動詞の過去分詞 + to + 事柄
To は受動態では「関連(related to)」や「献身(committed to)」を示すだけでなく、be known to...(〜に知られている)や be addressed to…(〜宛である)のように方向や対象を示す場合もあります。
代表的な動詞:
- be related to
- be attached to
- be accustomed to
- be committed to
- be devoted to
実例
例題1:関連性
This issue is related to the previous complaint. (この問題は以前の苦情に関連している)
The new regulation is tied to the recent incident. (新しい規制は最近のインシデントに関連している)
例題2:愛着や慣れ
I am attached to this company. (私はこの会社に愛着を持っています)
Employees are accustomed to the new system. (従業員は新しいシステムに慣れている)
職場での実例:
Our team is committed to meeting deadlines. (私たちのチームは期限を守ることに約束しています)
She is devoted to her work. (彼女は仕事に献身的です)
For:特徴や理由を表す
構造: Be + 形容詞/過去分詞 + for + 事柄
代表的な動詞:
- be known for
- be remembered for
- be famous for
- be responsible for
- be designed for
実例
例題1:特徴・評判
The company is known for its innovation.
(会社はイノベーションで知られている)
She is remembered for her leadership during the crisis.
(彼女は危機中のリーダーシップで記憶されている)
職場での実例:
Our team is famous for delivering quality products.
(私たちのチームは品質の高い製品を提供することで有名です)
例題2:責任・目的
Who is responsible for this decision? (誰がこの決定に責任があるのか?)
This tool is designed for ease of use. (このツールは使いやすさのために設計されている)
より多くの実例:
The software is intended for data analysis.
(ソフトウェアはデータ分析を目的としている)
The training program is set up for new employees.
(トレーニングプログラムは新入社員のために設定されている)
3. 前置詞の選択:動詞とのセット

非常に重要なポイント: 英語では、前置詞は「動詞と一体」で決まることが多いです。受動態では、この関係がそのまま保持されます。
動詞と前置詞のセット:リファレンス表
| 表現 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| be interested in | ~に興味がある | I am interested in marketing. |
| be satisfied with | ~に満足している | I am satisfied with the results. |
| be surprised at | ~に驚いている | I am surprised at the outcome. |
| be covered with | ~で覆われている | The floor is covered with dust. |
| be filled with | ~で満たされている | The room is filled with people. |
| be impressed with | ~に感銘を受ける | I am impressed with your work. |
| be afraid of | ~を恐れている | I am afraid of failure. |
| be ashamed of | ~を恥じている | I am ashamed of my mistake. |
| be accused of | ~で告発される | He is accused of theft. |
| be guilty of | ~で有罪である | The company is guilty of fraud. |
| be committed to | ~にコミットしている | We are committed to excellence. |
| be related to | ~に関連している | This is related to our discussion. |
| be known for | ~で知られている | She is known for her expertise. |
| be responsible for | ~に責任がある | Who is responsible for this? |
3.1 複合的な前置詞表現:実務的な活用例
シーン1:会議でのフィードバック
複数の前置詞を組み合わせる:
The team was impressed with the proposal. However, they were concerned about the timeline. The project is ambitious, but we are committed to delivering on schedule.
(チームは提案に感銘を受けました。しかし、彼らはタイムラインに懸念を抱いていました。プロジェクトは野心的ですが、予定通り納品することに約束しています)
シーン2:従業員レビュー
John was recognized for his outstanding contributions. His work is characterized by attention to detail. However, he was reminded of the importance of meeting deadlines. Overall, the team was satisfied with his performance.
(ジョンは優れた貢献で認識されました。彼の仕事は細部への注意が特徴です。しかし、彼は期限を守ることの重要性を思い出させられました。全体的に、チームは彼のパフォーマンスに満足していました)
シーン3:プロジェクト報告
The implementation was successful, and the client was pleased with the results. The system is designed for scalability and is equipped with advanced security features. We are confident that this solution will address your requirements.
(実装は成功し、クライアントは結果に満足していました。システムはスケーラビリティのために設計され、高度なセキュリティ機能が装備されています。このソリューションはあなたの要件に対応するだろうと確信しています)
4. 英語で受動態が不自然なケース(能動態への変換)

4.1 受動態が常に正しいわけではない
これまでの学習では「受動態の作り方」に焦点を当ててきました。しかし、英語ネイティブスピーカーは、すべての文を受動態にするわけではありません。むしろ、多くの場合、能動態の方が自然で効果的です。
受動態が不自然な場合を理解することは、より自然な英語を話し・書くために重要です。
4.2 行為者が自明な場合:省略の傾向
ケース1:一般的な行為者(「人々」「誰か」など)
行為者が「一般人」「人々」「誰か」など曖昧な場合、受動態は自然に使われますが、場合によっては能動態が選ばれることもあります。
例題1:会議の開催
✓ The meeting was held in the office. (会議はオフィスで開かれた)
→ 受動態:誰が開いたかは重要でない
✓ We held the meeting in the office. (私たちはオフィスで会議を開いた)
→ 能動態:主語が明確
✗ The meeting was held there. (会議はそこで開かれた)
→ 不自然。「どこで」が既に明確な場合、能動態が自然
✓ We held the meeting there. (私たちはそこで会議を開いた)
→ より自然
例題2:発表会の開催
✓ The conference was held last month. (会議は先月開かれた)
→ 受動態:いつ、どこで、誰がは詳細にならない
✗ The conference was held in Tokyo last month. (会議は先月東京で開かれた)
→ やや冗長
✓ We held the conference in Tokyo last month. (私たちは先月東京で会議を開いた)
→ より直接的で効率的
ケース2:「~される」が文脈から明らかな場合
場合によって、動作が非常に明らかで、受動態にすると冗長に聞こえることがあります。
例題:規則やプロセス
✗ Your application will be reviewed by the hiring team, and a decision will be made.
(あなたの申請は採用チームによってレビューされ、決定が下されるでしょう)
→ 冗長:「採用チーム」と「決定」は既に明確
✓ The hiring team will review your application and make a decision.
(採用チームはあなたの申請をレビューし、決定を下すでしょう)
→ より直接的で簡潔
例題:手続き説明
✗ Your resume will be submitted by you, and it will be evaluated by the committee.
(あなたの履歴書はあなたによって提出され、それは委員会によって評価されます)
→ 冗長で不自然
✓ Please submit your resume, and the committee will evaluate it.
(履歴書をご提出ください。委員会が評価します)
→ より自然で命令的(カスタマー向けの指示に適切)
4.3 自動詞の誤用:受動態にできない動詞
自動詞(intransitive verbs) は、目的語を必要としない動詞です。
目的語がないため、文法的に受動態にすることはできません。
belong は典型的な自動詞で、
- 目的語を取らない
- 「状態」を表す動詞
という特徴を持つため、受動態にも進行形(be belonging)にもなりません。
また、「前置詞と組み合わせると他動詞的な意味になる句動詞」(例:look after → be looked after)とは性質が異なり、belong は前置詞を伴っても他動詞にはならず、常に自動詞として扱われます。
代表的な自動詞:受動態が作れない
| 動詞 | 意味 | 例文(能動態) | 受動態化 |
|---|---|---|---|
| occur | 起きる | An accident occurred. | ✗ 不可 |
| happen | 起きる | Something happened. | ✗ 不可 |
| fall | 落ちる | He fell down. | ✗ 不可 |
| rise | 上がる | The sun rises. | ✗ 不可 |
| appear | 現れる | A problem appeared. | ✗ 不可 |
| disappear | 消える | The file disappeared. | ✗ 不可 |
| arrive | 到着する | The train arrived. | ✗ 不可 |
| depart | 出発する | The flight departed. | ✗ 不可 |
| exist | 存在する | A solution exists. | ✗ 不可 |
| belong | 属する | This belongs to me. | ✗ 不可(※やや特殊) |
誤りの例と正しい表現
例題1:Occur / Happen
✗ An incident was occurred yesterday.
→ 文法的に誤り。「occurred」は受動態にできない
✓ An incident occurred yesterday. (事件が昨日起きた)
→ 能動態のみ
✗ A problem was happened in the system.
→ 文法的に誤り
✓ A problem happened in the system. (システムで問題が起きた)、または
✓ A problem developed in the system. (システムで問題が発生した) → 他動詞に置き換える
例題2:Disappear
✗ The data was disappeared from the server.
→ 文法的に誤り
✓ The data disappeared from the server. (データはサーバーから消えた)、または
✓ The data was lost from the server. (データはサーバーから失われた)
→ 他動詞に置き換える
例題3:Arrive / Depart
✗ The package was arrived yesterday.
→ 文法的に誤り
✓ The package arrived yesterday. (パッケージは昨日到着した)、または
✓ The package was delivered yesterday. (パッケージは昨日配送された)
→ 他動詞に置き換える
職場での誤りの例
シーン:ビジネスメール
✗ The issue was occurred during the system update.
→ 誤り
✓ The issue occurred during the system update. (問題はシステムアップデート中に起きた)、または
✓ An issue was discovered during the system update. (問題がシステムアップデート中に発見された)
→ 他動詞に置き換える
シーン:事故報告
✗ An accident was happened in the warehouse.
→ 誤り
✓ An accident happened in the warehouse. (倉庫で事故が起きた)、または
✓ An accident occurred in the warehouse. (倉庫で事故が起きた)
4.4 不必要な受動態:能動態の方が自然な場合
多くの場合、能動態の方がより簡潔で、より「直接的」で、より自然です。 不必要に受動態を使うと、文が冗長で弱い印象を与えます。
パターン1:主語が明確で重要な場合
受動態が選ばれるのは、「行為者が不明または重要でない」場合です。逆に、主語が明確で重要な場合は、能動態の方が適切です。
例題:責任者を明確にしたい場合
✗ The budget was reduced by the finance department. (予算は財務部によって削減された)
→ 受動態でも理解できるが、弱い
✓ The finance department reduced the budget. (財務部は予算を削減した)
→ 能動態:責任がより明確
実務的には: 誰が何をしたかが明確な場合、能動態が強いメッセージを伝えます。
例題:責任追及の場面
✗ The deadline was missed by the development team. (期限はチームによって逃された)
→ 責任が曖昧に聞こえる
✓ The development team missed the deadline. (開発チームは期限を逃した)
→ 責任がより明確
パターン2:二重構文が冗長な場合
時に、受動態を使うと「二重の表現」になり、冗長に聞こえます。
例題1:委託関係
✗ The project was assigned to us by the manager.
(プロジェクトは私たちにマネージャーによって割り当てられた)
→ 冗長
✓ The manager assigned the project to us. (マネージャーは私たちにプロジェクトを割り当てた)
→ より簡潔
例題2:通知
✗ We were informed of the policy change by HR. (ポリシー変更はHRによって私たちに知らされた)
→ 冗長
✓ HR informed us of the policy change. (HRはポリシー変更を私たちに知らせた)
→ より簡潔
パターン3:連続した受動態が弱い
複数の受動態が連続すると、文が弱く、動的でなくなります。
例題:報告書
✗ The project was approved by the board. The team was directed to proceed with implementation. Funding was allocated by finance. A deadline was set.
→ 受動態が続くと、弱く、無責任に聞こえる
✓ The board approved the project. The director instructed the team to proceed with implementation. Finance allocated funding, and we set a deadline.
→ 能動態が混在し、より動的で責任感のある印象
- 連続する受動態は避け、能動態を混在させて文を動的にする
- 自動詞を誤って受動態にしていないか確認
- occur, happen, fall などは受動態不可
- 行為者(by + 人)が不要になっていないか確認
- 行為者がない受動態は、より客観的に見える
受動態マスターのための最終的なポイント
- 受動態は「何が」に焦点を当てるツール
- 行為者が不明・重要でない時に使う
- 結果や状態に焦点を当てたい時に使う
- 能動態は「誰が」に焦点を当てるツール
- 行為者が明確で重要な時に使う
- 責任や主体性を示したい時に使う
- フォーマル度による選択
- アカデミック = 受動態多用
- ビジネス = 混在(責任+結果のバランス)
- 日常会話 = 能動態が自然
- 複雑な受動態も理解し、適切に使用
- 二重目的語、知覚動詞、使役動詞、群動詞
- 前置詞の正確な使用
- 不自然な受動態は避ける
- 自動詞の誤用を避ける
- 複数の受動態の連続を避ける
- 責任が曖昧になる表現を避ける
5. 練習問題

Part 1:前置詞の使い分け(with / using / at / in / of / to / for)
指示:最も自然な前置詞を選び、文を完成させなさい。
- The report was completed ______ Excel. (Excelを使って)
- The presentation was enhanced ______ high-quality images. (高品質な画像で強化された)
- Everyone was surprised ______ the sudden changes.
- The room was filled ______ new furniture.
- She was interested ______ joining the new project.
- The employee was ashamed ______ the mistake.
- Our team is committed ______ improving customer satisfaction.
- The company is known ______ its innovative solutions.
Part 2:with / using の使い分け
指示:with または using のどちらが自然か答えよ。(理由も後で解説)
- The analysis was performed ______ a new machine learning algorithm.
- The cake was decorated ______ fresh strawberries.
- The budget was calculated ______ the formula given by the finance team.
- The wall was painted ______ a roller.
Part 3:正しい(自然な)受動態か? 不自然なら能動態に書き換えよ
指示:文が自然なら「自然」と答え、不自然なら自然な文に書き換えなさい。
- Your application will be reviewed by the hiring team.
- The conference was held in Tokyo last month.
- We were informed of the change by HR.
- The project was assigned to us by the manager.
- Funding was allocated by finance, and a deadline was set.
Part 4:自動詞の誤用(受動態不可) → 正しい文に書き換えよ
- The issue was occurred during the update.
- The package was arrived yesterday.
- The data was disappeared from the server.
- An accident was happened in the warehouse.
Part 5:前置詞チェック(動詞とのセット)
指示:もっとも自然な表現を1つ選べ。
- I was impressed ___ your proposal.
A. at
B. with
C. of
D. about - The employees were concerned ___ the delay.
A. at
B. with
C. of
D. to - The tool is designed ___ beginners.
A. for
B. to
C. with
D. at
解答
Part 1:前置詞の使い分け(with / using / at / in / of / to / for)
- using → ソフト・方法は using
- with → 物質・材料は with
- at → 驚き・衝撃は be surprised at
- with → filled with(充満・物質)
- in → interested in(興味)
- of → ashamed of(恥)
- to → committed to(コミットしている)
- for → known for(理由・特徴)
Part 2:with / using の使い分け
- using → 方法:algorithm(方法・手法)
- with → 材料:strawberries → with
- using → 公式・手順 → using
- with → 物理的な道具 → with
Part 3:正しい(自然な)受動態か? 不自然なら能動態に書き換えよ
- 自然 行為者が必要なフォーマル文脈。受動態 OK。
- 不自然 → 能動態へ
We held the conference in Tokyo last month. → 情報を並べた受動態は冗長 - 不自然 → 修正
HR informed us of the change. → 受動態は冗長になる典型例 - 不自然 → 修正
The manager assigned the project to us. → 二重構文の受動態は弱くなる - 不自然 → 改善案
Finance allocated funding, and we set a deadline. → 受動態の連続は弱い文章になる
Part 4:自動詞の誤用(受動態不可) → 正しい文に書き換えよ
- The issue occurred during the update. (occur は受動態不可)
- The package arrived yesterday. (arrive は自動詞)
- The data disappeared from the server. (disappear は受動態不可)
- An accident happened in the warehouse. (happen は受動態不可)
Part 5:前置詞チェック(動詞とのセット)
- B. with
I was impressed with … - A. at
concerned at … - A. for
designed for(目的)
まとめ

受動態マスターのための最終チェックリスト
Part 3を通じて、受動態の応用的な用法と、能動態と受動態の最終的な使い分け基準を習得しました。
| 最終チェックポイント | 重要なルール | 実践的なヒント |
| 行為者以外の前置詞 | 前置詞は動詞(過去分詞や形容詞)とセットで決まる。 | be satisfied with、be interested in のように、セットで暗記する。 |
| 手段・方法 | with は道具/材料(written with a pen)、using は方法/ツール/ソフト(completed using Excel)で使い分ける。 | by(行為者)との違いも意識する。 |
| 自動詞の誤用 | 自動詞(occur, happen, arrive など)は、受動態にできない(目的語がないため)。 | 能動態のまま使うか、他動詞(was discovered)に置き換える。 |
| 能動態 vs 受動態 | 行為者(誰が)を強調したい場合は能動態。結果や行為の対象(何が)を強調したい場合は受動態。 | 責任や主体性を示す場合は能動態を選ぶ。 |
🎯 文法力と英会話力を完成させるための学習アドバイス
学んだ知識を「ネイティブの自然さ」へと定着させるための実践的なアドバイスを3つご紹介します。
- 前置詞の「連語(Collocation)」を徹底的に習得する
- 受動態で使う前置詞の多くは、動詞や形容詞とセット(連語)になっています。単語帳を作る際は、be surprised at, be committed to, be responsible for のように、セットで覚えましょう。前置詞がセットであることを理解すれば、動詞を見ただけで適切な前置詞を自動的に選べるようになります。
- 受動態の文章を「簡潔な能動態」に変換する訓練
- 複雑な受動態の文章(特に長いビジネス文書)を読み、それを能動態に書き直す練習をしてください。この訓練により、文の主体(行為者)が明確になり、不必要な受動態を避けるべき場面が感覚的に理解できるようになります。
- 「自動詞の誤用」をゼロにする
- happen や occur などの自動詞を、うっかり受動態で使ってしまうミスは、文法ミスの中でも目立ちやすいものです。報告書やメールを作成する際は、これらの動詞を使っていないか、最終チェックリストとして必ず確認する習慣をつけましょう。
最終ステップへ
Part 1から Part 3を通して、あなたは受動態の基本構造、応用構文、そして自然な選択基準のすべてをマスターしました。この知識は、あなたの英語の正確性、そして表現力を確実にプロレベルへと引き上げます。
これらの原則を意識しながらアウトプットを重ね、自信を持って受動態を使いこなしてください。
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