「外国語を身につけるには、その国に行って生活するのが最適の方法だ!」などとよく言われています。まさにその通りです。高校3年間+大学4年間=合計7年間も留学できたらいいですよね! それが可能な方は是非行ってください。素晴らしい世界が開けてくると思います。
残念ながら、それは全ての英語学習者に可能な方法ではありません。私も行けませんでした。それでも、留学も海外生活もせずに日本で勉強した結果、英語・英会話講師を経て、講師トレーナー、管理者として数千人以上の外国人講師と日本人講師に「英会話の教え方」を指導してきました。
自分自身の学習経験、講師として初心者から上級者まで担当し学習者の悩みや喜びを共有し、また指導した講師達の実例に基づいて、日本で英語を学ぶ方法を伝えていきたいと思います。目的やレベルごとに学習方法が変わってきますので、概要からそれぞれの方法へ進み、必要な部分を読んでください。
1. なぜ英語を学ぶのか
「英語話せるようになりたいですか?」と尋ねると、ほとんどの人が「はい」と答えると思います。書店に行けば、英語・英会話・TOEIC対策など、壁一面に書籍が積んであります。英会話スクールもあれば、オンラインレッスン、英語学習アプリなど、英語学習に関した商品やサービスに溢れています。
「なぜ英語を話せるようになりたいのか?」を考えたことはありますか? 英会話講師として勤務していた時、生徒さんから聞いた答えはこんな感じです。
- 「英語が出来た方が就職/転職に有利だから」
- 「将来必要だと思うから」
- 「海外旅行に行ったとき話せると便利だから」
- 「町で外国人に道を聞かれたとき困らないように」
確かに、全て良い理由だと思います。でも私が勤務していた英会話スクールは週に1,2回レッスンを受けて年間授業料は30-45万円くらいでした。当然ながら「週1回レッスンを受けるだけ」では話せるようにならないので、自分で数十分なり、数時間なり、勉強しないといけません。3⁻4年続けたら100万円以上の金額になります。
確かに「英語が出来た方が就職/転職に有利だから」も「将来必要だと思うから」も、そうかもしれませんが、必ずしも英語が本当に必要な業種や職種に就くとはかぎりません。
「海外旅行に行ったとき話せると便利だから」も「町で外国人に道を聞かれたとき困らないように」もその通りですが、海外旅行にどのくらいの頻度で行くのでしょう?
外国人に道を聞かれるのは1年に何回あるのでしょう?
「なぜ英語を話せるようになりたいのか?」
恐らく、無意識のうちに、TVCM、雑誌や交通広告、インターネットやSNSの広告に影響されて、「英語が話せると世界が変わる!」と言うような印象が潜在意識に根付いてしまったのかもしれません。
実際に私がスクールの現場で勤務していた時に、体験レッスンやカウンセリングをする時には、セールストークとして使っていました。
海外旅行楽しいですよね!でも英語が話せるようになると、実際に現地の人とコミュニケーションが取れてもっと楽しくなりますよ!
海外の飲食店の店員さんとか、良く話しかけてくれるので、その時に英語が話せると、お勧めのスポットとか、現地の人しか知らない穴場とか、色々教えてくれますよ!
私もそうやって知り合った現地の人といまでもFacebookで繋がっています。
とか、
近い将来転職をかんがえていらっしゃるんですよね?
グローバル化が進んでいる中、日本は少子高齢化が進んでいて市場規模が縮小していく一方なので、どの分野でも海外を視野に入れている企業が増えています。
今お持ちの経験やスキルに英語力が加わると一気に可能性が広がります。
ビジネスに必要な英語力を身につけるには時間が掛かるので、今の時期が計画的に英語力を伸ばしていくことが必要です。
とか、
恐らく、どこの英会話スクールでも、英語学習教材のセールスでも同じような事を言うと思います。保険の勧誘とかもおなじですよね。
「英語が話せると世界が変わる!」
これは噓ではありません。本当に変わります。でも、そのためには何年も何年も時間と労力とお金を掛けて取り組んでいく必要があります。
「自然と身につく英会話!」
みたいな物は存在しません。
- 本当に英語力を身につけたい人
- 時間も労力も惜しまずに英語力を身につけたい人
是非、私が「留学も海外生活もせずに日本国内で英語を身につけた方法」を参考に、初心者から上級者までの学習方法を実践してみてください。
そして、
- 「そこまでする必要ないかな?」って気づいた人
- 「ちょっと会話が出来るようになればいいかな?」って思った人
自分の目的を明確に理解し、「割り切って考えれば」、それほどお金も時間もかけずに、ダウンサイズした目標を達成できます。初心者の学習方法だけ読み、軽い気持ちで試してみてください。
2. 英語と英会話の違い?
「英語」と「英会話」って何が違うんですか?
考えたことありますか?
英会話スクールに来る初心者のお客さんに良く言われたことがあります。
- 「学校の英語は大嫌いで苦手だったけど、英会話なら出来そうな気がして」
- 「学校の英語は大嫌いで苦手だったけど、ワーホリ行けば英語話せるようになるって聞いたし」
だから、英会話学校へ通えば自然と英語が話せるようなれるし、学校でやった英語の授業みたいに必死になって辞書引いて単語調べて、難しい文法とか覚える必要ないはず!
まして、ワーホリとか行ったら、生活しているうちに自然と英語なんか話せるようになるし、お金も稼げるし、一石二鳥。もう会社とかやめちゃった方が良いかも!
しかし残念ながら、「英語」と「英会話」は同じものです。
一般的な日本人の場合、「英語」と言うと受験英語に代表される学校の英語の授業をイメージするのでしょう。「英会話」と言うと、海外旅行に行った時のための「トラベル英会話」みたいなイメージなのでしょうか。
でも「英語」は「英語」で、“読む”“書く”“聞く”“話す“のすべてを指すし、「英会話」はそのうちの“聞く”“話す“に重点が置かれるものの、実際に”旅行“するにしても“読む”“書く”“聞く”“話す“がすべて必要になってきます。
- 本当に英語力を身につけたい人
- 時間も労力も惜しまずに英語力を身につけたい人
現時点でどのくらいのレベルにいる人でも、これから自分が目標とする英語力に到達するためには、「英語力」を向上させるという意識を持つようにしてください。「話す力」を伸ばすためには、“読む”“書く”“聞く”“話す“、”文法力“”発音“などすべてが必要になります。
どちらかと言うと、学生時代のテスト勉強より、もっと正確な文法の知識と速く読む力が求められてくるのだと思って下さい。
そして、
- 「そこまでする必要ないかな?」って気づいた人
- 「ちょっと会話が出来るようになれば良いかな?」って思った人
「中学校で勉強した内容ってすごく役に立っているんだな」って思っていただければ大丈夫です。自分の目的を明確に理解し、「割り切って考えれば」、学校の英語の勉強のように大変な思いまでして頑張る必要はありません。安心して下さい。
3. ここでのレベル設定 - 初級者・中級者・上級者とは?
学習方法の説明をするために、便宜上、“初級者”、“中級者”、”上級者“に分けます。実際には、一人ひとり、得意不得意の分野が違うので、こんな単純に分けられる訳ではありません。ただし、それぞれの段階で重要な事項が変わってくるので、ここでの“初級者”、“中級者”、”上級者“のレベル設定を簡単に紹介しておきます。
初心者
一般的な日本人成人対象にした英会話スクールの場合、レベル設定は学校の英語教育を前提に設定していきます。大雑把に言ってしまうと、初心者の場合、中学校1年~2年くらいの英語の授業で出てくる内容が中心になります。文法レベルで考えると分かりやすいと思います。
- 現在形・現在進行形
- 過去形
- 未来形
- 数えられる名詞・数えられない名詞
- 肯定文・疑問文・否定文
- 比較級・最上級など
- 中学校1年〜2年の教科書に出てくる単語・熟語
- 身の回りの事を表現する語句
- 日常的な動作
- 家の中にある物の名前
中級者
同様に、中級者の場合、中学校3年~高校1年くらいの英語の授業で出てくる内容が中心になります。文法レベルで考えると分かりやすいと思います。
- 現在完了形
- 受動態
- 不定詞・動名詞・現在分詞・過去分詞
- 関係代名詞・関係副詞
- 間接話法・間接疑問文・時制の一致
- 仮定法など
- 中学3年〜高校1年レベル
- 人の外見・性格・特徴を表現する語句
- テレビ・映画・スポーツなど趣味を説明する語句
- 学校や仕事の具体的な内容を説明する語句
上級者
同様に、上級者の場合、高校2年~大学受験くらいの英語の授業で出てくる内容が中心になります。文法レベルで考えると分かりやすいと思います。
- 仮定法過去・仮定法過去完了
- 倒置・挿入
- 前置詞を含む関係代名詞など
- 高校2年〜大学入試レベル
- 一般的なニュース・雑誌などを理解するのに必要な語句
- 小説を読むのに必要な語句
- Youtubeなどの動画を理解するのに必要な語句
だいたいの目安として考えてみてください。
1点だけ注意があります。
私の言う「英語力」は、コミュニケーションのために必要な英語の総合力です。各レベルで挙げた、文法力と語彙・表現力は、「使えるレベル」を指しています。「頭で理解しているレベル」ではありません。
外国語学習は、よく「楽器の演奏」や「スポーツ」に例えられます。例えば、「楽器の演奏」で考えてみると、「使えるレベル」と「頭で理解しているレベル」は次のようになります。
「頭で理解しているレベル」
- ある曲を譜面などで理解し、楽器のどの部分を押さえて、どう鳴らせば良いか理解している
- ある曲を“部分部分”演奏する事ができる
「使えるレベル」
- ある曲を、最初から最後まで、人前で弾く事が出来る
- 指や体の動きと頭の中の音が一致している
この両者の間には大きな違いがあるのがわかるでしょうか?「英語力」のレベルは、この「使えるレベル」で考えてみてください。では、次のセクションで、具体的な学習方法の説明に入ります。