最近、「AI英会話」という言葉をよく耳にするようになりました。英語学習の新たな手法として注目を集めていますが、本当に効果的な英会話練習ができるのでしょうか?今回は、英語教育の専門的観点から「AI英会話」の実力と限界について考察します。
結論:AI英会話は役に立つ、ただし条件付きで
結論から先に述べると、AI英会話は英語学習に役立ちます。ただし、効果的に機能する場合と機能しない場合があります。この点は実は「AI英会話」に限った話ではなく、人間の英会話講師との練習でも同様です。
AI英会話が特に役立つ2つの分野

1. 表現を覚える
表現を覚えることは、書籍やオーディオブック、ビデオ教材、スクールなど様々な方法で可能です。AIだから特に優れているわけではありませんが、自分で場面設定を選べる柔軟性がAI英会話の大きなメリットです。書籍やビデオ教材でも同様のことは可能ですが、AIアプリ上で設定する方が圧倒的に便利です。そして、継続しやすいという点が結果的に高い学習効果につながります。
2. 発音・イントネーションのチェック
音声認識技術は近年飛躍的に進歩しており、覚えた表現が実際に通じるかどうかを客観的に判断できることはAIの得意分野です。AI英会話アプリでは、これら二つの機能を組み合わせて、ゲーム感覚で練習できるため、英語が苦手な人でも取り組みやすいでしょう。
フリーカンバセーションへの期待と現実

多くの学習者が期待するのは、AIとのインタラクティブな会話、いわゆる「フリーカンバセーション」を練習できることではないでしょうか。AIと自由に会話を重ねることで、劇的に英会話力が向上することを期待している方も多いと思います。しかし、これはあまり現実的ではありません。
日本人学習者の英語学習における誤解
日本人学習者の多くが誤解しているのは、英語を話せない原因が「英語を話す機会が少ないから」という点です。実際には、語彙や文法力など「インプットが足りない」ことが最大の原因です。
初心者が「フリーカンバセーション」的な練習だけを続けても、英語が話せるようになるわけではありません。他の外国語で考えてみると分かりやすいでしょう。例えば、ドイツ語を全く学んだことがない人が、ドイツ人とひたすら会話練習を続けても、効果は限定的です。
英語の場合は学校教育で基礎を学んでいるため多少のインプットはありますが、英語が苦手な初心者の場合、語彙力や文法力が圧倒的に不足しています。だからこそ「表現力を伸ばす」練習が重要なのです。
AI英会話での効果的な練習と非効果的な練習

効果的な練習例
例1: ホームステイ場面
ホームステイ家族: "How was your day?"
あなた: "It was great, thanks. I visited the city."
ホームステイ家族: "That sounds fun! What did you see?"
この場合、AIは「ホームステイ家族」の役割を担います。学習者が “I visited the city.” と言えば、AIはそれに反応して相槌を打ったり質問をしたりします。学習者は自分の行動について「質問に答える」練習ができます。
例2: レストランでの予約
レストラン: "Hello, how can I help you?"
顧客: "I'd like to make a reservation for dinner tonight."
レストラン: "What time would you like to come in?"
この例も機能します。学習者は “I’d like to make a reservation for dinner tonight.” という定型文を練習し、AIの質問に答えるだけです。
効果が限定的な練習例
例: レストランでの注文
店員: "Are you ready to order?"
あなた: "Yes, I'll have the New York strip steak, medium rare, please."
店員: "Great choice! Would you like any sides with that?"
一見良さそうな練習ですが、実はあまり効果的ではありません。学習者は英語の練習というより「想像力」を試されています。レストランを想像し、そのメニューや飲み物を想像しなければならず、言葉に詰まるのは英語の問題ではなく想像力の問題になってしまいます。
これは「AI英会話」に限った話ではなく、経験の浅い英会話講師がよくやりがちなパターンです。「英語ではなく、想像力」の問題で学習者が言葉に詰まってしまう例です。
効果的なAI英会話アプリの条件

以下の点がしっかりと考慮されているアプリであれば、非常に効果的です:
1. 練習の目的が明確に設定されている
- 表現を覚える
- リスニングの練習をする
- 発音の練習をする
- コミュニケーションの練習をする
2. 「コミュニケーションの練習」の場合は、「英語の問題」と「想像力の問題」を切り分けている
- 場面設定が明確(視覚化されているとなお良い)
- 役割が明確に設定されている
- 必要な語彙が提供されている
3. 難易度の調整ができている
「コミュニケーションの練習」の場合は、徐々に難易度を上げていくことが重要です。少しずつビルドアップして、自由度を高めていくように設計されていると効果的です。
まとめ

「AI英会話」は確かに英語学習に役立ちます。特に「表現を覚える」「発音・イントネーションのチェック」という点で優れています。
しかし、「コミュニケーションの練習」が目的の場合は、アプリの選択が重要です。英語の問題と想像力の問題が適切に切り分けられ、明確な目的と段階的な難易度設定があるアプリを選びましょう。
AI英会話は万能ではありませんが、適切に活用すれば、英語学習の強力なツールになります。自分の学習段階や目的に合わせて、上手に取り入れていきましょう。
この記事は、初心者学習者向けに簡略化した内容にしてあります。
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