「受動態は『能動態の言い換え』に過ぎない」——。もしそう思っているなら、非常にもったいないことです。
実は、英語ネイティブは「ただなんとなく」受動態を使っているわけではありません。そこには、「何を一番に伝えたいか」「責任をどこに置くか」「文章の流れをどう作るか」といった、高度なコミュニケーション戦略が隠されています。
本シリーズでは、中級者の方がつまずきやすい「get受動態」や「前置詞の使い分け」はもちろん、上級者への扉を開く「情報構造理論」までを全6回で徹底解説します。単なる文法知識を、あなたの武器になる「実践的なスキル」へとアップデートしていきましょう。
📚 シリーズ全体の構成と学習の流れ

【全体マップ】受動態マスターへの6ステップ
- 【基礎編】
- Part 1 → Be-Passiveの基本構造と役割
- 【応用編】
- Part 2 → Get-Passive / 進行形・完了形の受動態
- Part 3 → 二重目的語 / 使役動詞 / 群動詞の受動態
- 【実践編】
- Part 4 → 前置詞の使い分け / 不自然な受動態の回避
- 【戦略編】
- Part 5 → 能動態vs受動態の選択基準(文体別)
- Part 6 → 情報構造理論とネイティブの焦点戦略(上級)
1. Be-Passiveの基本構造と役割を徹底理解

「受動態はわかっているつもりだけど、いざ話そうとすると能動態ばかりになってしまう……」。そんな悩みはありませんか?まずは受動態の「形」をおさらいしつつ、なぜネイティブがあえて受動態を選ぶのか、その「視点の切り替え」の本質をマスターしましょう。
🎯 この記事で学べること
- 受動態の本質:「誰が」から「何が」への焦点移動
- 時制ごとの正確な構造(現在・過去・未来・完了形)
- 動作の受動態と状態の受動態の違い
- 疑問文・否定文の作り方
📌 重要ポイント
受動態の基本構造
Be動詞(時制に応じて変化)+ 過去分詞 + (by + 行為者)
役割分担
- Be動詞:時制・主語との一致・文法操作を担当
- 過去分詞:「~される」という受動の意味を担当
💼 ビジネスでの活用例
能動態(行為者に焦点)
My colleague sent the report.
受動態(結果に焦点)
The report was sent yesterday.
➡️ ビジネスでは「誰が」より「何が起こったか」が重要な場面が多い
🔗 記事リンク

2. Get-Passiveで表現力を広げる|進行形・完了形も完全マスター

「I got fired(クビになった)」と「I was fired」。この2つの違いを説明できますか?Part 2では、日常会話で欠かせない get を使った受動態のリアルなニュアンスや、時制が組み合わさった少し複雑な形をスッキリ整理していきます。
🎯 この記事で学べること
- ネイティブが多用するGet-Passiveの3つのニュアンス
- 進行形の受動態(今まさに進行中の表現)
- 完了形の受動態(現在に影響を与える過去の行為)
- Be-PassiveとGet-Passiveの使い分け基準
📌 重要ポイント
Get-Passiveの3つの特徴
- 状態の変化を強調
The window got broken. (壊れた←変化の過程) - 予期せぬ出来事・驚き
I got fired! (感情がこもる) - 自動的な結果
I got stuck in traffic. (~してしまった←不運な状況に陥った(被害・不利益) )
💬 カジュアル会話での活用
Be-Passive(フォーマル)
The meeting was canceled by the CEO.
Get-Passive(カジュアル)
The meeting got canceled at the last minute!
注意: get-passive は「予期せぬ変化」や「(好ましくない)結果」によく使われます。get married(結婚する)のようなポジティブな慣用表現もありますが、基本は「動作・変化」に焦点があります。
🔗 記事リンク
受動態 Part 2:Get-Passiveと進行形・完了形

3. 複雑な構文の受動態|二重目的語・使役動詞・群動詞

「make O do(〇〇に〇〇させる)」の受動態でなぜ “to” が復活するのか、混乱したことはありませんか?ここでは、中級者が最もミスをしやすい特殊な構文を扱います。ルールさえ分かれば、ビジネスメールの表現幅がぐっと広がります。
🎯 この記事で学べること
- SVOO構文(二重目的語)の2通りの受動態
- 使役動詞(make/let/have)の受動態の特別ルール
- 知覚動詞(see/hear)の受動態
- 群動詞(phrasal verbs)の受動態
📌 重要ポイント
二重目的語の受動態:2つのパターン
能動態:The manager gave the team a deadline.
- 受動態① 人を主語に(より自然)
The team was given a deadline.
- 受動態② モノを主語に(より形式的)
A deadline was given to the team.
使役動詞makeの受動態:toが復活
能動態:The manager made the team work overtime.
受動態:The team was made to work overtime.
➡️ 原形不定詞がto不定詞に変化
補足: let は受動態にできません。代わりに be allowed to を使います。
🔗 記事リンク

Part 4:前置詞の使い分けと不自然な受動態の回避

受動態といえば “by” ですが、実は “by” 以外を使うケースこそが表現のキモです。また、「発生した」と言いたい時に “was occurred” と言ってしまうような、よくある誤用も徹底排除。自然な英語への最終チェックを行いましょう。
🎯 この記事で学べること
- byだけじゃない!前置詞の正確な使い分け
- with / using / at / in / to / forの選択基準
- 自動詞の誤用(occur/happen等は受動態不可)
- 能動態の方が自然な場合の判断基準
📌 重要ポイント
前置詞の使い分けマトリクス
| 前置詞 | 意味 | 代表的な組み合わせ | 例文 |
|---|---|---|---|
| with | 物質的な道具 | covered with, filled with | The cake was decorated with frosting. |
| using | ツール・方法 | completed using, created using | The analysis was completed using Excel. |
| at | 驚き・衝撃 | surprised at, shocked at | I was surprised at the news. |
| in | 興味・関与 | interested in, involved in | She was interested in the project. |
| to | 関連・愛着 | related to, committed to | We are committed to excellence. |
受動態にできない自動詞
❌ An incident was occurred.
✅ An incident occurred.
❌ The data was disappeared.
✅ The data disappeared.
🔗 記事リンク

Part 5:能動態vs受動態の最終選択|焦点と文体による戦略的使い分け

「文法的に正解」でも「文脈的に不自然」な英語から卒業しましょう。この回では、ビジネスでのミス報告や成果アピールなど、シーンに合わせた戦略的な使い分けを伝授します。あなたの英語に「意図」を込めるトレーニングです。
🎯 この記事で学べること
- 「何を強調したいか」による能動態・受動態の選択
- 文体別の使い分け(アカデミック/ビジネス/日常会話)
- 責任の明確化 vs 客観性の保持
- ネガティブ情報をマイルドに伝える技法
📌 重要ポイント
選択の基本原則
| 状況 | 選択 | 理由 |
|---|---|---|
| 責任を明確にしたい | 能動態 | We achieved the target. |
| 結果に焦点を当てたい | 受動態 | The target was achieved. |
| 行為者が不明/不重要 | 受動態 | The files were deleted. |
| マイルドに伝えたい | 受動態 | A mistake was made. |
💼 実務シーン別の使い分け
シーン① 成果報告(能動態で主体性)
Our team achieved 95% of the sales target.
シーン② 問題報告(受動態で客観性)
A critical error was detected in the system.
シーン③ ミス指摘(受動態でマイルドに)
A mistake was made in this calculation. Let’s fix it together.
🔗 記事リンク

Part 6【上級編】:情報構造理論とネイティブの焦点戦略

「文法は完璧なのに、なぜか文章が読みにくいと言われる」。その原因は、英語特有の『情報の並べ方』にあるかもしれません。言語学の視点から、説得力のある英文を書くための「究極のルール」を解き明かします。
🎯 この記事で学べること(上級者向け)
- テーマ・レーマ理論(Theme-Rheme Theory)
- Given-New Principle(旧情報→新情報の原則)
- 複数文での情報フロー構築
- 焦点の段階的移動による説得力ある文章
📌 重要ポイント
英語の情報配置の黄金律
文頭(主語)= 旧情報(既知)
文末(述部)= 新情報(未知)
受動態の言語学的役割 ➡️ 焦点を「誰が」から「何が」へ移動させるメカニズム
📊 情報フローの実例
悪い例(旧情報の繰り返し)
We completed the research. The research showed opportunities.
We analyzed the opportunities. The opportunities were prioritized.
良い例(段階的な新情報の提供)
The research was completed and revealed several opportunities.
The opportunities were then analyzed and prioritized.
- the research was completed → 行為者(we)を出さず、プロセス重視の客観的表現
- revealed opportunities → showed よりもレポート・ビジネス文脈で自然
- were then analyzed and prioritized → then を入れることで手順の流れが明確
🎓 学術的背景
この記事は以下の言語学理論に基づいています:
- テーマ・レーマ理論(プラハ学派)
- 機能文法(M.A.K. Halliday)
- 情報構造論(認知言語学)
🔗 記事リンク

🎯 推奨学習ルート

【初級~中級者向け】基礎固めコース(3-4週間)
- Week 1: Part 1 基本構造の理解
↓ 練習:時制ごとの受動態作成 - Week 2: Part 2 Get-Passive / 進行形・完了形
↓ 練習:カジュアル会話での活用 - Week 3: Part 3 複雑な構文
↓ 練習:ビジネスメールでの応用 - Week 4: Part 4 前置詞と誤用回避
↓ 総復習と実践演習
【中上級者向け】実践応用コース(2-3週間)
- Week 1: Part 1-4 の復習(速習)
- Week 2: Part 5 戦略的使い分け
↓ 練習:シーン別の文章作成 - Week 3: Part 6 情報構造理論(上級)
↓ 実践:長文レポート作成
📝 学習アドバイス

✅ 効果的な学習方法
- 段階的な理解
- Part 1で基礎を固めてから次へ
- 各Partの練習問題を必ず解く
- 実践的な練習
- 自分のビジネスメールを受動態で書き直す
- ニュース記事の受動態を分析する
- 会話で意識的に使ってみる
- 定期的な復習
- 1週間後、1ヶ月後に復習
- 誤用パターンをメモして確認
- 文脈を意識
- 「文法的に正しい」だけでなく
- 「この状況で最も自然か」を考える
⚠️ よくある学習の落とし穴
❌ すべてを受動態にしようとする
➡️ ✅ 能動態の方が自然な場面も多い
❌ byを常につける
➡️ ✅ 行為者が不明・不重要なら省略
❌ フォーマル度を無視
➡️ ✅ 会話ではGet-Passive、論文ではBe-Passive
よくある質問(FAQ)
Q1: どのPartから始めればいい?
A: 基本はPart 1からの順番学習を推奨。ただし、特定の課題があれば該当Partから始めてもOK。
Q2: 学習にどれくらい時間がかかる?
A: 基礎コース(Part 1-4)で3-4週間、実践コース(Part 5-6)で2-3週間が目安。
Q3: 受動態を使いすぎるのはNG?
A: はい。能動態の方が自然な場面も多いです。Part 5で詳しく解説しています。
Q4: ビジネスメールではどちらを使うべき?
A: 状況による。責任を明確にする場面では能動態、客観性を保つ場面では受動態。Part 5参照。
まとめ:受動態は「戦略的コミュニケーションツール」

お疲れ様でした!全6回にわたる受動態マスター講座はいかがでしたか?
受動態を学ぶことは、単に「〜される」という形を覚えることではありません。それは、「話し手の意図を正確に配置する」技術を手に入れることです。
- 基礎で形を整え
- 応用で表現の幅を広げ
- 戦略で文脈をコントロールする
このステップを意識するだけで、あなたの英語は驚くほどプロフェッショナルで、自然な響きに変わるはずです。
🚀 さらなるステップアップ:次に取り組むべき重要テーマ
受動態を理解したあなたが、次に向かうべき道は3つあります。これらを組み合わせることで、表現力は爆発的に向上します。
- 「分詞」を極める(後置修飾のマスター) 受動態の「過去分詞」は、名詞を後ろから説明する際にも大活躍します。受動態の知識があれば、分詞による説明もスムーズに理解できます。 👉 [【中級編】名詞を操る分詞マスター講座はこちら]
- 「関係代名詞」で情報を繋ぐ Part 6で学んだ「情報構造(旧情報→新情報)」をさらに深めるなら、関係代名詞は必須です。受動態と組み合わせることで、複雑な情報もスッキリと伝えられるようになります。 👉 [【実践】関係代名詞で文章に流れを作る方法はこちら]
- 「完了形」で時間の深み出す Part 2でも触れた完了形。受動態と完了形が組み合わさった「have been + 過去分詞」を自由自在に操れるようになると、ビジネスでの状況報告がより正確になります。 👉 [【決定版】現在完了・過去完了の使い分けガイドはこちら]
一度にすべてを完璧にする必要はありません。まずは今日書くメール、今日話す一言から、今回学んだ「視点」を意識してみてください。あなたの挑戦を応援しています!
🔗 シリーズ記事一覧
- Part 1:Be-Passiveの基本構造
- Part 2:Get-Passiveと進行形・完了形
- Part 3:複雑な構文の受動態
- Part 4:前置詞の使い分けと不自然な受動態
- Part 5:能動態vs受動態の最終選択
- Part 6:情報構造理論とネイティブの焦点戦略
📖 さらなる英語学習をお考えの方へ

基礎から学び直したい方はこちら

語彙力を強化したい方はこちら
本格的な英語学習方法を知りたい方はこちら
このガイドは、35年以上の英語教育経験を持つ矢野晃によって作成されました。数千人の講師を育て数千人の生徒を指導してきた実績に基づく、実践的で効果的な学習方法をお届けしています。










