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中級者向け英文法:受動態の完全ガイド⑤|【最終チェック】能動態 vs 受動態:ネイティブが選ぶ「焦点と強調」の原則とコミュニケーション戦略

文法的に正しい」から「最も伝わる」表現へ

あなたは、受動態の複雑なルールをすべてマスターし、もう文法的な間違いは犯しません。しかし、こんな場面で迷うことはありませんか?

  • 重要な成果を報告するとき、We achieved the goal.(能動態)と The goal was achieved.(受動態)のどちらがプロフェッショナルに聞こえるか?
  • 同僚のミスを指摘するとき、相手を責めずに協力的な姿勢を示すには、どう表現すれば良いか?
  • 研究論文や公式文書で、客観性を保ちながら、スムーズに情報を伝えるには?

受動態の真価は、その「使い分けの判断力」にあります。ネイティブスピーカーは、何を強調したいか(焦点)という明確な意図に基づいて、能動態と受動態を戦略的に使い分けています。この判断力こそが、あなたの英語を「正確な英語」から「効果的なコミュニケーション」へと昇華させる鍵です。

本記事で習得できること

この Part 4 は、あなたの受動態学習の最終チェックポイントです。本記事で学ぶ「焦点と強調の原則」をマスターすれば、あなたはもう表現に迷いません。

  1. 焦点と強調の原則: 文の主語に誰が(行為者)を置くか、何が(結果や対象)を置くかという、情報構造に基づくネイティブの思考を理解します。
  2. 実務的使い分け: 責任を明確にする場面、客観性を優先する場面、あるいはネガティブな情報をマイルドに伝えるコミュニケーション戦略を習得します。
  3. 文体別選択: アカデミック、ビジネスメール、日常会話といった文脈に応じた受動態と能動態の適切な比率を把握します。

この最終レッスンを通じて、受動態を単なる文法ルールとしてではなく、表現の意図を伝える戦略的なツールとして、自信を持って使いこなしましょう。

目次

1. 焦点と強調の原則:何を伝えたいかで選ぶ

「言いたいこと」が変わると、選ぶ文が変わる

英語の受動態と能動態の選択は、文法的な正誤ではなく、コミュニケーションの意図によって決まります。簡単なポイントは次の通りです:

  • 能動態を選ぶ「誰が」「何をしたのか」という行為者と行動を明確にしたい場合
  • 受動態を選ぶ行為者が重要ではなく、「何が」「どうなったのか」という結果や対象に焦点を当てたい場合

1.1 能動態を選ぶケース:責任と行動を明確にしたいとき

ケース1:責任の所在を明確にする

職場での重要な決定や失敗の場面では、「誰が」を明確にする必要があります

例文1-1:プロジェクトの遅延について上司に報告する場合

弱い表現(受動態)

The deadline was missed because of unexpected issues.
(期限が逃されました。予期しない問題のため。)

より強力な表現(能動態)

We missed the deadline because of unexpected issues with the vendor.
(私たちは期限を逃しました。ベンダー側の予期しない問題のため。)

違いの解説:受動態では「何が起こったか」という事実だけが述べられていますが、能動態では「私たちが」という主体性と責任が明確になります。ビジネスの場では、説明責任を果たすために能動態が好まれます。

例文1-2:良い成果を報告する場合

不自然な表現(受動態)

The sales target was achieved by our team this quarter.
(売上目標は達成されました。今四半期、私たちチームによって。)

自然で主体的な表現(能動態)

Our team achieved the sales target this quarter.
(私たちチームは今四半期、売上目標を達成しました。)

会話例

上司:Did you manage to hit the target? (目標達成できましたか?)
部下:Yes, we achieved it ahead of schedule. (はい、予定より早く達成しました。)

ケース2:行為者の行動や判断を責めたり、褒めたりする

例文2-1:同僚の協力をお礼として伝える場合

距離がある表現(受動態)

The presentation was prepared successfully. (プレゼンテーションは無事準備されました。)

心が伝わる表現(能動態)

You prepared the presentation very thoroughly.
(君はプレゼンテーションを本当にしっかり準備してくれたね。)

違いの解説受動態では誰が準備したのかあいまいですが、能動態なら「あなたが」という相手の貢献を直接認めることができます。これにより、相手への信頼と感謝が明確に伝わります。

例文2-2:ミスを指摘する場合

ぼやかした表現(受動態)

A serious error was made in the financial report. (深刻な誤りが財務報告書に作られました。)

直接的で明確な表現(能動態)

John made a serious error in the financial report. (ジョンは財務報告書に深刻な誤りを犯しました。)

会話例

マネージャー:John made a serious error in the financial report. We need to discuss this.
(ジョンは財務報告書に深刻な誤りを犯しました。これについて話し合う必要があります。)

この表現は、責任を明確にしながらも、改善の機会として捉える姿勢を示します。

1.2 受動態を選ぶケース:結果や対象に焦点を当てたいとき

ケース1:行為者が不明、不重要、またはあえて隠したい

例文3-1:オフィスの設備に関するメモ

不自然な表現(能動態で無理やり主語を作る)

Someone accidentally deleted the important files from the server.
(誰かが誤ってサーバーから重要なファイルを削除しました。)

自然で焦点が明確な表現(受動態)

The important files were accidentally deleted from the server.
(重要なファイルが誤ってサーバーから削除されました。)

違いの解説誰が削除したかは重要ではなく、「何が削除されたのか」「どのような状況なのか」に焦点を当てる場合、受動態が自然です。

例文3-2:ニュース記事での表現

不適切な能動態

Somebody canceled the meeting without any explanation.
(誰かが説明なしでミーティングをキャンセルしました。)

より中立的で自然な受動態

The meeting was canceled without any explanation.
(ミーティングが説明なしでキャンセルされました。)

ケース2:行為者よりも「起こった出来事」や「変化」に焦点を当てたい

例文4-1:会社の組織変更について説明する場合

行為者に焦点(受動態が不自然)

The management decided to reorganize our department structure.
(経営陣は部門構造の再編成を決めました。)

変化に焦点(受動態が自然)

Our department structure is being reorganized next month.
(私たちの部門構造は来月、再編成されます。)

会話例

従業員A:Did you hear about the restructuring? (再編成について聞きました?)
従業員B:Yes, our department structure is being reorganized next month. I’m not sure what will change yet.
(ええ、私たちの部門構造は来月、再編成されます。まだどのように変わるか確実ではありません。)

違いの解説:会社全体の変化を淡々と説明する際は、経営陣の判断プロセスより「部門がどう変わるのか」という結果に焦点を当てるほうが、リスナーの関心に合致します。

例文4-2:プロダクトの改善について

能動態で詳細に説明しすぎ

Our engineering team modified the user interface to improve usability.
(私たちのエンジニアリングチームはユーザーインターフェースを変更しました。)

変化そのものに焦点(受動態)

The user interface has been modified to improve usability.
(ユーザーインターフェースは使いやすさを向上させるために変更されました。)

会話例

ユーザー:This interface looks different. (このインターフェース、違う見た目ですね。)
サポート:Yes, it‘s been modified to improve usability. Let me walk you through the new features.
(そうですね、使いやすさを向上させるために変更されました。新しい機能についてご説明します。)

ケース3:「不特定多数」や「一般的な慣習」を表現する

例文5-1:職場のルール説明

不自然な能動態

People expect everyone to attend the Monday morning meeting.
(人々は誰もが月曜の朝のミーティングに出席することを期待しています。)

自然な受動態

Everyone is expected to attend the Monday morning meeting.
(全員が月曜の朝のミーティングに出席することが期待されています。)

違いの解説「people」という曖昧な行為者より、「期待されている」という一般的な慣習や規範に焦点を当てるほうが、職場のルールとして自然に機能します。

例文5-2:社会的な常識

不自然な能動態

People recommend that you wear business attire to job interviews.
(人々は、君がジョブインタビューでビジネスアティアを着ることを勧めます。)

自然な受動態

Business attire is recommended for job interviews.
(ジョブインタビューではビジネスアティアが推奨されています。)

ケース4:行為者をあえて曖昧にして、マイルドに表現したい

例文6-1:誰かのミスを指摘するときに、ソフトに伝える

直球で相手を責める(能動態)

You made a mistake in this calculation. (君はこの計算にミスを犯しました。)

ソフトで協調的(受動態)

A mistake was made in this calculation. Let’s double-check it together.
(この計算にミスがあったようです。一緒に確認しましょう。)

会話例

マネージャー:A mistake was made in this calculation. Let’s double-check it together.
(この計算にミスがあったようです。一緒に確認しましょう。)
部下:You’re right. I’ll fix it right away.
(おっしゃる通りです。すぐに直します。)

違いの解説能動態で「You made」と言うと、相手を直接責める感じになります。受動態で「A mistake was made」とすると、相手を責めるのではなく、問題の解決に協調的に取り組む姿勢が伝わります。

例文6-2:ネガティブなニュースを伝える

直球で悪いニュースを告げる(能動態)

I‘m canceling your request because we don’t have enough budget.
(予算がないので、あなたのリクエストをキャンセルします。)

ソフトで説明的(受動態)

Your request has been declined due to budget constraints.
(予算上の制約により、あなたのリクエストが見送られました。)

2. 文体による選択:フォーマルからカジュアルまで

英語では、話す相手や場面によって、同じ内容でも文体を変えます。受動態と能動態の選択も、この文体の違いに大きく影響されます。

2.1 アカデミック・ライティングと公式文書:客観性を優先する

アカデミック(学術的)な文脈では、著者の個人的な視点より「客観的な事実」を強調することが重要です。そのため、受動態が多く使われます

理由1:著者の主観性を排除し、客観性を保つ

例文7-1:実験レポート

主観的(能動態)

I analyzed the sample and found that the concentration was very high.
(私がサンプルを分析して、濃度が非常に高いことがわかりました。)

客観的(受動態)

The sample was analyzed and a high concentration was found.
(サンプルが分析され、高い濃度が発見されました。)

違いの解説受動態を使うことで「I」という著者の主観性を排除し、「サンプルが分析された」という事実だけが浮き彫りになります。科学的な報告では、誰が分析したかではなく「何が明らかになったか」が重要です。

例文7-2:研究論文の導入部

能動態で個人的な視点

Previous researchers demonstrated that climate change affects ocean temperatures.
(前の研究者たちは気候変動が海水温に影響することを実証しました。)

受動態で客観的な事実

It has been demonstrated that climate change affects ocean temperatures.
(気候変動が海水温に影響することが実証されています。)

理由2:権威性と一般的な知見を示す

例文8-1:医学的知見

個人的意見(能動態)

We know that regular exercise improves health.
(私たちは、定期的な運動が健康を改善することを知っています。)

一般的な知見(受動態)

It is well-known that regular exercise improves health. または
Regular exercise is known to improve health.
(定期的な運動が健康を改善することはよく知られています。)

違いの解説「We know」能動態で言うと、「私たちが知っている」という限定的な印象を与えます。受動態で「It is known」と表現すると、広く認められている事実として提示できます。

例文8-2:統計的なリサーチペーパー

能動態で個人的な研究成果を強調

I conducted a survey and found that 70% of employees prefer remote work.
(私はサーベイを実施し、従業員の70%がリモートワークを好むことを発見しました。)

受動態で客観的な結果報告

A survey was conducted, and it was found that 70% of employees prefer remote work.
(サーベイが実施され、従業員の70%がリモートワークを好むことが発見されました。)

2.2 ビジネスメールと公式文書:丁寧さと客観性のバランス

ビジネスメールでは、能動態と受動態の両方が使われますが、使い分けに工夫があります。

ケース1:相手への指示や依頼をやさしく伝える

例文9-1:締切の通知

直球で命令的(能動態)

You must submit your report by Friday. (君は金曜日までにレポートを提出しなければならない。)

丁寧で柔らか(受動態)

The report is expected to be submitted by Friday.
(レポートは金曜日までに提出することが期待されています。)

または

Your report is due by Friday. (あなたのレポートは金曜日が期限です。)

違いの解説「You must submit」と直接命令すると命令的に聞こえます。受動態で「The report is expected」と表現すると、チーム全体に対するルール設定として、より丁寧に聞こえます。

会話例(メール)

件名:Project Report Submission Deadline

Dear Team,

I hope this email finds you well. A reminder that the project report is due by Friday, 5 PM. Please ensure that all sections are completed before submission.

Best regards, Jane

例文9-2:情報通知

能動態で一方的に伝える

I changed the meeting time to 3 PM. (私はミーティング時間を午後3時に変更しました。)

受動態で丁寧に周知する

The meeting time has been changed to 3 PM. (ミーティング時間が午後3時に変更されました。)

ケース2:謝罪や説明をする

例文10-1:遅延の説明

責任を押し付ける感じ(能動態)

Our supplier delayed the shipment, so we couldn’t deliver on time.
(サプライヤーが出荷を遅延させたので、私たちは時間に配達できませんでした。)

状況説明として客観的(受動態)

The shipment was delayed due to unforeseen circumstances, and therefore the delivery was postponed. (予期しない状況のため出荷が遅延し、その結果配達が延期されました。)

違いの解説:「Our supplier delayed」と責任を明確にするより、「The shipment was delayed」状況を説明することで、よりプロフェッショナルで謝罪の気持ちが伝わります。

メール例

件名:Delivery Delay Notice

Dear Customer,

Thank you for your patience. Unfortunately, your order has been delayed due to supply chain issues. It is now expected to arrive by next Monday.

We sincerely apologize for any inconvenience this may cause.

Best regards, Customer Service Team

例文10-2:機械的なトラブルを報告

誰かを責める印象(能動態)

Someone misconfigured the system, and now it doesn’t work.
(誰かがシステムを誤って設定して、今は動きません。)

問題解決に向けた報告(受動態)

The system was misconfigured and is currently being repaired by our IT team.
(システムが誤って設定されており、現在IT チームによって修復されています。)

2.3 日常会話:能動態が中心、get-passive の活躍

日常会話では、能動態が圧倒的に多く使われます。相手との距離が近く、親密な関係では「誰が」という主語を明確にすることが自然だからです。

ケース1:日常的な出来事の報告

例文11-1:友人に今日の出来事を話す

不自然な受動態

My laptop was broken by my cat this morning. (私のラップトップは今朝、私の猫に壊されました。)

自然な能動態

My cat broke my laptop this morning! (今朝、猫が私のラップトップを壊しちゃった!)

会話例

A:You look stressed. What happened? (ストレスそうですね。何があったんですか?)
B:My cat broke my laptop this morning. I’m hoping the data is okay.
(今朝、猫が私のラップトップを壊しちゃったんです。データが大丈夫だといいんですが。)

違いの解説:日常会話では、何が起こったかを素早く、親密に伝えるために能動態を使います。

ケース2:感情や経験を伝える場面で get-passive の活躍

カジュアルな会話では、get-passive(get + 過去分詞)が頻繁に使われます。特に予期しない出来事や変化、感情的な内容を表現するときに活躍します。

例文12-1:予期しない出来事

be-passive で無感情

My backpack was stolen at the train station. (私のバックパックは駅で盗まれました。)

get-passive で感情がこもっている

My backpack got stolen at the train station! (駅でバックパックが盗まれちゃった!)

違いの解説「was stolen」客観的な事実を述べているだけです。「got stolen」「不運なことが起こった」という感情動きのあるニュアンスが加わります。

会話例

A:Why do you look upset? (どうして落ち込んでるんですか?)
B:My backpack got stolen at the train station yesterday. I lost all my important documents.
(昨日、駅でバックパックが盗まれちゃったんです。重要な書類をなくしてしまいました。)

例文12-2:プロセス中の変化

be-passive で中立的

The pizza is delivered at 6 PM. (ピザは午後6時に配達されます。)

get-passive で「今まさに動いている」

The pizza is getting delivered at 6 PM. (ピザが午後6時に配達されようとしています。)

違いの解説「is delivered」静的な事実「is getting delivered」は「今まさに配達が進行している」という動きのあるニュアンスです。

例文12-3:人間関係の変化

be-passive で冷淡

They were broken up by their parents. (彼らは親に別れさせられました。)

get-passive で自発的な感じ

They got broken up last month. It was difficult. (先月、彼らは別れちゃいました。つらかったです。)

会話例

A:Are you still dating Tom? (まだトムと付き合ってるんですか?)
B:No, we got broken up last month. It was tough, but we’re still friends.
(いいえ、先月別れちゃったんです。つらかったですが、まだ友達です。)

ケース3:指示やアドバイスをカジュアルに伝える

例文13-1:友人へのアドバイス

受動態でよそよそしい

That should be done immediately. (それは直ちに行われるべきです。)

能動態でカジュアル

You should do that right away. または Get that done ASAP. (すぐにそれをやるべきですよ。)

会話例

A:I’ve been thinking about fixing my car for months. (何ヶ月も車を修理することを考えてるんです。)
B:Get that done ASAP! It’s not safe to drive around with those issues.
(すぐにやっちゃいなよ!その状態で乗るのは安全じゃないよ。)

3 総合演習と実用文での応用

ここからは、実際の英語使用場面で能動態と受動態を使い分ける練習をします。

3.1 記事・ニュースの分析:なぜ記者は受動態を選んだのか

英語のニュース記事では、様々な理由で受動態が多く使われます。その背景を理解することで、自分がいつ受動態を使うべきかがより明確になります。

分析例1:ニュース見出しと本文

記事例:会社の買収ニュース

見出しTech Giant Acquires Startup in $500 Million Deal (テック大手がスタートアップを5億ドルで買収)

本文第1段落 A major technology company has announced the acquisition of a promising software startup. The deal, valued at $500 million, was finalized yesterday and marks the largest acquisition in the sector this year.

(大手テクノロジー企業がソフトウェア系スタートアップの買収を発表しました。5億ドルと評価されたこの取引は昨日完了し、同業界では今年最大の買収となります。)

第2段落The startup was founded in 2018 and has become known for its innovative cloud-based solutions. The acquisition is expected to accelerate the parent company’s expansion into emerging markets.

(このスタートアップは2018年に設立され、革新的なクラウドベースのソリューションで知られるようになりました。この買収は、親会社の新興市場への進出を加速させると予想されています。)

分析:なぜ受動態が使われているのか

表現能動態の場合受動態が選ばれた理由
has announcedCompany announced買収というニュースそのものに焦点
was finalized(Company) finalized「完了した」という事実が重要
was founded(Someone) foundedスタートアップの履歴として「設立」が重要
is expected(We) expect客観的な予測として提示

学習ポイント:ニュース記事では、「何が起こったのか」という出来事や結果が中心です。そのため、行為者よりも「起こった事実」に焦点を当てる受動態が自然に多くなります。

分析例2:職場での出来事レポート

シナリオ:オフィスで設備のトラブルが発生。それを報告する文を比較します。

硬い能動態版

Yesterday, someone discovered a water leak in the break room. The maintenance team investigated the issue and determined that the pipes were old. They decided to replace them.

(昨日、誰かが休憩室で水漏れを発見しました。メンテナンスチームが問題を調査して、パイプが古いことを判断しました。彼らはそれらを交換することを決定しました。)

スムーズな受動態版

Yesterday, a water leak was discovered in the break room. The cause has been identified as aging pipes, and they are being replaced today by the maintenance team.

(昨日、休憩室で水漏れが発見されました。原因は古いパイプであると特定されており、本日メンテナンスチームによって交換されています。)

違いの解説

  • 硬い能動態版では「someone」「maintenance team」「they」と主語が何度も変わり、読むのが疲れます
  • スムーズな受動態版では「何が発見されたのか」「何が交換されているのか」という事実が一貫して追われます
  • これにより、読み手は問題の推移を自然に理解できます

3.2 実用文の完成練習:シチュエーション別に文を作成する

練習1:実験レポートの一部

シナリオ:化学実験の結果を報告するレポートを書く

実験テーマ:「食塩水の濃度が沸点に与える影響」

【模範例】受動態を意識的に使った版

目的 This experiment aims to investigate the relationship between salt concentration and boiling point.

(この実験は、食塩濃度と沸点の関係を調査することを目的としています。)

手順 Three salt solutions with different concentrations (5%, 10%, and 15%) were prepared. The boiling point of each solution was measured using a thermometer. The temperature was recorded every 30 seconds until the solution reached 100°C.

(異なる濃度の3つの食塩溶液(5%、10%、15%)が準備されました。各溶液の沸点は温度計を使用して測定されました。温度は溶液が100°Cに達するまで30秒ごとに記録されました。)

結果 The results showed that the boiling point increased with higher salt concentration. The 5% solution boiled at 100.2°C, the 10% solution at 100.5°C, and the 15% solution at 101.2°C. These findings are consistent with known data about colligative properties.

(結果は、沸点が食塩濃度の上昇に伴って増加することを示しました。5%の溶液は100.2°Cで沸騰し、10%は100.5°C、15%は101.2°Cで沸騰しました。これらの知見は、束一的性質に関する既知データと一致しています。)

結論 It was concluded that salt concentration has a measurable effect on the boiling point of water. The data obtained in this experiment were found to be reliable and reproducible.

(食塩濃度が水の沸点に測定可能な影響を与えることが結論づけられました。この実験で得られたデータは信頼性があり、再現可能であることが判明しました。)

学習ポイント

  • 実験レポートでは、「何をしたのか」より「何が起こったのか」に焦点を当てるため、受動態が自然に増えます
  • 「I」や「We」といった著者を排除し、客観性を保ちます
  • 過去形の受動態(was recorded)完了形の受動態(have been measured)も自然に使われます

練習2:職場での出来事説明

シナリオ営業部の同僚に、クライアント対応について報告する

【NG例】能動態で一方的に説明しすぎ

Yesterday I met with the ABC Company representatives. I explained our new product features, and they asked many questions. I answered their questions for 30 minutes. Then we scheduled a follow-up meeting for next week.

(昨日、ABC Company の代表者と会いました。私たちの新しい製品機能を説明して、彼らは多くの質問をしました。私は30分間彼らの質問に答えました。その後、来週のフォローアップミーティングをスケジュールしました。)

【より良い例】重点を調整した能動態

Yesterday, I had a productive meeting with ABC Company representatives. Our new product features generated considerable interest, and they asked detailed questions about functionality and pricing. We’ve scheduled a follow-up presentation for next Thursday at 2 PM.

(昨日、ABC Company の代表者との実りある会議を行いました。私たちの新製品の機能はかなりの関心を呼び、機能と価格についての詳細な質問が出ました。来週木曜日午後2時にフォローアップのプレゼンテーションをスケジュールしました。)

違いの解説

  • NG例は「I」が連続して現れ、自分の行動ばかり強調されています
  • より良い例では「meeting」「features」「interest」といった成果や結果に焦点を当て、自分の役割はそれを支えるものという印象になります

練習3:クレーム対応メール

シナリオ顧客が商品の不具合を訴えてきた。その返信メールを書く

【悪い例】責任を明確にしすぎ

We are very sorry that our product failed to work properly. The quality control team made a mistake during the manufacturing process, which resulted in the defective unit you received.

(私たちの製品が適切に機能しなかったことを申し訳ございません。品質管理チームは製造プロセス中にミスを犯し、その結果、あなたが受け取った不良ユニットになりました。)

【より良い例】状況中心で誠意を示す

Thank you for reporting this issue. We sincerely apologize that a defective unit was delivered to you. The problem has been identified in our quality control process, and steps have been taken to prevent this from happening again.

(この問題をご報告いただきありがとうございます。不良ユニットが配達されてしまったことをお詫びいたします。問題は品質管理プロセスで特定されており、今後このようなことが起こらないよう対策が講じられました。)

または、誠意と透明性の両立

Thank you for reporting this issue. We sincerely apologize that a defective unit was delivered to you. A full replacement unit will be sent to you at no charge by the end of this week. We are also reviewing our quality control procedures to ensure this does not happen again.

(この問題をご報告いただきありがとうございます。不良ユニットが配達されてしまったことをお詫びいたします。交換品は今週末までに送料無料でお届けします。今後このようなことが起こらないよう、品質管理手順も見直しています。)

ポイント

  • 責任を「誰が」を主語にして明確にするより、「何が起こったのか」「どう対応するのか」を受動態で説明することで、顧客志向で誠実な対応に見えます

3.3 誤り訂正:日本語の感覚で受動態にしてしまいがちな誤り

日本人学習者は、日本語の「~される」という表現の影響を受けて、不自然な受動態を作ってしまうことがあります。以下は典型的な誤りと訂正です。

誤り1:行為者が明確で重要な場合を受動態にしてしまう

❌ 誤った例

The sales increased by John’s effort. (売上がジョンの努力によって増加されました。)

✅ 正しい表現

John’s effort increased the sales. または Sales increased thanks to John’s efforts.
(ジョンの努力により売上が増加しました。)

解説:「ジョン」という具体的な行為者が明確で、彼の貢献を認めたい場面では、能動態が自然です。「~される」と受動態にすると、ジョンの貢献が曖昧になってしまいます。

誤り2:「~が~される」という日本語の構造をそのまま英語にしてしまう

❌ 誤った例

The manager was told about this problem by someone.
(マネージャーが誰かにこの問題について言われました。)

✅ より自然な表現

Someone informed the manager about this problem. または
The manager was informed about this problem.
(マネージャーがこの問題について知らされました。)

解説「by someone」という不特定の行為者がある場合、受動態でも「by someone」は通常省略します。場合によっては能動態で「informed」とする方がシンプルです。

誤り3:客観的であるべき文脈で誤った受動態

❌ 誤った例

This software was developed by our development team with two years of research.
(このソフトウェアは、2年間の研究により私たちの開発チームに開発されました。)

✅ 正しい表現(受動態)

This software was developed over two years of research.
(このソフトウェアは2年間の研究を経て開発されました。)

または

✅ 正しい表現(能動態)

Our development team spent two years developing this software.
(私たちの開発チームは2年間をかけてこのソフトウェアを開発しました。)

解説「by our development team」と行為者を明記すると、むしろ素っ気なく聞こえます。受動態で「was developed」とシンプルにするか、能動態で時間をかけた努力を強調するかは、文脈によって判断します。

誤り4:「~される」の多用から受動態の連鎖

❌ 誤った例

The project is started by the team, and the tasks are assigned by the manager, and then the work is done by each member.
(プロジェクトがチームに開始され、タスクがマネージャーに割り当てられ、その後仕事が各メンバーに行われます。)

✅ 正しい表現

The team starts the project, the manager assigns tasks, and each member completes their work.
(チームがプロジェクトを開始し、マネージャーがタスクを割り当て、各メンバーが自分の仕事を完了します。)

解説日本語で「~される」を連鎖させると自然に聞こえることがありますが、英語では受動態が続くと読むのが疲れます。能動態で「who does what」を明確にすることで、テンポのよい文章になります。

誤り5:自動詞を誤って受動態にしてしまう

❌ 誤った例

The meeting was happened in the conference room. (ミーティングが会議室で起こられました。)

✅ 正しい表現

The meeting took place in the conference room. または
The meeting was held in the conference room.
(ミーティングは会議室で開催されました。)

解説「happen」は自動詞で、受動態にはできません。同じ意味で受動態にするには「take place」「be held」などに変更します。自動詞のまま使うか、他動詞の受動態に置き換える事になります。

4. 能動態と受動態を使い分けるための判断基準

最後に、実践で素早く判断するための簡潔なチェックリストをまとめます。

「何を伝えたいのか」で判断する

能動態を選ぶべき場合

  • 「誰が」をはっきりさせたい(責任、貢献の明確化)
  • 行為者が重要で、聞き手の関心もそこにある
  • 日常会話やカジュアルなコミュニケーション
  • 相手に対して指示や提案をする
  • ポジティブな成果や貢献を認める場面
  • □ 「文が長くなることを避け、簡潔にしたい

受動態を選ぶべき場合

  • 「何が」起こったかに焦点を当てたい(結果、影響)
  • 行為者が不明、不重要、または隠したい
  • アカデミック・ライティングや公式文書
  • 客観性や中立性を保ちたい
  • ネガティブなニュースや問題をソフトに表現したい

シーン別の選択肢

シーン特徴基本選択
ビジネス報告結果と経過が大切受動態が中心、行為者は by で明記しないThe project has been completed on schedule.
クレーム対応状況説明と誠意受動態で状況、能動態で対応策The issue has been identified. We will send a replacement immediately.
日常報告親密さと速さ能動態が主I finished the report. My team helped a lot.
研究論文客観性と権威性受動態が主The data were analyzed and the results showed…
指示・依頼関係性を保つ受動態で丁寧、能動態で親密Please complete this form. / This form should be completed by Friday.

このレッスン4では、単なる文法ルールではなく、「どのような意図で、どのような相手に、どのような状況で」英語を話すのかによって、能動態と受動態を使い分ける判断力を養うことができました。

これができるようになると、あなたの英語はより自然で、より相手に伝わる表現になります。ビジネスメール、日常会話、研究レポート、新聞記事など、様々な場面で自信を持って適切な表現を選択できるようになるでしょう。

練習問題

Part 1|能動態 or 受動態?(意図判断)

指示
次の状況説明を読み、最も自然な英文を1つ書きなさい。
(能動態/受動態は自分で判断)

  • 【状況】上司に「納期遅延」の理由を説明する→ 責任の所在を明確にしたい。
    • 日本語:「私たちはベンダーの問題で納期に間に合いませんでした。」
  • 【状況】社内アナウンスでシステム変更を知らせる。→ 誰が決めたかは重要でない。
    • 日本語:「システムは来週変更されます。」
  • 【状況】同僚の仕事をねぎらう。
    • 日本語:「あなたはプレゼン資料をとても丁寧に準備してくれました。」
  • 【状況】ミスを指摘するが、責める印象は避けたい。
    • 日本語:「この計算にミスがありました。」

Part 2|不自然な受動態を見抜け

次の英文は「文法的には可能」ですが、より自然な英文に書き換えなさい。

  • The sales target was achieved by our team this quarter.
  • A serious error was made in the financial report.
  • Someone canceled the meeting without any explanation.

Part 3|受動態が最適なケース

次の日本文を、受動態を使って自然な英文にしなさい。

  • 「重要なファイルが誤ってサーバーから削除されました。」
  • 「部門構造は来月再編成されます。」
  • 「このインターフェースは使いやすさを向上させるために変更されました。」

Part 4|文体別の選択(ビジネス/アカデミック)

状況に合う最も自然な英文を書きなさい。

  • 「サンプルを分析したところ、高い濃度が確認された。」(研究レポート)
  • 「ミーティングの時間が午後3時に変更されました。」(ビジネスメール)

Part 5|get-passive の判断

be-passive ではなく get-passive が自然な文を書きなさい。

  • 【状況】友人に「駅でバッグを盗まれた」と感情を込めて伝える。
  • 【状況】配達が「今まさに進んでいる」ことを伝える。

Part 6|日本人学習者がやりがちな誤り

誤りを修正し、自然な英文にしなさい。

  • ❌ The meeting was happened in the conference room.
  • ❌ The sales were increased by John’s effort.

解答

Part 1|能動態 or 受動態?(意図判断)

  • We missed the deadline because of unexpected issues with the vendor.【能動態】
    解説
    • 責任を明確にする場面
    • 主体「We」を出すことで説明責任を果たす
  • The system will be updated next week.【受動態】
    解説
    • 行為者不要
    • 「何がどう変わるか」が焦点
  • You prepared the presentation very thoroughly.【能動態】
    解説
    • 相手の貢献を直接認める
    • 受動態だと気持ちが伝わらない
  • A mistake was made in this calculation.【受動態】
    解説
    • 相手を責めず、協調的
    • 問題解決志向の表現

Part 2|不自然な受動態を見抜け

  • Our team achieved the sales target this quarter.
    解説
    • 責任を明確にする場面
    • 主体「We」を出すことで説明責任を果たす
  • John made a serious error in the financial report.
    解説
    • 責任の所在を明確にする場面
  • The meeting was canceled without any explanation.
    解説
    • 行為者不明
    • ニュース・通知文体では受動態が自然

Part 3|受動態が最適なケース

  • The important files were accidentally deleted from the server.
    • 結果重視・行為者不要
  • Our department structure is being reorganized next month.
    • 変化に焦点
    • 進行中の計画 → is being reorganized
  • The user interface has been modified to improve usability.
    結果+現在への影響

Part 4|文体別の選択(ビジネス/アカデミック)

  • The sample was analyzed, and a high concentration was found.
    解説
    • I / We を排除
    • 客観性を最優先
  • The meeting time has been changed to 3 PM.
    解説
    • 一方的にならない
    • ビジネス通知の定型

Part 5|get-passive の判断

  • My backpack got stolen at the train station!
    解説
    • 予期しない出来事
    • 感情がこもる get-passive
  • The pizza is getting delivered at 6 PM.
    解説
    • 動き・進行中のニュアンス

Part 6|日本人学習者がやりがちな誤り

  • The meeting took place in the conference room. または
    The meeting was held in the conference room.
    解説
    • happen は自動詞 → 受動態不可
  • John’s effort increased the sales.
    解説
    • 貢献を評価する文
    • 能動態が最適

まとめ

「何が」と「誰が」を使い分ける最終判断基準

この一連のレッスンを通じて、受動態の基本から応用、そしてその使い分けの原則を徹底的に学習しました。受動態をマスターするということは、「何を、どのように伝えたいか」というコミュニケーションの意図に応じて、能動態と受動態を自在に切り替えられるようになることです。

能動態は「責任」と「主体性」を明確にし、受動態は「結果」と「客観性」を強調します。この原則が、あらゆる文脈での選択の基本です。

意図・文脈選択すべき形なぜ選ぶのか
責任を明確にしたい能動態行為者(誰が)を文頭に置き、主体性と行動を強調する。
客観性を保ちたい受動態著者の主観(I/We)を排除し、事実(何が)に焦点を当てる。
ネガティブな内容を伝える受動態行為者を曖昧にし、「A mistake was made…」のように表現をマイルドにする。
日常会話・指示能動態簡潔で直接的であり、親密な関係に適している。

🎯 英語表現力を「戦略的」に強化するための学習アドバイス

学んだ受動態の知識を、実際の「伝わる表現力」へと結びつけるために、以下の実践的なアドバイスを実行してください。

  1. 「焦点」の意識化: 新聞記事やビジネスメールを読む際、文の主語が何になっているかを常にチェックしてください。なぜ記者は「Company was acquired」と書いたのか? なぜ上司は「We decided」と能動態を使ったのか? その意図を分析するだけで、ネイティブの思考回路が身につきます。
  2. 「マイルド化」練習: 誰かのミスやネガティブな事実(例:You forgot the report.)を、相手を責めずに伝える受動態(例:The report was missed.)に変換する練習をしてください。これは、特にビジネスや国際的な協力の場で、人間関係を円滑にする高度なコミュニケーションスキルです。
  3. 文体の使い分けドリル: 課題を一つ設定し、「①研究レポート風(受動態中心)」と「②社内メール風(能動態と受動態の混在)」という、異なる文体で書き分ける練習をしましょう。このドリルが、文脈に応じて表現を使い分ける柔軟性を養います。

受動態は、単なる文法規則ではなく、情報をコントロールし、相手との関係性を調整する強力なコミュニケーションツールです。この総括を通じて、あなたは受動態を完全にマスターし、より自信に満ちた効果的な英語表現ができるようになるでしょう。

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