🧐 はじめに:「知識」から「実践的スキル」へ
現在完了形の構造、4つの用法、現在完了進行形との違いなど、ここまでの4回で理論的な知識は完全に習得できました。
しかし、ここで多くのつまずきがちな学習者が直面する最大の壁があります。それは、「知識」と「実際に話す・書く」という実践的なスキルの間のギャップです。特に、現在完了形と過去形のどちらを使うべきか、瞬時に判断できないという悩みは非常に多いのです。
- 🤔 I saw the movie と I have seen the movie のどちらが自然なのか?
- 🚫 last week や yesterday と現在完了形を一緒に使ってしまいがちではないか?
第5回目となるこの記事では、そのギャップを埋め、現在完了形を「知識」から「あなたの武器」へと転換させます。
✅ 実践:日常会話からビジネスまで、4つの用法を状況別で使いこなす会話練習。
✅ 克服:日本人学習者が最も混同しやすい過去形との決定的な使い分けルールを総ざらい。
✅ 技術:when や last week などのタイムワードを使った際の時制の瞬時判断スキルを習得。
この記事を読み終えれば、あなたは現在完了形の「本当の意図」を理解し、もう二度と時制の選択で迷うことはありません。自信を持って英会話や英文メールで、この時制を自在に使いこなせるようになりましょう。
状況別会話練習:4つの用法を実践する

現在完了形の4つの用法(継続・経験・完了・結果)は、実際の会話の中でどのように使われるのでしょうか?ここでは、カジュアルな日常会話とビジネスシーンの両方で、それぞれの用法の「生きた表現」を見ていきます。
用法1:完了用法「〜し終えた」(Just / Already / Yet)

完了用法は、「今この瞬間に完了した」という、最も「今性」を強調する用法です。
会話例1:カジュアルな場面(夕食の準備)
状況:夕食前に宿題を終わらせる約束をしていた兄弟の会話
A: Dinner is almost ready. Have you finished your homework yet?
(夕食もうすぐできるよ。もう宿題終わった?)
B: Yes, I‘ve just finished it.
(うん、ちょうど終わったところ。)
A: That’s great! What did you have to do?
(それはよかった!何をしないといけなかったの?)
B: I had to write an essay and solve some math problems.
(英作文書いて、数学の問題を解かなきゃいけなかったんだ。)
A: Sounds tough. Well, you can relax now.
(大変そうだね。もうゆっくりしていいよ。)
B: Thanks! I’m starving.
(ありがとう!お腹ペコペコだよ。)
会話分析:
- A の “Have you finished… yet?”
- yet が含まれた疑問形
- 「近い将来に完了することを期待している」というニュアンス
- 親が子どもに対して「宿題を終えたか確認する」という自然な質問
- B の “I’ve just finished it.”
- just で「ちょうど今」を強調
- 「食事の直前に宿題を完了した」という完了用法の典型例
- 短答法での返答も自然(Yes, I have.)
使用される文脈: このような日常会話では、完了用法が最も自然に出現します。親が子どもの完了状況を確認し、それに基づいて次のアクション(食事をするなど)を決定する場面です。
会話例2:ビジネスシーン(会議前の最終確認)
状況:会議前にレポート提出を頼んでいた上司と部下の会話
A: The meeting starts in 10 minutes. Have you sent the report to the
client yet?
(会議まであと10分だ。もうクライアントにレポート送った?)
B: Yes, I‘ve already sent it this morning.
(はい、今朝すでに送りました。)
A: Excellent. Did you get any feedback?
(素晴らしい。何か返信はあった?)
B: Not yet, but I’ll check my email again before the meeting.
(まだですが、会議前にもう一度メールを確認します。)
A: Good. Please let me know as soon as you hear from them.
(うん。連絡が来たらすぐ教えてね。)
B: Of course.
(もちろんです。)
会話分析:
- A の “Have you sent… yet?”
- ビジネス場面での完了確認
- 時間的切迫感(会議まで10分)を背景に、完了の有無が重要
- 部下のタスク完了状況をリアルタイムで把握する必要がある
- B の “I’ve already sent it this morning.”
- already で「予想より早く、既に完了している」を強調
- 上司への報告として、完了の事実を明確に伝えている
- ビジネス英語での信頼性を示す表現
使用される文脈: ビジネスでは、タスク完了の有無が他のタスクやスケジュールに直結するため、完了用法は業務効率に関わる重要な表現です。上司が部下に「完了したか?」と頻繁に質問するのは、完了用法がビジネス英語の中核をなす表現だからです。
完了用法の会話ポイント
- just / already / yet という副詞が会話のシグナル
-
これらが出現すると、ほぼ100%完了用法を使うべき状況
- 「今この瞬間の状態」が重要
-
完了したかどうかが、次のアクションに影響する
- 疑問文では yet が頻出
-
Have you finished yet?
Has she arrived yet? - 否定文でも yet は活躍
-
I haven’t finished yet.
They haven’t arrived yet.
用法2:経験用法「〜したことがある」(Ever / Never / Once / Twice)

経験用法は、人生での「経験の有無」に焦点を当てた用法です。新しい環境での自己紹介や、スキルの確認時に頻出します。
会話例1:カジュアルな場面(新しいレストランについて)
状況:友人同士でランチ中に新しいレストランの話題
A: Have you ever tried Indian curry?
(インドカレー食べたことある?)
B: No, I‘ve never tried it. Is it spicy?
(ううん、一度もないよ。辛いの?)
A: It can be, but there are mild options too. I went to a new Indian
restaurant last weekend.
(辛いのもあるけど、マイルドなのもあるよ。先週末、新しいインド料理屋に行ったんだ。)
B: Really? Was it good?
(そうなの?美味しかった?)
A: Yes, it was delicious! We should go together next time.
(うん、とても美味しかったよ!今度一緒に行こうよ。)
B: Sounds fun. Let’s do it!
(面白そう。ぜひ行こう!)
会話分析:
- A の “Have you ever tried Indian curry?”
- ever を使った疑問形
- 「今までの人生で一度は〜したことがあるか?」という経験の有無を確認
- 食事の嗜好を知り、一緒に食事をするきっかけを作る社交的な質問
- B の “No, I’ve never tried it.”
- never を使った経験用法の否定形
- 「今までに一度も経験したことがない」という明確な意思表示
- 新しい食材や料理に対する「未知の経験」を表現
- A の “I went to a new Indian restaurant last week.”
- 過去形に切り替わっている
- 「昨週末という特定の時点に」という過去の一点に焦点
- 自分の具体的な経験(when)を述べるため、過去形を使用
使用される文脈: 日常会話では、相手の経験について知ることが、会話を深める重要なステップです。食事、旅行、映画、スポーツなど、様々なトピックで「〜したことある?」という経験用法の質問が自然に出現します。
会話例2:ビジネスシーン(新しいソフトウェアのスキル確認)
状況:新しいプロジェクトで使うソフトウェアについての会話
A: Have you ever worked with this software before?
(このソフトを使ったことはありますか?)
B: Yes, I‘ve used it a couple of times in my previous job.
(はい、前の職場で何度か使ったことがあります。)
A: That’s good to know. Do you think it’s user-friendly?
(それは助かります。使いやすいと思いますか?)
B: It takes some time to get used to, but once you learn the basics,
it’s quite efficient.
(慣れるまで少し時間がかかりますが、基本を覚えればかなり効率的ですよ。)
A: Great. Could you help the team get started with it?
(いいですね。チームにも使い方を教えてもらえますか?)
B: Absolutely, I’ll prepare a short tutorial for everyone.
(もちろんです。みんなのために簡単なチュートリアルを用意します。)
会話分析:
- A の “Have you ever worked with this software before?”
- ビジネスシーンでの経験確認
- 新しいチーム構成で、各メンバーのスキルを把握する必須会話
- その人が「使用経験を持つか」という情報は、業務配分に直結
- B の “I’ve used it a couple of times in my previous job.”
- 経験用法で自分のスキルセットを伝える
- “a couple of times”(何度か)で、「完全な初心者ではない」というアピール
- 信頼性を示す表現
- A の “Could you help the team get started with it?”
- 経験を確認した上での、次のアクション提案
- その人の経験を活用する役割分配へ進む
使用される文脈: ビジネスでは、チームメンバーの「過去の経験」を把握することが、効率的なタスク配分につながります。新しいプロジェクト開始時、新チーム構成時など、経験用法は人材活用の基礎情報になります。
経験用法の会話ポイント
- ever / never / once / twice が会話のシグナル
-
これらが出現すると、経験用法を使うべき
- 社交的な場面での「共通の経験」探し
-
相手を知り、共通の話題を見つけるための質問
- ビジネスでの「スキル確認」
-
チームメンバーの経験を把握する重要な情報源
- 人生単位での経験を表現
-
Have you ever traveled abroad?
I’ve visited 15 countries.
She’s never tried sushi before.
用法3:結果用法「〜してしまった」(現在の状況に影響がある)

結果用法は、過去の出来事が「現在の困った状況」「現在の重要な状態」を作り出している場面で使用されます。
会話例1:カジュアルな場面(物を失くした)
状況:家で何かを探している家族の会話
A: Why are you looking so worried?
(なんでそんなに心配そうなの?)
B: I can’t find my wallet. I think I‘ve lost it!
(財布が見つからないんだ。なくしちゃったみたい!)
A: Oh no! When did you last see it?
(えっ、大変!最後に見たのはいつ?)
B: I had it this morning, but now it‘s gone.
(今朝は持ってたんだけど、今はもうないんだ。)
A: Let’s check the living room and your bag together.
(リビングとカバン、一緒に探そう。)
B: Thanks, I hope we find it soon.
(ありがとう、早く見つかるといいな。)
会話分析:
- B の “I can’t find my wallet. I think I’ve lost it!”
- 結果用法で「紛失という過去の出来事と、現在財布がない状態」の関連性を表現
- 「I lost it.」(過去形)ではなく、現在の困った状況を強調するため現在完了形を使用
- “can’t find“(見つからない状態)という現在の状況が、結果用法と完璧に一致
- A の “When did you last see it?”
- 結果用法の会話に対して、過去形で「具体的な時点」を尋ねる
- 結果用法と過去形が同じ会話内で自然に共存している
- B の “I had it this morning, but now it’s gone.”
- 時系列を「朝は持っていた」(過去)→「今はない」(現在)で説明
- 結果用法で「過去のある時点と異なる現在の状態」を対比させている
使用される文脈: 日常生活での「問題発生」を報告する場面で、結果用法は自然に出現します。紛失、破損、けが、急な変化など、「現在困っている状況」を表現するときに非常に実用的です。
会話例2:ビジネスシーン(システムトラブル)
状況:システムトラブルが発生したときの会話
A: Why can’t we access the server?
(どうしてサーバーにアクセスできないんですか?)
B: I‘ve checked the settings, and it seems the IT team has changed the password.
(設定を確認したところ、IT チームがパスワードを変更したようです。)
A: Did they inform us about it?
(事前に連絡はありましたか?)
B: I haven’t received any notice yet. Should I contact them?
(まだ何も通知は受け取っていません。連絡しましょうか?)
A: Yes, please do it right away. We need to solve this quickly.
(はい、すぐにお願いします。早く解決しないといけませんから。)
会話分析:
- A の “Why can’t we access the server?”
- 現在の困った状況(アクセスできない)を述べている
- 結果用法が出現する背景を作る質問
- B の “I’ve checked the settings, and it seems the IT team has changed the password.”
- 現在完了形で「チェックした結果、原因が判明した」を表現
- 過去の行動(チェック)が、現在の状況理解につながっている
- B の “I haven’t received any notice yet.”
- 完了用法に見えるが、実は「通知を受け取らないという状態が継続している」という結果用法的なニュアンス
- “yet” が付くことで「いまだに受け取っていない」という現在の問題を強調
使用される文脈: ビジネスではトラブル報告が頻繁に発生します。システム障害、重要な連絡の遅れ、データ損失など、「過去の出来事が現在の問題を引き起こしている」という関連性を示すときに結果用法が活躍します。
結果用法の会話ポイント
- 「現在の問題や状況」が明示されている
-
結果用法は単に「過去のこと」ではなく、「現在の状況」に焦点
- 困った場面や重要な報告で頻出
-
I’ve lost my keys.(見つかっていない)
She’s broken her leg.(治っていない)
We’ve received an important email.(その情報を持っている) - ビジネスでの「現状報告」
-
過去の出来事が現在の業務に影響している場合に使用
用法4:継続用法「ずっと〜している」(For / Since)

継続用法は、「過去のある時点から現在まで」同じ状態が続いていることを表現する最も「時間的スパン」を強調する用法です。
会話例1:カジュアルな場面(久しぶりの友人との再会)
状況:久しぶりに会った友人同士の会話
A: It‘s been a long time! How have you been?
(久しぶりだね!元気だった?)
B: I‘ve been good. I‘ve lived in Tokyo for the past five years.
(元気だよ。ここ5年間ずっと東京に住んでるんだ。)
A: Wow, that’s a long time. Do you like it there?
(へぇ、長いね。東京は気に入ってる?)
B: Yes, I really enjoy the city life, though I do miss my hometown
sometimes.
(うん、都会の生活は楽しいよ。でも時々地元が恋しくなるけどね。)
A: We should catch up more often!
(もっと頻繁に会おうよ!)
B: Definitely!
(そうだね!)
会話分析:
- A の “How have you been?”
- 継続用法での問い
- 「最近どんな状態ですか?」という「期間全体での様子」を尋ねている
- for や since が明示されていなくても、「会ってからこんまでの期間」を暗に含んでいる
- B の “I’ve lived in Tokyo for the past five years.”
- 典型的な継続用法
- for five years で「5年間という期間」を明確に示す
- 「過去5年間ずっと東京に住んでいる」という「線」的な時間経過を表現
- B の “I really enjoy the city life”
- 現在進行形でなく、現在形を使用
- 「今、東京の生活を楽しんでいる」という「現在の状態」を述べている
- 継続用法(過去5年間)と現在の状態が自然に一体化
使用される文脈: 社会人同士の再会や、新しい環境での自己紹介時に、継続用法は「個人の歴史」を語る重要な表現です。「どのくらいそこにいるのか」「どのくらいそれをしているのか」という質問は、相手を知る基本情報になります。
会話例2:ビジネスシーン(プロジェクト進捗確認ミーティング)
状況:プロジェクトの進捗確認ミーティング
A: How is the development project going?
(開発プロジェクトの進捗はどうですか?)
B: We‘ve been working on it for about three months now.
(もう3ヶ月ほどずっと取り組んでいます。)
A: That’s quite a while. Have you faced any major challenges?
(それは長いですね。大きな課題はありましたか?)
B: There have been a few, but the team has handled them well so far.
(いくつかありましたが、チームがうまく対応してきました。)
A: Good to hear. Let’s keep up the good work.
(それは良かった。この調子で頑張りましょう。)
B: Absolutely.
(もちろんです。)
会話分析:
- B の “We’ve been working on it for about three months now.”
- 現在完了進行形(have been working)で「3ヶ月間ずっと取り組み続けている」を表現
- “now” が付くことで「現在も進行中」を明確に示す
- ビジネスの文脈では「継続的な努力」を強調する重要な表現
- B の “There have been a few, but the team has handled them well so far.”
- 現在完了形で「これまでに課題が発生した」を表現
- “so far“(これまでのところ)という時間的スパンで「過去から現在まで」のまとめを示す
使用される文脈: ビジネス会議では、プロジェクトの「進捗状況」を報告するとき、「どのくらい取り組んでいるか」という継続性の表現が不可欠です。継続用法は「チームの継続的な努力」「プロジェクトの進行状況」を伝える、ビジネス英語の中核をなす表現です。
継続用法の会話ポイント
- for / since という時間表現が明示される
-
- for:期間を表す(5 years, three months)
- since:起点を表す(2020, last year)
- 「ずっと続いている」というニュアンスが重要
-
I’ve been studying English for 2 years.
He’s lived here since 2015. - ビジネスでの「継続的な取り組み」を表現
-
- プロジェクトの進捗報告
- 経歴説明
- チームの継続的な努力の報告
- 現在進行形との使い分け
-
- 現在完了形:「これまでの期間」に焦点(I have studied for 2 years.)
- 現在進行形:「この瞬間」に焦点(I am studying now.)
過去形と現在完了形の完全な使い分け

ここが、このシリーズ全体で最も重要なセクションです。日本人学習者が最も混同しやすい「過去形 vs 現在完了形」の本質的な違いを、具体例と共に完全に理解します。
基本原則:「点」と「線」
過去形:「過去のある一点」に焦点
────────●────── 現在
↑
過去のある時点
(例:yesterday, last week)
現在完了形:「過去から現在までのつながり」に焦点
────────━━━━━━━ 現在
↑ ↑
過去 現在
(時間的なつながり)
具体例:映画について話す場面
例1:映画を見た経験を話す
【過去形で述べた場合】
I saw that movie last week.
(映画は「昨週という過去の特定時点」に見た)
→ 焦点:「いつ見たか」という過去の一点
【現在完了形で述べた場合】
I have seen that movie.
(「見たことがある」という現在までの経験を持つ)
→ 焦点:「人生で見た経験」という現在との関連
【違いの本質】
過去形は「歴史的事実」を述べ、現在完了形は「現在の経験」を述べている
実践的な会話例:映画について
状況:友人同士が映画について話している
A: Did you see the new superhero movie last weekend?
(先週末、新しいスーパーヒーロー映画見た?)
→ 過去形:「last weekend」という特定の時点を指定
B: Yes, I saw it on Saturday. It was awesome!
(うん、土曜日に見たよ。すごく面白かった!)
→ 過去形:「Saturday」という具体的な日を示している
A: I haven’t seen it yet. Is it worth watching?
(まだ見てないんだ。見る価値ある?)
→ 現在完了形:「今までに見たことがない」という現在の経験状態
B: Definitely! I‘ve seen it twice already.
(絶対あるよ!もう2回も見ちゃった。)
→ 現在完了形:「今までに2回見た経験を持つ」という累積された経験
A: Wow, you must really like it!
(すごい、本当に気に入ったんだね!)
会話分析のポイント
- “Did you see… last weekend?”(過去形) → 「過去の特定時点(last weekend)」を指定している → 「いつ見たのか?」という時間情報が重要
- “I haven’t seen it yet.”(現在完了形) → 「今までの人生で見たことがない」という現在の経験状態 → 時間情報は指定されていない
- “I’ve seen it twice already.”(現在完了形) → 「これまでに2回見た経験がある」という経験の蓄積 → 「いつ見たのか」は不明確だが、「複数回の経験」が重要
ビジネスシーンでの過去形と現在完了形の使い分け

ビジネス会話例
状況:クライアントとの打ち合わせ後、同僚と進捗を確認する会話
A: Did you meet with the client yesterday?
(昨日クライアントと会いましたか?)
→ 過去形:「yesterday」という具体的な過去の時点
B: Yes, I met them in the afternoon. We discussed the new project details.
(はい、午後に会って新しいプロジェクトの詳細を話し合いました。)
→ 過去形:「yesterday」「afternoon」という具体的な時点と時間帯
A: Great. Have you sent them the updated proposal yet?
(それは良かった。もう更新した提案書は送りましたか?)
→ 現在完了形:「今までに送ったか」という現在までの完了状況
B: Yes, I‘ve just sent it by email.
(はい、ちょうどメールで送りました。)
→ 現在完了形:「just」で「今この瞬間に完了した」を強調
A: Perfect. Let me know if you get any feedback.
(完璧です。何かフィードバックがあれば教えてください。)
B: Will do.
(わかりました。)
ビジネス会話分析のポイント
- “Did you meet… yesterday?”(過去形) → 昨日という過去の特定時点での出来事 → その時何が起きたのかという「事実の報告」
- “Have you sent… yet?”(現在完了形) → 現在までに完了したか否かの確認 → 次のアクション(会議の準備)に影響する重要な情報
- “I’ve just sent it.”(現在完了形) → 完了した瞬間の報告 → ビジネスでは「タスク完了」という重要な情報を正確に伝える
日本人学習者が陥りやすい典型的な誤り5つ

ここまで学んだ知識を活かすために、実際に多くの学習者が繰り返す誤りを理解することが重要です。
誤り1:過去の特定時点と現在完了形を混同する
❌ 誤り:
When have you arrived in Japan?
✓ 正解:
When did you arrive in Japan?
理由: 「When」で「いつ」という過去の特定時点を尋ねている場合は、現在完了形ではなく過去形を使う必要があります。
現在完了形は「過去から現在までのつながり」を表すため、「特定の時点」を聞く場合には不適切です。
その他の類似例:
❌ When have you finished the project?
✓ When did you finish the project?
❌ How long have you arrived?
✓ When did you arrive?
誤り2:過去の出来事が現在に影響している場合でも過去形を使ってしまう
❌ 誤り:
I lost my keys and I can’t get in.
(鍵をなくして、今家に入れない状態)
✓ 正解:
I have lost my keys and I can’t get in.
理由: 過去の出来事「鍵を失くす」が、現在の困った状態「家に入れない」を引き起こしています。
このように「過去の出来事の結果が現在に影響している」場合は、現在完了形を使うべきです。
日本語では「なくした」と過去形で言うため、英語でも過去形にしてしまいがちですが、英語では「現在どうなっているか」が重要なのです。
その他の類似例:
❌ I broke my leg and I can’t walk.
✓ I have broken my leg and I can’t walk.
❌ She quit her job and she is looking for a new one.
✓ She has quit her job and she is looking for a new one.
誤り3:「経験」を過去形で表現してしまう
❌ 誤り:
I went to Paris.
(経験として「行ったことがある」と言いたい場合)
✓ 正解:
I have been to Paris.
理由: 「行ったことがある」という「人生での経験」を表すときは、現在完了形を使う必要があります。
過去形「I went to Paris」は「パリに行った」という過去の事実のみを伝えますが、「行ったことがあるか」という経験の有無を聞く場合は、現在完了形が適切です。
判断基準:
- 「いつ行ったのか」という具体的な時点を述べるなら → 過去形
- 「今までに行ったことがあるか」という経験を述べるなら → 現在完了形
その他の類似例:
❌ Have you ever been to Tokyo? → Yes, I went there last year.
✓ Have you ever been to Tokyo? → Yes, I have been there.
(短答法では現在完了形を使う)
✓ When did you go to Tokyo? → I went there last year.
(時点を聞く場合は過去形で答える)
誤り4:継続を過去形で表現してしまう
❌ 誤り:
I lived in Tokyo for five years.
(現在も東京に住んでいる場合)
✓ 正解:
I have lived in Tokyo for five years.
理由: 「5年間ずっと東京に住んでいる」という「過去から現在まで続く状態」は、現在完了形で表現します。
過去形を使うと「5年間住んでいた(=過去の話で、今は住んでいない)」という異なる意味になってしまいます。
時間軸での違い:
I lived in Tokyo for five years.
→ 過去のある期間、東京に住んでいた(今は住んでいない)
I have lived in Tokyo for five years.
→ 5年前に東京に住み始めて、今も住んでいる
その他の類似例:
❌ I worked here since 2015.
✓ I have worked here since 2015.
(2015年から現在も働き続けている)
❌ She studied English for 10 years.
✓ She has studied English for 10 years.
(10年間ずっと勉強し続けている)
誤り5:タイムワードの誤用
❌ 誤り:
I have seen that movie last week.
(「last week」と現在完了形を一緒に使う)
✓ 正解:
I saw that movie last week.
理由: 「last week」「yesterday」「three days ago」「in 2020」など、具体的な過去の時点を示す語は、過去形とセットで使う必要があります。
現在完了形は「過去から現在までのつながり」を表すため、「過去の特定時点」を指定する語とは相容れないのです。
現在完了形と相性の良い副詞:
- ever(今までに)
- never(今までに〜ない)
- already(すでに)
- yet(まだ)
- just(ちょうど)
- recently(最近)
判断表:
| タイムワード | 時制 | 例 |
|---|---|---|
| last week | 過去形 | I saw it last week. |
| yesterday | 過去形 | I finished it yesterday. |
| three days ago | 過去形 | I arrived three days ago. |
| in 2020 | 過去形 | I moved in 2020. |
| ever | 現在完了形 | Have you ever been there? |
| already | 現在完了形 | I‘ve already finished. |
| yet | 現在完了形 | Haven’t you done it yet? |
| recently | 現在完了形 | I‘ve recently moved. |
誤りを避けるための実践的チェックリスト

英文を作る前に、以下のチェックリストを習慣づけることで、誤りを劇的に減らせます。
「最後に見たのはいつか」という具体的な時点が述べられているか?
YES → 過去形を使う
NO → ステップ2へ
「過去の出来事の結果が現在に影響しているか」または「過去から現在まで続いているか」?
YES → 現在完了形を使う
NO → ステップ3へ
「人生で〜したことがあるか」という経験を述べているか?
YES → 現在完了形を使う
NO → ステップ4へ
それでも不確定な場合は、以下を考える:
– 「この情報は、現在に関連があるか」→ YES なら現在完了形
– 「この情報は、過去の一点に限定されるか」→ YES なら過去形
実践練習:過去形と現在完了形を使い分ける

🧩 現在完了形:4用法を会話文で判定する応用問題(10問)
判定する用法
A. 継続(Continuation)
B. 経験(Experience)
C. 完了(Completion)
D. 結果(Result)
Part 1|会話の流れから用法を選ぼう(文脈理解問題)
1.
A: How long have you lived in Sapporo?
B: I have lived here since 2012.
→ 用法は?
2.
A: Have you ever tried Mexican food?
B: Yes, I’ve tried it once, but it was too spicy for me.
→ 用法は?
3.
A: Where is Tom?
B: He has just left the office. You might catch him outside.
→ 用法は?
4.
A: Why is Sarah so upset?
B: She has lost her passport. She can’t find it anywhere.
→ 用法は?
5.
A: Are you hungry?
B: No, thanks. I’ve already eaten lunch.
→ 用法は?
6.
A: You look tired.
B: I know… I’ve worked all night.
→ 用法は?
7.
A: Do you know where Emily is?
B: She has gone to Okinawa. She’ll be back next week.
→ 用法は?
8.
A: How many times have you visited Kyoto?
B: Maybe three or four times. I love that city.
→ 用法は?
9.
A: Can you help me with this task?
B: Sure. I’ve just finished my own work.
→ 用法は?
10.
A: Why are you wearing a cast on your arm?
B: I’ve broken my arm. I can’t move it yet.
→ 用法は?
✅ 【解答と詳しい解説】
| No. | 解答 | 用法 | 解説 |
|---|---|---|---|
| 1 | A | 継続 | since 2012 → 過去から今までの継続。 |
| 2 | B | 経験 | ever / tried once → 過去の経験を尋ねている。 |
| 3 | C | 完了 | just → 「たった今〜したところ」。行為の完了が今の瞬間。 |
| 4 | D | 結果 | 過去に「失くした」→ 今も見つからず upset の状態が継続。 |
| 5 | C | 完了 | already → 「もう〜した」。動作を完了した事実に焦点。 |
| 6 | A | 継続 | all night → “ずっと〜している” の継続動作。 |
| 7 | D | 結果 | gone → 「行ってしまって今ここにいない」。今の状態がポイント。 |
| 8 | B | 経験 | three or four times → 経験回数を話している。 |
| 9 | C | 完了 | just → 完了のタイミングを示す副詞。 |
| 10 | D | 結果 | broken → 「腕を折った」結果、“今も動かせない”。 |
🎯 学習ポイント(会話から判断するコツ)
- 継続:How long?, since〜, for〜, all day
- 経験:ever?, never, once, twice, before, many times
- 完了:just, already, yet(疑問文・否定文)
- 結果:状態が今に残っている(lost, broken, gone, injured などが典型)
会話文では、明示的なキーワードがなくても状況描写がヒントになります。
🧩 現在完了形 4用法ミックス:穴埋め式会話練習(10問)
( )内の動詞を 現在完了形 に直し、必要な語(副詞など)も補いましょう。文脈から「継続・経験・完了・結果」のどれかを判断してください。
1. 継続 or 経験?(文脈で判断)
A: How long ______ you ______ (know) Ken?
B: I ______ (know) him since high school.
2. 経験
A: ______ you ever ______ (be) to Spain?
B: No, I ______ (never / be) there.
3. 完了
A: Can you help me with the boxes?
B: Sure. I ______ just ______ (finish) my work.
4. 結果
A: Why can’t you find your wallet?
B: I ______ (lose) it somewhere in the station…
5. 継続
A: You look tired.
B: I ______ (study) for the exam all night.
6. 経験
A: How many times ______ she ______ (visit) Kyoto?
B: She ______ (visit) it three times.
7. 完了
A: Is the meeting over?
B: Yes, we ______ already ______ (end) it.
8. 結果
A: Where is Mike?
B: He ______ (go) home. He isn’t here now.
9. 継続
A: Do you still live in Fukuoka?
B: Yes, I ______ (live) there for ten years.
10. 完了 or 結果?(文脈で判断)
A: Why is Anna crying?
B: She ______ (break) her favorite cup.
✅ 【解答と解説】
1. 継続
A: How long have you known Ken?
B: I have known him since high school.
→ since high school → 過去から今まで続く継続。
2. 経験
A: Have you ever been to Spain?
B: No, I have never been there.
→ ever / never → 経験の用法。
3. 完了
B: I have just finished my work.
→ just → 「ちょうど終えたところ」=完了。
4. 結果
B: I have lost it…
→ 「失くした結果、今も見つからない」=結果。
5. 継続
B: I have studied for the exam all night.
→ all night → 動作が「今まで継続」。
6. 経験
A: How many times has she visited Kyoto?
B: She has visited it three times.
→ 回数の話=経験。
7. 完了
B: We have already ended it.
→ already → 完了した事実に焦点=完了。
8. 結果
B: He has gone home.
→ gone=「行ってしまって今ここにいない」=結果。
9. 継続
B: I have lived there for ten years.
→ for ten years → 今まで続く継続。
10. 結果
B: She has broken her favorite cup.
→ 「壊した → 今それがない・泣いている」
→ 過去の行為の 結果が今に残っている。
最終まとめ:現在完了形マスターの最終チェックと卒業

5回にわたってお届けした「現在完了形の完全ガイド」シリーズが、いよいよ最終回を迎えました。
全5回の学習進捗
| 回次 | テーマ | 習得内容 |
|---|---|---|
| 第1回 | 基本構造 | have/has + 過去分詞 / 規則・不規則活用 / 過去形との違い |
| 第2回 | 文法形態 | 肯定文・疑問文・否定文 / Short Answer / 実践的使用法 |
| 第3回 | 4つの用法 | 継続 / 経験 / 完了 / 結果 / 用法判定フローチャート |
| 第4回 | 進行形併用 | 現在完了進行形 / 現在完了形との使い分け / 日本人の誤り |
| 第5回 | 実践と応用 | 状況別会話 / 過去形との完全な使い分け / 典型的誤りの修正 |
この全5回シリーズの最終回では、現在完了形を実際に使用するための実践的なスキルに焦点を当て、特に中級者の永遠の課題である過去形との完全な使い分けを習得しました。
最も重要な学習成果は、過去形が「過去のある一点」に焦点を当てるのに対し、現在完了形は「過去から現在までの時間的なつながり」に焦点を当てている、という時間軸の本質的な違いを理解したことです。この理解があれば、タイムワード(yesterday vs recently)や文脈(現在の影響)から、適切な時制を瞬時に選べるようになります。
🚀 中級者卒業へ導く実践的学習アドバイス
学んだ知識を「瞬時の判断スキル」に変えるために、以下の3つの実践的な習慣を今日から始めてください。
- 「時制のバッジ」を意識したリスニング: 英語のニュースやポッドキャストを聞く際、すべての現在完了形に「時制のバッジ(経験、完了、結果、継続)」を貼る意識で聞きましょう。ネイティブがなぜその用法を選んだのかを「意図」として理解することで、あなたの脳内に時制選択のデータベースが構築されます。
- 例: I’ve just finished… と聞いたら → 「完了用法(今終わったという報告の意図)」と瞬時に判断する。
- 時制の「一文対決」を日課にする: 「映画を見た」という日本語の文を、「いつ見たか?」「見たことがあるか?」の2つの文脈で、英語で作成する練習を毎日行いましょう。
- 文脈1(過去の一点): → I saw the movie last night.
- 文脈2(現在の経験): → I have seen the movie twice. このように過去形と現在完了形を意図的に対比させることで、無意識に使い分けられるようになります。
- 現在の「困っていること」を現在完了形で表現: 結果用法(過去の出来事の結果が現在に影響している)は、最も実践的で間違えやすい用法です。日常生活で起こった小さなトラブル(鍵をなくした、コーヒーをこぼした、メールを送った)を、必ず結果用法を使って表現する訓練をしましょう。
- 例: 「傘を忘れたから濡れている」 → I have forgotten my umbrella, so I’m wet.
🎓 まとめ:完全完結
現在完了形は、単なる「文法」ではなく、英語の「時間感覚」を表現するための核心的なツールです。この全5回シリーズの学習を通じて、あなたは現在完了形マスターとして、より豊かで正確な表現力を手に入れました。
中級者の壁を乗り越え、上級者へと歩みを進めるあなたの学習を、心より応援しています!
著者からの最終メッセージ
35年以上の英語教育経験を通じて、私は何度も同じ光景を見てきました。
最初は「現在完了形?難しい…」と躊躇していた学習者が、このシリーズを通じて、段階的に理解を深めていき、やがて「なるほど、これはこういう時に使うんだ」という「ひらめき」に到達する瞬間です。
その瞬間、学習者の目の輝きが変わります。それまで「文法ルール」として存在していた現在完了形が、「自分の思いを表現するための、生きた言語」に変わるのです。
このシリーズが、皆様にとって「その瞬間」をもたらす手助けになれば、これほどうれしいことはありません。
英語学習の旅は、ここからが本当の勝負です。学んだ知識を「日々の使用」を通じて「揺るがぬスキル」に変えていってください。
皆様の英語学習の成功を、心より応援しています。
〜「中級者向け英文法:現在完了形の完全ガイド」全5回シリーズ、完全完結〜
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このガイドは、35年以上の英語教育経験を持つ矢野晃によって作成されました。数千人の講師を育て数千人の生徒を指導してきた実績に基づく、実践的で効果的な学習方法をお届けしています。






