🧐 はじめに:文法知識を「使える会話スキル」に変えるために
前回の記事で、現在完了形の「have/has + 過去分詞」という基本構造と、過去形との時間的な違い(点と線)を完全に理解しました。これで、中級者にとって最も重要な基礎は固まりました。
しかし、ここからが文法を「使える英語」に変えるための重要なステップです。
「I have finished.」といった肯定文は何とか作れても、
- 🤔 疑問文で Have をどこに置けばいいのか?
- 🚫 否定文の not の位置は?
- 💬 会話で「はい、終えました」と短い返答がパッと出てこない…
これらは、中級者が現在完了形で最もつまづき、英会話の瞬発力を失う原因となる共通の悩みです。
この「現在完了形の完全ガイド」第2回目では、あなたが抱えるこの悩みを完全に解消します。この記事を読めば、現在完了形を使って自信を持って質問し、正確に否定し、そしてネイティブのように簡潔に応答できるようになります。
具体的には、以下の3つの必須構造と、会話で欠かせないスキルを徹底解説します。
- ✅ 肯定文:揺るぎない基本構造の確認
- ✅ 疑問文・否定文:語順のルールと not の正確な位置
- ✅ Short Answer:「Yes, I have. / No, I haven’t.」など、会話に必須の短い答え方
この記事を読み終える頃には、現在完了形の構造があなたの口からスムーズに出てくるようになり、英会話のレベルが一段階向上していることを実感できるでしょう。さあ、「知っている」知識を「使える」スキルへと進化させましょう!
肯定文の構造と作り方

現在完了形の肯定文は、非常にシンプルな構造をしています。しかし、その単純さの中に、英語のロジックが隠されています。
肯定文の基本形
主語 + have/has + 過去分詞 + 目的語(必要に応じて)
構造の理解:各要素の役割
肯定文の各要素がどのような役割を果たしているのかを理解することで、より深く現在完了形を習得できます。
主語の選択 主語は英文の必須要素です。現在完了形では、この主語によって助動詞 have/has が決まります。
- I / You / We / They → have
- He / She / It / 名詞の単数形 → has
have/has の役割 have/has は現在形の助動詞です。「今という時点を基準に、過去から続いている状態」を表すために必須な要素です。これがあるからこそ、「過去」と「現在」がつながるのです。
過去分詞の選択 過去分詞は、動詞の意味を決定します。規則活用の場合は -ed 形、不規則活用の場合は動詞ごとに決まった形を使用します。第1回目で学んだパターン分類が活躍する場面です。
目的語 動詞によっては、目的語(物や人)を必要とします。現在完了形でも基本的なルールは変わりません。
実例で習得:肯定文の作り方
それでは、実際の例文を見ながら、肯定文の構造を完全に理解していきましょう。
例文1:規則活用動詞を使った肯定文
I have finished the report.
(私はレポートを終えました)
構造分析:
- 主語:I(1人称単数)→ have を使用
- have/has:have(I に対応)
- 過去分詞:finished(finish + -ed)
- 目的語:the report
この文では、「レポートを終える」という動作が過去に起こり、その完了した状態が今も有効であることを表しています。
例文2:不規則活用動詞を使った肯定文
She has seen that movie.
(彼女はその映画を見ました)
構造分析:
- 主語:She(3人称単数)→ has を使用
- have/has:has(She に対応)
- 過去分詞:seen(see の不規則活用、ABC型)
- 目的語:that movie
「映画を見る」という経験を持つ、という状態を表しています。
例文3:継続を表す肯定文
We have lived in Tokyo for ten years.
(私たちは10年間ずっと東京に住んでいます)
構造分析:
- 主語:We(複数)→ have を使用
- have/has:have(We に対応)
- 過去分詞:lived(live の規則活用)
- 目的語:in Tokyo(場所)
- 時間表現:for ten years(期間を示す重要な要素)
この文では、「東京に住む」という状態が10年間続いていることを表します。for を使うことで、「継続」の用法であることが明確になります。
例文4:複雑な肯定文
They have already completed their project with their team members.
(彼らは既にチームメンバーとプロジェクトを完了しました)
構造分析:
- 主語:They(複数)→ have を使用
- have/has:have(They に対応)
- 副詞:already(完了を強調)
- 過去分詞:completed(complete の規則活用)
- 目的語:their project
- 前置詞句:with their team members(付加情報)
この例では、already という副詞が「すでに完了した」という意味を強調しています。
肯定文作成の実践ポイント
肯定文を正確に作るために、以下のチェックポイントを意識しましょう:
✓ チェックリスト
- 主語を決める
- 主語に応じて have / has を選ぶ
- 動詞の過去分詞形を確認する(規則活用か不規則活用か)
- 目的語や時間表現を加える
- 全体の意味を確認する
このプロセスを何度も繰り返すことで、肯定文作成が無意識にできるようになります。
疑問文の構造と作り方

疑問文は、肯定文の語順を「反転」させることで作られます。しかし、この「反転」が多くの学習者を困らせます。
疑問文の基本形
Have/Has + 主語 + 過去分詞 + 目的語(必要に応じて) + ?
肯定文から疑問文への変換:語順の反転
疑問文を作るときの最大のポイントは、助動詞 have/has が文頭に移動することです。
肯定文の語順
主語 + have/has + 過去分詞 + …
疑問文の語順
Have/Has + 主語 + 過去分詞 + … ?
この変換は、英語の疑問文を作る基本的なルールです。助動詞が文頭に来ることで、「疑問」の意味を表現しているのです。
実例で習得:疑問文の作り方
例文1:シンプルな疑問文
肯定文:
You have finished your homework.
(あなたは宿題を終えました)
疑問文:
Have you finished your homework?
(あなたは宿題を終えましたか?)
変換プロセス:
- 肯定文の have を文頭に移動
- その他の要素は同じ位置に保つ
- 文末に ? をつける
例文2:三人称単数を使った疑問文
肯定文:
She has checked the email.
(彼女はメールを確認しました)
疑問文:
Has she checked the email?
(彼女はメールを確認しましたか?)
変換プロセス:
- 肯定文の has を文頭に移動
- その他の要素は同じ位置に保つ
- 文末に ? をつける
例文3:複雑な疑問文
肯定文:
They have already arrived at the station.
(彼らは既に駅に到着しました)
疑問文:
Have they already arrived at the station?
(彼らは既に駅に到着しましたか?)
ここで注意すべき点は、already という副詞の位置です。副詞は、過去分詞の前後どちらにも置くことができます:
- Have they already arrived?
- Have they arrived already?
どちらでも文法的には正しいですが、already を文頭に近い位置に置くと、より「確実性」が強調されます。
例文4:疑問詞を含む疑問文
疑問詞を使う場合は、さらに複雑になります:
Where have you been?
(あなたはどこにいましたか?)
構造:
疑問詞 + Have/Has + 主語 + 過去分詞 + ?
疑問詞(Where / What / Who / How long など)が最初に来て、その後に have/has が続きます。
その他の疑問詞の例:
- What have you done today? (今日、何をしましたか?)
- How long have you lived here? (ここに何年間住んでいますか?)
- Who has called you? (誰があなたに電話しましたか?)
疑問文作成の実践ポイント
疑問文を正確に作るために、以下のステップを踏みましょう:
✓ 疑問文作成の5ステップ
- 肯定文をまず作る
- 主語を決める
- 主語に応じて Have / Has を選ぶ
- Have / Has を文頭に移動する
- 全体を見直し、意味が通じるか確認する
疑問詞がある場合:
- 肯定文をまず作る
- 疑問詞を特定する
- 疑問詞を最初に置く
- Have / Has を疑問詞の後に置く
- 残りの要素を続ける
否定文の構造と作り方

否定文は、「not」を適切な位置に挿入することで作られます。しかし、「not」の位置が微妙に英語学習者を困らせることが多いのです。
否定文の基本形
主語 + have/has + not + 過去分詞 + 目的語(必要に応じて)
否定文の特徴:not の位置
現在完了形の否定文で最も重要なポイントは、have/has と過去分詞の間に「not」を挿入することです。これは現在形や過去形の否定文とは異なるルールです。
正しい位置:
have/has + not + 過去分詞
誤りの例:
❌ have + 過去分詞 + not(不正確)
❌ not + have/has + 過去分詞(不正確)
have/has と過去分詞の間に not が来ることで、初めて正確な否定文が完成するのです。
否定文の短縮形:haven’t / hasn’t
口語英語では、have not / has not を縮約することがほぼ必須です:
- have not → haven’t
- has not → hasn’t
日常会話や非公式な文章では、縮約形を使うのが自然です:
I haven’t finished my work.
(私は仕事を終えていません)
She hasn’t replied yet.
(彼女はまだ返信していません)
実例で習得:否定文の作り方
例文1:シンプルな否定文
肯定文:
I have finished the report.
(私はレポートを終えました)
否定文:
I have not finished the report.
(私はレポートを終えていません)
I haven’t finished the report.
(口語版)
例文2:三人称単数の否定文
肯定文:
She has replied to the email.
(彼女はメールに返信しました)
否定文:
She has not replied to the email.
(彼女はメールに返信していません)
She hasn’t replied to the email.
(口語版)
例文3:yet を含む否定文
yet(まだ)は、否定文で非常によく使われます。yet は文末に置くのが特徴です:
I haven’t finished my homework yet.
(私はまだ宿題を終えていません)
He hasn’t arrived yet.
(彼はまだ到着していません)
yet は、「まだ完了していないが、おそらく完了するだろう」というニュアンスを加えます。
注意:口語や非公式な文章では、yet は not の直後(have/has not yet…)に置かれることもあります。
例: I haven’t yet finished my homework. (まだ宿題を終えていない)
例文4:複雑な否定文
肯定文:
They have lived in Tokyo for five years.
(彼らは5年間東京に住んでいます)
否定文:
They have not lived in Tokyo for five years.
(彼らは5年間東京に住んでいません)
継続を表す現在完了形でも、否定文の作り方は同じです。have/has と過去分詞の間に not を挿入するだけです。
否定文作成の実践ポイント
✓ 否定文作成の3ステップ
- 肯定文を正確に作る
- have/has と過去分詞の間に not を挿入(または縮約形 haven’t / hasn’t を使う)
- 必要に応じて yet を文末に追加する
短い答え方(Short Answer):会話の必須スキル

英会話において、常に長く答える必要はありません。むしろ、質問に対して簡潔に答える能力は、ネイティブスピーカーの必須スキルです。
Short Answer の基本形
疑問文に対する短い答え方には、一定のパターンがあります:
肯定の短い答え:
Yes, + 主語 + have/has.
否定の短い答え:
No, + 主語 + have/has + not.
Short Answer のルール
短い答え方には、3つの重要なルールがあります:
ルール1:主語は代名詞に置き換える 質問の中で「you」「he」など人称が出てくれば、答えの中では相応の代名詞に置き換えます。
- 質問の「you」→ 答えの「I」
- 質問の「he」→ 答えの「he」(そのまま)
- 質問の「they」→ 答えの「they」(そのまま)
ルール2:have/has は省略しない 短い答えでは、have/has は必ず含めます。これが省略されると、不完全な答えになります。
ルール3:過去分詞は省略する 短い答えでは、過去分詞は省略されます。質問の中で既に動詞の意味は明確になっているからです。
実例で習得:Short Answer の使い方
例文1:基本的な Short Answer
質問:
Have you finished your homework?
(あなたは宿題を終えましたか?)
肯定の答え:
Yes, I have.
(はい、終えました)
否定の答え:
No, I haven’t.
(いいえ、終えていません)
答えの構造を見ると、質問の「you」が「I」に置き換わり、「finished」という過去分詞は省略されていることがわかります。
例文2:三人称単数の Short Answer
質問:
Has she arrived at the station?
(彼女は駅に到着しましたか?)
肯定の答え:
Yes, she has.
(はい、到着しました)
否定の答え:
No, she hasn’t.
(いいえ、到着していません)
三人称単数の場合、has を使うことを忘れずに。
例文3:複数形の Short Answer
質問:
Have they completed their project?
(彼らはプロジェクトを完了しましたか?)
肯定の答え:
Yes, they have.
(はい、完了しました)
否定の答え:
No, they haven’t.
(いいえ、完了していません)
例文4:疑問詞を含む質問への答え方
疑問詞を含む質問(Where / What / How long など)に対する答えは、短い答えではなく、通常、より詳しい答えが必要です。
質問:
Where have you been?
(あなたはどこにいましたか?)
詳しい答え:
I have been to the supermarket.
(スーパーに行っていました)
実践的な会話の例
実際の会話を想定した例を見てみましょう:
A: Have you seen the new movie?
(新しい映画を見ましたか?)
B: Yes, I have. I saw it last week.
(はい、見ました。先週見ました)
A: Have they started the project yet?
(彼らはプロジェクトを始めましたか?)
B: No, they haven’t. They’re waiting for more information.
(いいえ、まだです。情報を待っています)
このように、Short Answer でまず答え、その後、より詳しい情報を加える形が、自然な英会話のやり方です。
Short Answer のテクニック:自然な会話のために
自然な会話の流れを作るコツ:
- Short Answer で相手の質問に即座に応答する
- 「Yes, I have.」という即答は、相手に「聞いてくれてありがとう」という姿勢を示します
- その後、追加情報を加える
- 会話を続けるために、why / how / when など、さらに詳しい情報を付け足します
- 相手への質問を返す
- 「By the way, have you…?」というように、相手への質問を返すことで、会話のキャッチボールが成立します
このテクニックを身につけることで、より自然で流暢な英会話ができるようになります。
🧩 練習問題(現在完了形②:肯定文・疑問文・否定文・Short Answer)

【Part 1:肯定文を完成させましょう】
次の日本語を英語にしてください。
(have / has + 過去分詞の形を使うこと)
- 私はその映画を2回見たことがあります。
- 彼女はすでに宿題を終えました。
【Part 2:疑問文に書きかえましょう】
次の肯定文を疑問文に変えてください。
- You have finished your homework.
- She has checked the email.
- They have already arrived at the station.
【Part 3:否定文に直しましょう】
次の肯定文を否定文に直してください。
- I have finished the report.
- He has arrived yet.(まだ到着していない)
【Part 4:Short Answer(短い答え)】
次の質問に短く答えましょう。
- Have you finished your homework?(はい)
- Has she arrived at the station?(いいえ)
- Have they completed their project?(はい)
✅ 【解答と解説】
| No. | 解答 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | I have seen that movie twice. | 「2回見たことがある」=経験。具体的な時点なし→現在完了形。 |
| 2 | She has already finished her homework. | 「already(すでに)」は完了を強調。主語がSheなので has。 |
| 3 | Have you finished your homework? | haveを文頭に移動。主語の位置は変えない。 |
| 4 | Has she checked the email? | hasを文頭へ。3人称単数のhasを忘れずに。 |
| 5 | Have they already arrived at the station? | 助動詞haveが主語の前に。alreadyの位置は動詞の前後どちらでも可。 |
| 6 | I haven’t finished the report. | haveと過去分詞の間にnot。口語では縮約形 haven’t が自然。 |
| 7 | He hasn’t arrived yet. | 「yet」は否定文で文末に置くのが原則。 |
| 8 | Yes, I have. | 質問の「you」が答えでは「I」に変わる。過去分詞は省略。 |
| 9 | No, she hasn’t. | 否定は「No + 主語 + have/has + not」。縮約形 hasn’t を使用。 |
| 10 | Yes, they have. | 複数主語に合わせて have を使う。短い肯定返答。 |
💡【学習ポイントまとめ】
| 文型 | 基本構造 | 例文 |
|---|---|---|
| 肯定文 | 主語 + have/has + 過去分詞 | She has finished her homework. |
| 疑問文 | Have/Has + 主語 + 過去分詞 + ? | Have you finished your homework? |
| 否定文 | 主語 + have/has + not + 過去分詞 | I haven’t finished yet. |
| Short Answer | Yes/No + 主語 + have/has | Yes, I have. / No, she hasn’t. |
🎉 まとめ:現在完了形を会話で使いこなすための構造ルール

この記事を通して、現在完了形を「話す」ために必須となる構造を完全にマスターしました。
特に重要なルールを、あなたの会話力を高めるチェックリストとして再確認しましょう。
- 語順の鍵: 疑問文では Have/Has を主語の前に、否定文では not を have/has と過去分詞の間に入れる。
- 口語の必須: 否定文では haven’t や hasn’t の短縮形を使うのが自然。
- 会話の鉄則: Yes, I have. / No, she hasn’t. のような Short Answer は、主語を代名詞に置き換えることを忘れずに。
現在完了形の構造を正確に理解することは、英語の正確性を高めるだけでなく、自信を持って話すための土台となります。
🚀 中級者から上級者へ:会話力を高める学習アドバイス
学んだ文法ルールを脳内で瞬時に処理し、実際に口から出すためには、インプットだけでなく、戦略的なアウトプット練習が不可欠です。
- 瞬間英作文で反射力を鍛える: 日本語の文(例:「あなたは宿題を終えましたか?」「いいえ、終えていません」)を見て、3秒以内に英語で Have you finished your homework? / No, I haven’t. と答える練習をしましょう。意識的に肯定文・疑問文・否定文を混ぜることで、構造の切り替えに慣れます。
- 独り言で Short Answer を活用する: 日常生活の中で自分に質問を投げかけて、Short Answerで応答する練習を習慣にしましょう。
- (自分に) “Have I checked the email yet?” → “No, I haven’t.”
- (自分に) “Has the meeting started?” → “Yes, it has.”
- ロールプレイで会話の流れを掴む: 友人と、またはAIを使って、現在完了形の質問(Have you ever…?)とShort Answer(Yes, I have.)を使って会話を続け、追加情報を加える練習をしましょう。Short Answerの後に I saw it last week. のような過去形を使って情報を補足する流れを意識すると、自然な会話に近づきます。
次回予告:第3回目は「4つの用法の徹底比較」
構造を完璧に習得したところで、いよいよ現在完了形の「意味」に焦点を当てます。次回は、「継続」「経験」「完了」「結果」という4つの用法を、それぞれのニュアンスの違いと一緒に使われる副詞に注目して徹底比較します。
これらの用法を使いこなすことで、あなたの英語表現は劇的に豊かになります。次回の「現在完了形の完全ガイド」シリーズもどうぞお楽しみに!
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このガイドは、35年以上の英語教育経験を持つ矢野晃によって作成されました。数千人の講師を育て数千人の生徒を指導してきた実績に基づく、実践的で効果的な学習方法をお届けしています。






