このサイトでは、現在実際に英会話スクールで教え始めている英会話講師や英語教員向けに「英会話の教え方」を説明しています。そのため、内容が専門的で複雑な手順が多くなる場合が多く、「英語が得意だから英会話でも教えてみようかな?」と言うタイプの方にはハードルが高いかもしれません。
今回は、初めて「英会話」を教えてみようと思っている人にもわかりやすいように、非常にシンプルな内容にしています。軽い気持ちで読んでみてください。
1. 生徒の特徴
1. 「英会話」を特別な英語と考えている
「英語が得意だから英会話でも教えてみようかな?」と言うタイプの方は、おそらく「英語が苦手な友人や知り合い」に教えてあげようと思っている感じだと思います。
「英語が苦手な友人や知り合い」の多くは、「英会話」は学校で勉強してきた「英語」とは全く違う種類の「特別なジャンル」と思っている事でしょう。「学校英語」は苦手だったけど、「英会話」なら出来るかもしれない、「学校英語」はつまらなかっただったけど、「英会話」なら楽しいかもしれない、と思っているはずです。
このタイプの人に、「正しい英語学習方法」のようなものを説明し、無理やり説得する必要はありません。
出来るだけ、その期待に応えるようにしてあげてください。
- 「学校英語」が苦手でも大丈夫
- 「英会話」は楽しく身につけられる
- 「受験勉強」のような努力をする必要はない
2. 基礎力がない
「学校英語」は苦手だった訳なので、英語力向上に大切な「基礎力」が身についていません。「英語が得意だから英会話でも教えてみようかな?」と言うタイプの方は、英語が好きで一生懸命努力してきた方達だと思います。生徒が犯す基本的なミスや知識不足が、どうしても気になってしまうでしょう。
ただし、ここで「基礎をしっかりと覚えさせよう!」と頑張ってしまうと、このタイプの生徒達は拒否反応を示してしまいます。「基礎力がない」のは仕方がないので、「基礎力がない」生徒が楽しく学べられるレッスンを心がけましょう。
- 「文法」を重視し過ぎるレッスンをしない
- 「レベルに相応しい」かどうかを過度に気にしない
- 「フレーズ」中心に教える
2. 教え方
1. 話す練習を中心にレッスンを進める
「英会話」のレッスンなんだから、「話す練習」を中心にするのが当たり前だろう、と思うかもしれません。
実際には違います。「英会話」とはコミュニケーションなので、「相手の言うことを理解」し「自分の伝えたい事を話す」訳です。「相手の言うことを理解する」事の方が、「自分の言いたい事を話す」事よりも難しいので、英語を教える場合には「相手の言うことを理解する」練習を時間を掛けて計画的に進めていきます。興味のある方は、英会話の教え方の記事を読んでみてください。
簡単な例を出します。
Guest: Do you have a table for three?
Waiter: Yes. Follow me, please. We have a table here, or over there.
Waiter: What can I get for you?
Guest: Do you have fruit salad?
Waiter: Yes.
Guest: That please, with some rolls.
このような会話は、「旅行英会話」的なテキストにいくらでもあると思うので探してみてください。このような会話文の教え方は、英会話の教え方の記事に細かく書いてありますので、興味のある方は読んでみてください。
ここでは、「英語が得意だから英会話でも教えてみようかな?」と言うタイプの方が、即席で教える場合の方法を説明します。
レストランのシーンですよね。入り口でウエイターに席に案内してもらって、オーダーする場面です。日本語で状況を説明します。(本格的に教える場合は、このような教え方はしません)
会話全体を自分で読んで見本を見せます。あるいは、センテンスごとにリピートしてもらっても構いません。
日本語で会話文の意味を説明します。この際、文法的な説明は極力排除しましょう。なんとなく全体の流れを理解してもらえれば十分です。
生徒をGuestとWaiter役に設定してロールプレイをします。それぞれの役を1回ずつ出来れば十分です。
会話文を全文丸覚えしても仕方がないので、と言うか、この手の生徒は嫌がりますので、この会話文から実際に使えそうなセンテンス、フレーズをピックアップして練習します。
例えばこの3つです。
- Do you have a table for three?
- Do you have fruit salad?
- That please, with some rolls.
一つずつ日本語で再度説明して、簡単な「置き換え練習」をします。
Do you have a table for ______________?
Do you have ____________?
That please, with ____________.
練習した会話文の状況に合わせて、自分の体験談を話します。海外でレストランに行った時、「こんな事があった」「こんな失敗をした」「こんな事に驚いた」などです。
生徒は実際に英語を使った事のない人が多いので、この手の話には興味津々です。
この会話文に関連して、プラスαのフレーズ/センテンスを教えます。
例えば、最初の”Do you have a table for three?” に関連して、以下の文を取り上げる事ができます。
Waiter: How many people are in your party?
Guest: Do you have a table for three?
このウエイターのセリフの”in your party” のpartyなどは、この手の生徒には良いネタですね。
「英語が得意だから英会話でも教えてみようかな?」と言うタイプの方が、「英語が苦手な友人や知り合い」に教えてあげようと言う場合、あまり詰め込み過ぎない、スパルタにしない、と言う事が非常に大切なポイントです。
何となく楽しい時間が過ごせて、何か覚えられた、知る事ができた、と言う感覚を持って貰えれば十分です。この匙加減が一番大切になると思います。
2. リスニングの練習は諦める
先ほど説明しましたが、「英会話」とはコミュニケーションなので、「相手の言うことを理解」し「自分の伝えたい事を話す」訳です。本来は「相手の言うことを理解」する練習は不可欠ですが、この状況では難しいと思います。ここは割り切って考える事が必要になります。レッスンは「話す練習」を中心に進めましょう。
実際にレッスンを重ねていくうちに、生徒が興味を持ち始め、「もっと理解できるようになりたい!」と言う気持ちが芽生えてきたら、学習方法を教えてあげましょう。
この場合の注意点は以下になります。
- 1. 自分の学習方法を押し付けない
-
「英語が得意だから英会話でも教えてみようかな?」と言うタイプの方は、英語が好きで一生懸命勉強したきた方達です。英語の勉強なら努力が苦にならないタイプです。今目の前にいる生徒は違います。
- 2. 興味のある内容を使う
-
モチベーションのそれほど高くない人にとって、「学習のための学習」は辛いものです。生徒が好きなこと、興味のある内容を使って練習してもらってください。
「相手の言うことを理解」する練習は不可欠ですが、時間が掛かります。実際には、かなりの語彙数と文法力、読解力が付いてこないと、「相手の言うことを理解」できるようになりません。「英語が苦手な友人や知り合い」にはハードルが高いでしょう。
そもそも、どこまで英語力を高めたいと思っているのかさえ、はっきりと意識していないと思います。先ほど説明したように、何となく楽しい時間が過ごせて、何か覚えられた、知る事ができた、と言う感覚を持って貰えれば十分です。この匙加減が一番大切になると思います。
3. 上達実感を持ってもらうために
「英語が得意だから英会話でも教えてみようかな?」と言うタイプの方が、「英語が苦手な友人や知り合い」に教えてあげようと言う場合、何となく楽しい時間が過ごせて、何か覚えられた、知る事ができた、と言う感覚を持って貰えれば十分と、繰り返し説明してきました。
とは言え、最初の数ヶ月はそれで良くても、ある程度の上達実感を持って貰えないと、なかなか続けられないものです。そのために、「上達実感を持ってもらう」事が非常に大切になります。
しかしながら、スパルタ方式で徹底的に練習するなんてことはできません。そのような場合、一番簡単な方法は次のような方法です。
- レッスンの最初の10分程度を毎回自己紹介や週末の出来事について話す時間にする
あまりにシンプル過ぎて、気が抜けましたか?
でも、英会話を教える事が初めての人にはこれが一番簡単です。英会話のレッスンを週に1回、あるいはこのような設定の場合、月に1回とか2回かもしれません。生徒は毎日毎日、日本語の生活を送っている訳なので、先ほどのレストランの会話なども、次回のレッスンの時にはすっかり忘れてしまっている事でしょう。
それはそれで構いません。ただし、それだけが続いてしまうと、上達実感が得られず、長続きしません。講師の気持ちの持ち方として、生徒に先週教えたことは今週になれば80%は忘れている、と言う感覚でいる必要があります。
それに反して、毎回毎回、レッスンの最初の10分で自己紹介や週末の出来事について話していくと、同じ事を何回も何回も繰り返すので、徐々に定着していきます。ただし、単に同じ事を繰り返すだけでは、生徒も飽きてしまいますので、少しずつ新しい情報を追加し、積み上げてきます。
そうする事によって、半年後、1年後に、初回レッスンと比べて圧倒的に多くのことを話せるようになっています。例えば、こんな形で積み上げていきます。
- 自己紹介の場合
-
- 名前
- 住んでいる場所と出身地
- 仕事
- 詳しい仕事内容
- 趣味
- 趣味の詳しい紹介
- 家族
- 住居
- 友人
- 同僚
- 典型的な1日のスケジュール
- 週末の出来事
-
- 週末によくする事
- 先週末にした事
- 今週末の予定
- どこに
- 何を
- 誰と
- どのように
- 感想
自己紹介のパターンの方がわかりやすいと思います。
初回のレッスンでは、名前と出身地、現在住んでいる所を話してもらいます。その際、言葉に詰まったらすぐに教えてあげてください。生徒が英語で言えない場合は日本語で話してもらい、その場で英語に直してあげます。何回かレッスンを重ねるうちに、生徒が無意識に話せるようになったら次の段階へ進めます。
名前と出身地、現在住んでいる所に加えて、仕事を言ってもらいます。まず職種だけで十分です。生徒が無意識に話せるようになった段階で、仕事の詳しい説明をしてもらいます。先ほど同様に、生徒が英語で言えない場合は日本語で話してもらい、その場で英語に直してあげます。
このような流れで、少しずつ積み上げていきます。そうすると、毎回毎回、少しずつ話せる量が増えてくるのでかなり上達実感が得られるはずです。
注意点は、詰め込み過ぎずに、少しずつ積み上げて行くことです。そしてあくまでも、生徒が無意識に話せるようになった段階で次に進むことです。あまり無理をして先に進み過ぎると、思い出すの苦労してフラストレーションが溜まってしまい、逆効果ですので、十分注意してください。
まとめ
「英語が得意だから英会話でも教えてみようかな?」と言うタイプの方が、「英語が苦手な友人や知り合い」に教えてあげようと言うケースを想定して、即席の教え方を説明してきました。
繰り返して説明したように、「英語が得意だから英会話でも教えてみようかな?」と言うタイプの方が、「英語が苦手な友人や知り合い」に教えてあげようと言う場合、何となく楽しい時間が過ごせて、何か覚えられた、知る事ができた、と言う感覚を持って貰えれば十分です。
一番大切ポイントは、「英語が苦手な友人や知り合い」は、「英語が得意だから英会話でも教えてみようかな?」と思っている方達とは、根本的に感覚が違うと言うことを理解することです。
- モチベーションが違います
- 明確な到達目標を持っていません
- 英語に掛けられる時間も労力も限られています
英語を好きになるきっかけを作れれば、十分成果があったと思ってください。
もしこの記事をきっかけに、「本格的に英語の教え方を学んでみたい」と思って貰えたら是非、英会話の教え方の記事を読んでみてください。